花紀京さんとかしまし娘・正司花江さん

「花紀京兄さんは怒ってまへんか?」

間寛平さんは御自身で運転して来た車から飛び降りて来て、僕にそう言った。

大阪京橋・読売テレビ本社前での会話。

間寛平さんの入りが遅いので、僕は心配して待っていたのだ。

花紀京さんは、「吉本新喜劇」の「天皇」と称され、怖しい存在でもあり、尊敬される存在でもあった。

花紀京さんに「ギャグ」は無い。

いつもの「ニッカボッカ姿」で舞台に登場し、その「存在感」で観客を大笑いさせるのだ。

25年以上前、この花紀京さんと間寛平さんに出演して頂いたドラマは、「A4のペラ1枚の企画書」からスタートした。

タイトルは、「負けたらアカン!なにわ新聞記者物語」。

主演は吉本新喜劇の石田靖さん。

元々、僕は「芸人さん」は「お芝居が巧い」と思っており、「吉本新喜劇の芸人総出演で、ギャグ一切無しのドラマ」を作りたいと企画書を書いたのである。

その企画書がポンポンポンとあっさり通ってしまい、「関西ローカルドラマ」として、90分の放送枠が取れた。

しかし、さすがに「関西ローカルドラマ」、「目が飛び出るくらい」予算が安い。

概算してみると、90分ドラマを5日間で撮る事になったのだ。

冒頭のシーンに戻るが、間寛平さんは、最初間違って、「NGKなんばグランド花月」に入っていたそうだ。

間違いに気付いた寛平さんは慌てて、読売テレビに車を飛ばしたという次第。

「吉本新喜劇の天皇」、花紀京さんとのシーンの撮影、遅れる事など絶対許されない。

急いで準備を済ませた間寛平さんを連れて、僕は天満橋のロケ場所である喫茶店へ。

そんな僕らを花紀京さんはニコニコ満面の笑みで迎えてくれ、ホッと。

やはり、芸人さんにとって、「先輩」の存在は絶対だ。

ある時、読売テレビの二階のパーラーで上岡龍太郎さんがテレビを見ながら寛いでいた。

そこに、「かしまし娘」のいちばん下の正司花江さんが「朝ドラ」の撮影の為、通りかかった。

僕ら、「朝ドラ」のキャストやスタッフに気軽に接して下さる花江さん。彼女の周りには笑いが絶えなかった。本当に明るくて気さくな方。

正司花江さんが上岡龍太郎さんの真後ろを通り過ぎようとしたその時、上岡さんは慌てて立ち上がり、クルッと180度回転して、花江さんに深々とアタマを下げた。

上岡龍太郎さんが全国ネットの番組でどれだけ売れていようとも、「芸人さんの序列」は絶対なのだと僕は痛感させられた。

ちなみに、読売テレビには「お笑いネットワーク」や「上方お笑い大賞」を放送していたおかげで、「お笑い芸人」のVTRは膨大にある。

しかし、唯一無いのが、「かしまし娘」のVTRなのだ。

「かしまし娘」のVTRは唯一、「朝日放送テレビ」が持っている。そのVTRも聞いたところによると、「かしまし娘」御本人たちの自宅にあった「高価な録画機」で録画したものを「朝日放送テレビ」がダビングしてもらったものらしい。

余談に走る僕の悪い癖が出た。

僕がこの文章で言いたかったのは、「どんな世界でも、後輩は先輩を尊敬し、大切にすべき」ということです。

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