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キンモクセイ

9月30日

お父さんが倒れたの
と母からの電話がかかってきたのが、今から10年前の今日。

慌てるとか、悲しむとか、恐怖心よりも
なぜか絶対に大丈夫!というおかしな確信があった。

車で2時間弱の地方都市に住む両親の暮らし

18まで育った実家には老夫婦なりにつましい生活が漂っていた。かつての子供部屋は予想通りの物置部屋。なぜか布団セットがたくさんある。泊まりに来る人など居ないはずなのに。鍋やフライパン 食器も溢れる台所。賑やかな日々を想定してか期待してか。どちらにしても切ない。

父はくも膜下出血でした。開頭手術して入院生活1ヶ月。自転車で1時間かけて、1日も欠かさず母は父を見舞った。記憶が交錯する父に自分たちの結婚式の白黒写真まで持って行ったり。

その日から2人の生活は一変。車で毎週のように2人で道の駅やら親類宅 月に一度は東京まで私や孫に会いに来ていた。

運転が出来なくなったことは地方都市では致命傷。一気に行動範囲が狭まる。灯油のポリタンクを母が自転車の後ろに紐で括り付けて運んでいると聞いた時には言葉を失った。

父は、10年かけて緩やかに呆けて行った。

父の介護 買い出し 親戚付き合い 子供たちの心配事に常に全力で向き合ってきた母も病に倒れ

この秋は2人 鱗雲の隙間から私たちを見守る空で


キンモクセイ大好きなんだよ。

残り香に

振り返りながら

帰る道

もっともっとと

大丈夫だよと

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