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Smile詩集 幸福なとき


子は、安心していた。何も怖くなかった。


それは、どんなことがあっても、子を守ってくれる、母が、そばにいたからだ。


まわりには、他に、親子を知るものは、無い。


砂場に、レジャーシートを敷き、子は、母がつくった、おにぎり、に、かぶりついている。


桜の花びらが、舞っている。


そろそろ、生命たちが、動きはじめる、季節、だ。



母は、やわらかい光と風をうけながら、やさしい目で、我が子を、見ている。

知ってる顔も、話しかけてくるひとも、いない。

母の仕事は、子を守ること、だけだ。

そこには、信じることの、真実が、在る。



子の安心は、海より、深い。
波は、とても、穏やかだ。


光が、やさしい。
風が、やさしい。


つがいの小鳥たちのさえずりが、親子を、祝福している。

親子だけが、やさしいものに、包まれている。

すべての時間が、親子のものだ。

親子は、その辺に転がっている石のように、


すべての、通り過ぎる人々と、無関係、だ。


子は、まだ、独りで、自分の人生を歩くことができない。

母の仕事は、その子を、守ることだけだ。

ただ、
親子には、そのすべての自覚は、無い。

親子は、ただ、やさしいものに、包まれているだけだ。

そして、その先、みんな、ある時、立ち止まって、

ふりかえってみると、
あれが、
幸福

というもの、だった、と、思う。




ひとの一生の、
短い時間の、出来事で、在る。




そうやって、人間は、みんな、



ひとりで、



歩き出す、のだ。

#創作大賞2024
#オールカテゴリ部門

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