実妹ヒロインゾンビ(Ciel『After…』プレイ日記その2)※ネタバレあり

 2021年5月某日。私は『After…忘れえぬ絆』というギャルゲーをプレイし深い傷を負っていた。

 友人の体に憑依することで実妹の攻略対象「高鷲渚」と結ばれるという超展開なグッドエンディングが衝撃的な本作。本当にいろいろな意味でこのゲームに刺された格好の私だが、この傷の原因は、実妹というキャラクターの奥深さにあてられたものだということで一応の結論を見た。

 だが待ってほしい。

『After…』がいわゆる鬱ゲーもしくは泣きゲーに分類され、友人の死、そして実の兄妹という壁を乗り越えて結ばれる切ないながら理想のハッピーエンドを迎える作品…。そう言い切れるなら、なにも私は深手を負ったりしなかった。要するに私はこのゲームが提示するエンディングに納得できていないのだ。

 高鷲兄妹はみごと手を取り兄妹という壁を乗り越えたようだが私は置いてけぼりだった。居ても立ってもいられず溢れ出る想いをなぐり書きしてみた(前稿参照)はいいがむしろ私の渚という実妹ヒロインへの想いは募るばかり。このままでは悲しい実妹ヒロインゾンビがひとり爆誕しただけである。

 レッツ再プレイ。ということで、あらためて『After…』そして渚、高鷲兄妹と向き合っていきたいと思う。

プレイ環境の確認

 再プレイに向けあらためて本作のプラットフォームを確認。
 私がプレイしたのはPS2移植版で、もとは株式会社スペースプロジェクトのブランドCielより2003年に発売されたPCアダルトゲームである。そうなると移植に伴ってそれはもういろいろと描写がカットされているに違いない。それにどうせ再プレイするなら原典だろう。プレイし終えてすぐさま相場も確認せずファンディスクが一体となった廉価版を手配。実はこのとき再プレイするつもりはあまりなかったので対応OSがWindowsXPでもあまり気にしていなかった。なぜ購入したかというとただとにかく「手元に置いておきたい」という意味不明なオタク心理がそうさせた。いま思い返しても正常な精神状態でなかったのだろう。
 数日後、思い立って調べてみるとAndroidOSでプレイできることが判明。iPhoneユーザーであることを後悔したのは後にも先にもこれが初めてである。手持ちのChromeBookでどうにかプレイできないか。パソコン初心者並の検索ワードでLinux環境と格闘するもDMMGameStore→動作用ソフト→本作とプレイ環境を整えるには多層のアプリが必要だとわかり断念。おとなしくソフトが届くのを待った。


再プレイの方向性

 ソフトが届くまでのあいだ、先に入手していた『TonyWorks Cielクロニクル』で渚成分を補給しつつ再プレイの方向性を検討。普通にいけば渚ルート一択なのだが、メインヒロインである香奈美は渚の人生に大きな影響を与えていると思われるためそちらも必須だろう。先にプレイするべきか…。検討するにあたり、あらためて攻略対象となる各ヒロインのことを振り返ってみた。Tonyさんの絵が本当にきれいでみんな可愛いので各位ぜひチェックしてみてほしい。


高鷲渚(たかわしなぎさ)

 主人公「高鷲祐一」の実の妹である。高校1年生。白いカチューシャが印象的。小柄で控えめ、わかりやすい妹キャラ。高鷲家は両親が海外で仕事をしているため、両親に代わって祐一のあらゆる身の回りのお世話をこなす甲斐甲斐しい子である。可愛い。


汐宮香奈美(しおみやかなみ)

 主人公の幼馴染。高鷲家の両親不在を案じてなにかとお節介を焼くが渚と正反対に家庭的な側面は薄く元気が取り柄。大きなリボンでまとめたポニーテールがアイコン。周囲から祐一の実質彼女と目されるが「そんなわけない!」いわゆるツンデレ。個人的なポイントはお兄ちゃんっ子の渚もそれでまんざらでもない描写が比較的見られることである。


喜志陽子(きしようこ)

 主人公の友人「滝谷紘太郎」の幼馴染。メガネと不思議なハネにこだわった前髪がチャームポイント。祐一との初邂逅ではクーデレ感満載であるが、本作のシナリオを通じて香奈美や渚と友人になっていくうち自然に物腰が柔らかくなっていくところが微笑ましい。


その他の登場人物

 ヒロインのほかに、メインキャラクターとして主人公の友人「滝谷紘太郎」そして「我孫子慶生」の2人が登場する。

 本作は主にこの6人が主人公祐一が主催するワンダーフォーゲル部の活動をちょっとしたスパイスにしつつ卒業までの一年間を過ごすストーリーとなっている。

 滝谷紘太郎は出来杉くんである。なんでもそつなくこなす、モテる、実家は名家らしいなどなど。
 我孫子慶生。こいつは一言「やばいやつ」だ。作中に登場するチャプタータイトル「這い寄る混沌」そのものである。もともと高校の入学式でカツアゲにあっていたところを祐一、紘太郎の2人に救われて以降、彼らと行動を共にするのだが、この出来事は彼に友人たちとのカーストを強く意識させることとなった。なにかと空気を読まない自分勝手な発言が目立つがそれは友人2人に対する劣等感の裏返しになっている。渚ルートでは祐一のライバルポジであるがそのやばさを隠すことなく奇行を輝かせる。

おわりに

 こうして振り返るとやはり渚と慶生が印象深いのだがそれも渚ルートあってのことだろう。詳しくは今後のプレイ感想に譲るが、渚ルートでの香奈美はすっかり身を引いた高鷲兄妹を気にかける優しく頼りになる幼馴染だし、紘太郎は優等生なりの影を少しだけちらつかせながらも普通の良き友人だ。彼らもきっとそれぞれのルートで個性を発揮しているに違いない。よし。とりまファンディスクで渚といちゃこらしてから香奈美ルート。これでいこう。

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