Jelly Maxの良いところ・悪いところ
新型スマートフォンJelly Maxを、メーカーのUnihertzから先行で提供してもらった。クラウドファンディングで出資可能なのでファンは直ちに確認して欲しい。
ファンではない、Unihertzってそもそも何なのかというと、中国の新興スマートフォンメーカーだ。BlackBerry Key2やNothing Phoneを丸パクリした機種や、超小型スマホJellyシリーズで知られるメーカーだ。
丸パクリというと聞こえは悪いが、現行機種の存在するNothingファンは知らないが、BlackBerry Keyシリーズのファンからすると、大歓迎でしかない。現実的な性能を保持し、あれほど優れた打鍵感を誇る物理QWERTYを搭載するAndroidスマホなどまるで夢のようだった。TCLのBlackBerryは結局、Key2でうちやめとなった。あれが人生で最も長く使用したスマートフォンだと思う。あまりにも好きすぎて、BlackBerry Key2を主題とした同人誌を個人的に出したことがある。それぐらい素晴らしい機種だった。Key2を丸パクリしたUnihertzのTitan Slimは、むしろ基礎性能の不足や、作り込みの甘さが目立ち、肝心のQWERTYキーボードは打鍵感こそTitan Pocketよりは良かったが、配列が酷い。もっと徹底的に丸パクリして欲しかった。Titan Slim2に期待したい。
そんな丸パクリが得意なメーカーだが、超小型機Jellyは個性の塊だ。わずか3インチの画面を搭載、手のひらで握れてしまうようなぶっちぎりの小ささが突き抜けている。昔の元気だった頃の日本メーカーが出していたような製品を見事に出してくれている。
そんなJellyが大きくなった。その名もJelly Max。いや、大きくしたら意味がないだろう。画面サイズはなんと5インチ。心の中のUnihertzファンが叫ぶ、「やめろ、やめてくれ!」。小型ハイエンドで評価を獲得したZenfoneのUltraみを感じる。
しかし実際に使ってみるとどうだろう、これがなかなか良い。
5インチと書くとそこそこ大きいように感じるが、所詮5インチである。そしてインチは対角線だ。縦に長ければ数値は大きくなる。実際の幅は62mmに過ぎない。XperiaやAQUOSのCompactモデルが頑なに守っていたラインが幅65mm以下だ。これを下回ると片手操作性が抜群に良い。
この機種、なにかに似ている。フォームファクタはパンチホール、背面ラウンド形状、背面指紋認証など、そう、BALMUDA Phoneだ。
SNSでもかなりそのような反応は見受けられる。小さめなのも共通だ。
しかしBALMUDA Phoneのように机上で回転するほどの湾曲ではないし、おかげで前面ベゼルと側面部の縁が尖っていて手に当たって痛いということもない。パンチホール穴は馬鹿みたいにデカいので通知バーが大きくなっているという問題は変わらずだが、縦方向に長くなっていて余裕があるので、「縦に短くてさらにパンチホールと通知バーが圧迫して情報表示量減少やUIへ支障をきたす」というBALMUDA Phoneのような由々しき問題はあまり発生しないように思われる。
そのBALMUDA PhoneはかつてのiPhone 3G/3GSのような小ささを目指していたようで、確かにロック画面解錠後の両手操作においてはかなり持ちやすさを感じる。しかし、独立した電源ボタンが存在せず、指紋認証センサー兼用の電源ボタンで、これが非常に使いにくかった。片手でロックを解除しようとすると、親指と、中指薬指小指で挟み込んで、人差し指で指紋認証ボタンを押し込んで、画面を点灯させてから、指紋認証を行う必要がある。この時点で面倒なのだが、さらにこのとき、各指が前述の「尖った縁」に食い込むような形になり、筆者の指の肉が少ないのはあるかもしれないが、痛みを感じた。
それでも指紋認証センサーを常時待機させておけば、画面消灯時でも指紋認証は可能なはずで、そのような機種は少なくない。ただでさえ利用に苦痛を伴うデザインなのに、そのような指紋認証を通電待機させることさえしていないのだ。そのくせ、でかいパンチホール穴に入ったインカメラは、なんと顔認証非対応。やはり電源ボタンや生体認証という基本のキの字はしっかりやらなければ駄目だ。過度な湾曲に拘泥しすぎたがゆえの電池容量の小ささから省いたのだろうか。そのくせセンサーを使う「本体をゆらして起動」などのオプションは一応あるから謎だった。
そこでUnihertz Jelly Maxである。BALMUDA Phone激似のくせに、指紋認証センサーは電源ボタンと独立で、Unihertzらしいカスタマイズキーもあり、そして指紋認証センサーは常時待機で消灯から認証可能、さらに顔認証も対応。しっかり先行研究しており、まさにこれはBALMUDA Phoneのネガを潰した実質的なBALMUDA Phone 2と言って良い。
親指付け根と対面の端、隅などをBALMUDA Phoneで片手完結操作で押すのは実は難しい。BALMUDA Phoneの幅は69mmもある。Zenfoneも幅68mmにより、しかも縦長なので、対面の端の角は厳しい。
ところがJelly Maxはどうだ。ちゃんと押せる!押せるのだ!片手完結で全て操作できる!しかも抜群にちょうどいいサイズで、抜群に持ちやすいのだ。Unihertzといえば無駄な分厚さ。冗談みたいに厚みがある。本機の場合は、これがうまくハマっている。そこそこラウンドした、指紋は目立つが滑りにくい背面によって、絶妙なグリップ感を作り出している。素晴らしいとしか言いようがない。
Xperia X10などと並べると懐かしさすら感じる。 まさに、「あの時代のスマホは小さかったな」と回顧趣味に浸りたい人にもいいかもしれない。iPhone 3Gを志向したBALMUDA Phoneと似たような需要がありそうだ。
メインカメラは1億画素だそうだ。今のところ全然未完成でホワイトバランスは動いてないし白黒モードなど各種機能は動いていないが、これは発売どころかまだクラファン出資募集を開始した段階の機種なので、仕方のないことである。なおUnihertzの機種はカメラが酷いので全く期待すべきではないが、筆者は少し期待している。というのも、サブカメラは無意味なマクロカメラやポートレート深度用の飾りを付ける死ぬほどしょうもない廉価機種が多いのに対し、本機はちゃんと3.4倍望遠カメラを搭載している。その手前までは1億画素のリモザイクによるクロップズームで担えば理論上は相性は良いだろう、そこまで作り込むかは知らないが。
筆者はXiaomi 14 Ultraを愛用しており、目玉は可変絞り付き1型撮像素子であることに疑いの余地はないが、3.2倍望遠カメラもよく使っている。やはり適度な望遠圧縮の楽しめる画角は楽しい。X上では利用者から賛同を得られた意見であり、「3.2倍こそメインカメラだ」と主張する半ばネタ半ば本気であろう言説も見られた。そう、Jelly Maxのカメラ構成は、「わかっている感」が少々ある。実際、ネタ用の1億画素カメラは何をとってもホワイトバランスが真っ赤になってまともに機能していないのに、既に3.4倍望遠カメラはそこそこ動いている。こういう開発者のニヤリとした顔が見えるかのような場面は良い。BALMUDA Phoneも全般的にはいまひとつだったが、「制御アイコンの、懐中電灯がランタン、機内モードが無尾翼デルタ」「ピンチ操作が気持ちいいカレンダーアプリ」など、良い部分もあった。
というわけで、「パチモンメーカーの中で、異彩を放つ超小型という個性を持つJellyが、超小型を捨てた」という地雷感あふれる機種だが、実際はUnihertzらしさが良い方向に発揮されている面白い機種だと感じる。
カメラソフトウェアが全く完成していないような状況なので、ざっくりした論評となった。しかし、これは許せないと感じるUnihertzらしさがある。
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