2022.07.11

参院選の開票結果に、これからどうやって生きていこうか頭を抱えながら眠った昨夜。

そして新しい日が昇り迎えた今日は、まったく希望に満ちた光景を目の当たりにすることになった。



ライブ配信していて自分では一枚も写真が撮れなかったので、文字に残しておく。

住民思いの杉並区長をつくる会が擁立し、現職に187票という僅かな差で競り勝って杉並の新時代を切り拓いていこうとする岸本聡子新区長の初登庁。

多くの市民が区役所前に詰めかけ、その最初の一歩を見守った。

支援者が「何色のどんな服を着てくると思う?」とその場にいた人たちに話しかけて回ると、「白いジャケットかなぁ?」「革ジャンじゃない?」「いや流石に暑いだろ!」と様々な予測が聞こえてくる。

こんなにたくさん人がいる…と、現場に到着した途端に泣き出した人までいる。


「あ!来た!」の声に一斉に皆が青梅街道の方に目をやると、新しい電動自転車にまたがり、グレーのスラックスに蛍光イエローのタンクトップにサングラスという出立ちで、彼女は現れた。

「黄色いベストだ」と誰かが言う。
フランスのデモでみんなが着てたあれかな?
恐れぬ自治体を目指すと宣言し、また区政の透明性を第一義に掲げる彼女だから、そう言う決意も込められているのか…?とかなんとか考えてみたりした。

自転車を降り、前カゴに入っていたジャケットをクシャッと後ろのカゴに詰め込む。待ち構えていた区の職員が、“あとはやっときますから、みんな待ってるから行ってください”と送り出すように自転車を受け取り、新区長はさっき詰め込んだジャケットを取り出してサッと羽織り、重たそうな鞄を持ち上げると歩き出した。

サングラスを外すと更なる歓声。
区庁舎前の短い通路から数段の階段を経て庁舎内へと、レッドカーペットでも敷かれているのではないかとメガネを擦ってしまった。

ほどなくして「さとこ!さとこ!」と誰からともなくコール。
真後ろのおじさんは、太鼓を持参してリズムを取っている。祭りかよ。
新区長は、手をまっすぐに上げて振りながら歩いていく。

いやこれ区役所前だよな、と配信する携帯から目線を外して今一度確認する。

杉並区に長年住まい、働き、様々な市民運動に尽力されてきたおばあちゃん(私の主観的な意見からすると、お姉さんと呼ぶのが相応しい凛とした方なんだけど)から、ひまわりの花束が手渡された。

受け取ってまた、群衆の方を振り返り、投げキッスをして手を振って入口へ向かう新区長。そしてドアのところで再び振り返って一礼し、庁舎内に入って行った。



送り出した市民は、「ねぇ時間ある?」「ちょっとお茶しない?」と早速喫茶スペースへ駆け込み、もうすでに、今後の市民運動について話を始めている。

「これは行政にやってほしいことじゃん?」
「そうそう、こういう大事な情報は役所に集約されてるはずだから、やっぱここは行政でやってほしいよね」
「うちらはさぁ、もっと、自分の地域とか自分の身の回りで起きたことだけじゃなくて他の地域の人とも繋がって、杉並のこともっと知りたいよね!」
「うんうん、私もそう思ってた!」

腐敗した区政にギリギリながらNoを突き付け、新しい区長を誕生させた市民。
選挙の慣習なんかぶっ飛ばせと言わんばかりに自由に自分の思いを表現して街頭に立った人たち。
一人一人は自分たちで自分たちの自治体のことを決めるんだという意欲に満ちた威勢の良さを見せながら、数人集まればすぐに、今後について和やかに協力的に真摯に相手の言葉に耳を傾け合いながら楽しげに話し合う。

この光景を目の前にすれば、誰にでも、『主権が誰の手にあるのか、はっきりと、明確に、わかる』と思えてしまう気がした。



仕事を終えて帰宅し、参院選の結果を改めてよく調べてみると、なかなか本当にどうしたものかと、やっぱり頭を抱えてしまったのだけれど。

絶望と同じくらい曖昧な幻影である希望の中に、私は光を見たばかりなので、「そうか、今回、めちゃくちゃ国会で活躍してたあの人やあの人が議員バッジを外して野に放たれたということは、もっと市民運動が強くできるんじゃないの?」と謎の強気を身につけることに成功した。

不勉強な歴史認識の元で主張を繰り返していた政党が若い世代からの支持を受けて、歴史の上に立ち何十年にもわたって真っ当な主張をし続けてきた政党よりも多く得票するような事態には、かなりの危機感を持ってはいるけれど。。

今後国政選挙が3年間ないのだとしても、私たちにはもっと身近でもっと生活に直結していて、ともすると国政をひっくり返す力として結集していけるような可能性を秘めた、自治体選挙があるじゃないか、と思っている。

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