“つかみ”は大切

むかし、メンタルトレーニングを日本へ
普及してきた第一人者と呼ばれているうちの1人である
高妻容一氏のセミナーに2回ほど足を運んだことがあります。

そのときの最初のセミナー参加時に
こんな話をされていました。

あるチームへサポートしていく過程で、
「監督、15分、時間をください」と
メンタルトレーニングの時間を作ってもらっても、

「先生、私も選手に話さなければいけないこともあるんで
10分にしてもらえませんか?」

「5分にしてもらえませんか?」と
どんどんメンタルトレーニングの時間が削られ、
元の状態に戻っていってしまう、

こんな嘆きのような内容の話をされていました。

僕からすれば、
当たり前じゃん!

って、思うのです。

なぜなら、たとえばお笑いに厳しいと言われる関西人に
関西のお笑いライブ会場で、
最初の“つかみ”を失敗すると
シーンと静まり返った冷めた会場の中で、
延々とお笑いを披露するという
お笑い芸人にとっては
笑わせてなんぼなのに
それが出来ないもどかしさと屈辱を味わい続けるわけです。

と同じように、
最初の“つかみ”で
メンタルトレーニングは大変意義のあるもの!
というのを見せることができないから
現場から追いやられていくわけです。

だから最初の“つかみ”は
とても大切なんです!

高妻系のメンタルトレーニングを見ていくと
目標設定が一番最初に来るみたいですが、

現場が求めているのは
メンタリティの改善ですから、
そのニーズに合わせないと
メンタルトレーニングって本当に意味があるものなのかな!?と
疑いの目をもたれてくるようになると
それ以降にどんなに良いものを提供しようとしても
疑心暗鬼が生じ、効果は薄れてしまうのです。

たとえば、僕は郵便局在職時代に
郵政民営化で郵便局が民営化されても
健全な経営基盤を築くために
トヨタ生産方式を踏襲したものを
現場に浸透させる任務に就いていました。

ですからトヨタ生産方式を踏襲した
JPS(ジャパン・ポスト・システム)も
理解を深めていたわけですが、

ある現場で、改善を行う場合、
いくつも改善項目が見つかるわけですが、
一番最初に手をつけるのは
大きな効果が見込めるものから
なんです。

なぜなら、現場の作業者が
この改善は自分たちにとってメリットがあるものというのを
体感できてこそ(肌で感じられるからこそ)
それに取り組む意味があるよね!と腑に落ちるわけで、
それを見せられなければ
現場からは相手にされないというのを
過去の教訓から学び取って
今日につなげて
大きな効果があるものから手をつけるようにしていると
私は理解しているのですが・・・。

たとえば15分1サイクルの作業で、
改善に取り組んでも1秒とか2秒しか変わらないものと、
改善に取り組んだら2分も作業が短縮できた、だったら、
人間の心理として、
どちらに魅力を感じて、やる気がでますか?ということです。

さて、ここで『ゴルフのメンタルトレーニング―心の強化書』の中から
訳者あとがきを引用させていただきます。
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訳者あとがき

1990年11月25日、本書の監修者であり
テニスのメンタルトレーニングの権威である
ジム・レアー博士のメンタルトレーニングセミナーが、
完成したばかりの吉田記念テニストレーニングセンター
(千葉県柏市)で開催された。

ジミー・コナーズ、マルチナ・ナブラチロワ、
アンドレア・アガシ、ガブリエラ・サバティーニなど、
彼にメンタルトレーニングの指導を受けた
トッププレーヤーは枚挙にいとまがない。

テニスですばらしい実績をあげている彼のセミナーは、
「私はいかにしてサバティーニを蘇らせたか」という
実に興味深いテーマで始まった。

ガブリエラ・サバティーニ。
彼は1971年アルゼンチン生まれの天才プレーヤーで、
14歳でプロに転向するや(1984年)、
またたくまに世界のトッププレーヤーに
かけ登っていった。

折しも20年近くの長い間、
女子プロテニス界に君臨し続けてきた
クリス・エバート、マルチナ・ナブラチロワの
二大巨星にもさすがに衰えが見え始め、
サバティーニがメジャータイトルを取り、
文字通り世界のトップに立つのは
もはや時間の問題であるかのように思われた。

しかし、どんな場合にも強力なライバルが出現する。

破竹の勢いでデビューした彼女にも、
天敵ともいうべきライバルが現れることになる。

シュテフィー・グラフである。

まさに彗星のごとく登場した
このドイツの少女は、
誰も成し得なかったエバート、ナブラチロワの
厚い壁をあっというまに破り、
1988年には4大メジャータイトルの
すべてを制覇するという快挙まで
成し遂げたのである。

グラフが破竹の快進撃をしているころ、
サバティーニも着々とトップランカーの地位を
固めてはいたが、
時がたつうちにテニス関係者のあいだで、
「いつもはあんなに強いサバティーニが、
どうしてメジャータイトルになると
あと一歩及ばないんだろう」というような会話が
ささやかれるようになっていった。

事実、彼女は全米オープンなどの
メジャータイトルを目前にしては、
肝腎なところになると実にあっけなく
敗れ続けていたのである。

グラフとサバティーニ。

プレースタイルの違いこそあれ、
技術面でも体力面でもどちらも
甲乙つけがたい天才的なプレーヤーである。

しかしデビュー当時から
この二人には決定的な違いがあると
言われていた。

それは本書のテーマであるメンタル面である。

つまりサバティーニは、
ラテン系を代表するような
明るく奔放なプレーぶりで、
自分のリズムにのっている時にはめっぽう強いが、
ひとたびくずれ始めると非常にもろく、
あきらめも早い。

これに対しグラフは、
どんな時にも表情ひとつ変えない
ポーカーフェイスでプレーし、
かつてアイスドール(氷のお人形)といわれた
エバートを上回るほどのしぶとさを
デビュー当初から備えていた。

1988年の全米オープン決勝に進出した
サバティーニは、
敢然とグラフに立ち向かっていったが、
心・技・体のすべてに充実したグラフの前に
完膚なきまでに打ちのめされ、
グラフのグランドスラム達成の引き立て役に
なり下がってしまった。

この試合を頂点として、
サバティーニの成績は
凋落の一途をたどることになる。

モニカ・セレシュ、ジェニファー・カプリアティらの
強力な若手の台頭ばかりでなく、
彼女はツアーサーキットの生活に疲れ、
すっかり自信を失いかけていたのである。

そんな彼女が、自分に残された
最後のトレーニングすべき領域、
つまりメンタル面の強化を思い立ち、
レアー博士に救いの手を求めたのは
1990年の4月であったという。

レアー博士は、本書でも述べられている
いくつかのテクニックを用いて
彼女の自信を回復させると同時に、
プレーとプレーの間の
インターバルにおけるメンタルコントロールを
徹底的に指導していった。

その結果、彼女のプレーは短期間に
見違えるように改善され、
6月のウィンブルドンでベスト4、
そして9月初めの全米オープンでは、
とうとう宿敵グラフを3-0のストレートで下し、
念願のメジャータイトルを手中にしたのである。

     (後略)
----------------------ここまで----------------------

このようにメンタルトレーニングというのは
本来ならとても効果があるものなんです。

それとこの例からも分かるように
メンタルトレーニングというのは
本物からトレーニングを受ければ
短期間で見違えるように改善されるのです。

僕もこの短期間で見違えるように改善させるやり方派なんですが、
なぜなら、自信がない状態で長い期間プレーさせると
自信を取り戻させるのに、
とても苦労するのを
私は知っているからです。

だから飲み込みの早い選手でしたら約3か月、
飲み込みの遅い選手でも6か月ぐらいで
メンタルタフネスを獲得させることができなかったら
プロの指導者としては負けというぐらいの考えで
私は取り組んでいます。

まぁ~、同業者は
どういうお考えでいるかは知りませんが・・・。

ただ、僕のやり方では、
効果があることが分かったので
もっと教えてくださいというパターンと、

日本人アスリートは特にすぐに天狗になるので、
大きな効果が見込めることからやると
「もう十分」と最後まで取り組もうとしないパターンがでてきますが、

最後までしっかり取り組まなければ
ツケが回ってどこかで痛い目に遭うことはあるというのは
知っておいた方が良いと私は思うのです。

さて、タイガー・ウッズ選手の全盛時代、
何回もゾーンに入ったプレーを見て、
タイガーは特別と感じる選手も多いかもしれませんが、
僕からすればタイガーのように
何回もゾーンに入れない日本人選手の方が
異常としか僕は思っていませんから・・・。

最後に、多くの国民が
日本人選手についてメンタルが弱いと感じていますが、
いい加減、本物の専門家から学んで
多くの日本人選手が
メンタルタフネスを獲得して活躍してもらいたいと
切に願っています☆

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