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【インタビュー】ジャパニーズホラーの旗手・清水崇監督が語る”怖さの広さ”とは。14名の監督が織りなす『スマホラー』の魅力(後編)

現在、好評配信中の日本ホラー映画界の旗手・清水崇監督が総合プロデュースを務めるsmash.オリジナルのホラードラマシリーズ『スマホラー』。

全て1話完結で、幽霊や怪物といったスタンダードだけでなく、社会的不安や人の怖さまで、多種多様な怖さをド迫力の縦型短尺映像でお届けしています。

全14名の監督が参加する『スマホラー』、今回はその中から清水監督を含む6名の監督に、撮影秘話や推し作品についてお伺いしました。

本記事は、ロングインタビューの後編となります。

前編記事:【インタビュー】ジャパニーズホラーの旗手・清水崇監督が語る”怖さの広さ”とは。14名の監督が織りなす『スマホラー』の魅力(前編)

津野監督:『後悔する』今回は”らしさ”を封印。怖さだけを追及した

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津野励木(つのれいき)
ニューヨークで映画制作を学び、インディペンデント映画会社トロマのメンバーとなり、カルト映画の巨匠ロイド・カウフマン監督に師事。その後、血迷ってニューヨーク国連本部を主に、報道取材スタッフとして勤務。ヒラリー・クリントンにマイクを向けた日に業務に満足し、退社。帰国後に監督・脚本を手がけた「CRYING BITCH」がSXSW国際映画祭(アメリカ・テキサス)、ファンタジア国際映画祭(カナダ・モントリオール)他、多数の国際映画祭で正式出品される。現在、監督・脚本を担当する新作長編映画「MAD CATS」を制作中。

ー津野監督の作品は、これから『スマホラー』に続々と登場予定です。縦型や短尺でのホラー作品の撮影だからこそ、挑戦できたことはありますか。

津野励木(以下、津野):僕は4本やらせてもらったんですけど、普段のカメラで撮影したものが2本、残りの2本はスマホで撮影しました。今、編集している最中なのですが、不思議なのがPCで編集してる時は縦型にしっくりきてなくっても、自分のスマホで見た時には意外としっくりきたりするんです。最終的にスマホで見るものを撮っているのに、それを編集時は大きなモニター越しに見て確認っていう、その感覚がすごい不思議で。それ以前に、現場でのモニター確認の段階でも想像しづらかったっていうのが苦労したところでもあり、今回、挑戦した点でもありますね。
清水:僕は、他の監督の編集途中のものもチェックさせていただいているんですけど、最終的な仕上げは映像も音もやっぱりスマホで見ないと視聴者目線での感覚がわからないんですよ。スマホで見るように作られた作品群ですからね。明るさや暗さに関してもそうですね。日中の明るいところで見るのと、室内の落ち着いたところで見るのとはまったく違う。ホラーは、暗いシーンが多いんですけど、日中だと反射しちゃって見えないんです。そういうことも考えなくちゃいけなくて、なかなか大変でした。でも、そこが斬新だし面白かったですね。

ー監督された作品の中で印象的なシーンやオススメの作品はありますか。

津野:僕いつも、どうしても笑いを足そうとしてしまうんです。首が折れるんだったら3回頭が回ってから折れた方がいいと思っているので(笑)。この話がきた時に、清水さんから「津野さんはどこかでふざけようとすると思うけど、1回ホラーに振り切ったものを見てみたい」と言われて、それを意識しました。中でも、『後悔する』というのが、僕が監督した4作品の中で一番ホラー色に振り切っていると思いますね。ふざけてないなって思ってもらえるかと(笑)

ーこの作品は、面白い撮影裏話があるとか。

津野:そうなんです。撮影した状況も大変だったので思い出深くって。ロケ地が天候は良かったけど、強風の日に崖の上で撮影したんですけど、モニター越しでも砂嵐が見えるくらい目があけていられない状況。目に砂が入っている俳優さんに、もっと目を開けてください!って言って、僕は眼鏡でカバーしている(笑)セリフで「つらいよ」「代わってよ」ってあるんですけど、もはや芝居じゃないかもしれない(笑)

r津野監督③

r津野監督

r津野監督②

◆津野監督『後悔する』(配信準備中)では、強風の中、崖での撮影に挑んだ。作中で放たれる俳優さんのセリフにぜひ注目していただきたい。

清水:せっかくホラーに振り切ったのに、裏話きくとやっぱり笑っちゃいますね(笑)

片桐監督:『したためる』前代未聞の意欲作!人は一切登場しない、文章と音で訴えかける恐怖

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片桐絵梨子(かたぎりえりこ)
学生時代より自主映画を撮り始め、映画美学校フィクションコース修了後、脚本や監督として活動を続ける。主な監督作として『きつね大回転』('08 ユーロスペースにて公開)dTV「しってはいけない怖い話」('10)より『木目』、『絵日記』、NHKEテレ コワイオハナシノクニ『皿やしき』('18)などがある。現在長編作品を2作執筆中。

ー片桐監督は、縦の画角を意識した前代未聞の恐怖作『したためる』がスタンバイしていると聞いています。

片桐絵梨子(以下、片桐):縦型で撮るってことでシナリオを考えたので、今までにないものを考えることができましたし、新しい挑戦ができました。スマホでとったり、カメラを縦にして撮ったり、そうすると今まで全然見たことがないものが見えてきて、何を撮っても面白かったです。今まで見たことがないものを作れた気がして、もっとやってみたいなと。

配信はこれからなんですけど、『したためる』という、人が出てこない作品はぜひ見ていただきたいです。”お手紙をしたためる”、の”したためる”なのですが、日本語ってもともと縦書きなんですよね。そことスマホの縦画面が繋がるんじゃないかと思い、チャレンジしてみました。
清水:これも、『スマホラー』ならではだよね。映画館でやったら怒られるよね(笑)
片桐:日本語のくずじ字がつらつらと下に続く展開なのですが、実はこのくずし字を書いてくださったのは、人気TikTokerの穂(すい)さんという方なんです。普段はペン字を書かれている方なのですが、くずし字にとても”艶”があって。TikTokでスカウトさせていただきました。

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◆達筆なくずし字が印象的な片桐監督の『したためる』(近日配信)では、驚くべき恐怖体験が待ち受ける。作中のくずし字を執筆したのは、人気TikTokerの「穂(すい)/ペン字(sui1030)」さんだ。https://www.tiktok.com/@sui1030?

片桐:スタッフの中には怖すぎて二度と見たくないという人もいたり、人間性を疑われた時もありましたが…(笑)。私としてはぜひリピートして堪能してほしいと思っています。文字だけでなく、声、そして音楽が本当に恐ろしいとも言われていて。くずし字と共に展開される、声と音楽にも注目してください。絶品ですよ。
清水:自らハードルをあげたね(笑)。でも、あれは本当に怖いと思う。他の作品とは全然違う方向で、プロットがあがってきた時点で、はぁ?となりましたよ。でも、こういうのもあって良いのか、『スマホラー』ならではだな、と。

野本監督:『笑う』ホラーが苦手な監督が挑戦する、縦型ホラーの新境地

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野本梢(のもとこずえ)
山形生まれ埼玉育ち。 学習院大学文学部卒。 シナリオセンター、映画24区で脚本について学び、2012年よりニューシネマワークショップにて映像制作について学ぶ。 人を羨み生きてきた為、奥歯を噛み締めて生きる人たちにスポットを当てながら短編映画を中心に制作を続けている。第14回 田辺・弁慶映画祭で、長編映画『愛のくだらない』が弁慶グランプリと映画.com賞をW受賞、2021年8月テアトル新宿にて公開される。

ー野本監督は、実はホラーが大の苦手と伺っています。『スマホラー』へ挑むにあたり、工夫した点や難しかった点はありますか。

野本梢(以下、野本):縦型での撮影は、みなさん(撮影スタッフ)初めてだったので、すごい楽しんでやれました。特にカメラマンは、縦だからこその構図だよねって楽しんでくれて。ただ、録音さんだけは、マイクを上から差し込めず大変そうでした。。見る方が、映画館とかと違って、どこかにいて集中して見るって状況じゃないので、飽きられないように編集しています。
映画だとじっくり見せるところを、あえて搔い摘んだりした方が、スマホだと良かったりするところもあって、なるほどなって。あと、スマホが手の中にあるっていうのも特殊だと思っています。置いて見るっていうより、こうやって(手の中で)見ますよね。清水監督の『呪われる』のドローン撮影のシーンが、見ていて自分がふわっと浮いた感じがあって、私もドローン撮影すれば良かった!って思いました(笑)。
清水:ドローンは、機材費含め人員が大変なので、実は石田プロデューサーが自ら飛ばしてます(笑)

ー野本監督の作品は、今、『堕ちる』と『殖える』が配信されています。これから配信される作品も含め、思い入れのある作品はどちらでしょうか。

野本:わりと縦とか意識せずに撮ったので、”縦型だからこそ”みたいにはなっていないですけど、『笑う』が気に入っています。昔、仲が良かった友達が会わないうちに精神的にやられちゃって、その友達の家に潜り込んで会いにいくストーリーで、怖いかは分からない。でも、いい話になったと思います。

笑う

◆ホラーが大の苦手と話す野本監督が手掛ける『笑う』(5/28より配信)。”怖くはない”と監督は話すがその真相は。

清水:梯子のシーンは、おお、そうきたか!と。あの撮り方はうまいなって。しかも、僕が一緒に仕事したかった女優さんが出ていて、悔しかった(笑)

”怖さの広さ”を体感して。ホラー苦手な方でも見られて、ホラー好きも飽きさせない作品

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ー最後に、『スマホラー』を通じて視聴者の皆さんへ届けたいメッセージをお願いします。

清水:性分が違う13人の監督に声をかけさせてもらいました。見る方も、同じ怖いでも好きな怖さ、苦手な怖さ、いろいろとあると思います。それは監督陣も同じ。それぞれ抱えているものが違うからこそ、提案してくる怖さの種類も違う。そういう”怖さの広さ”が見てくださる方にも伝わったらいいなと思います。見てくれた人が、どんな怖さが好きか、最初に何を見るかで変わってくると思うけれど、様々な傾向のものがあるので1作だけ見て決めつけず、飽きずに、各自が好む違った恐さに出くわしてくれたら嬉しいです

ホラーが苦手な人も見てくれるといいんですけど、冒頭の共通メインタイトルを、僕が思いっきりどろどろした感じでつくっちゃったから入りづらいかな(笑)。その後の各内容は本当に様々なので、気に入ったら友達とシェアして見てもらえたらと思います。

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『スマホラー』
配信頻度:毎週水曜日と金曜日に新エピソードアップ。全50エピソードを配信予定。
総合プロデュース:清水崇
監督(順不同):清水崇、川松尚良、毛利安孝、片桐絵梨子、津野励木、Pablo Absento、中神円、佐々木勝己、寺西涼、内藤瑛亮、羽田圭介、岩澤宏樹、永江二朗、野本梢(計:14名)
配信プラットフォーム:バーティカルシアターアプリ「smash.」
視聴URL:https://sharesmash.page.link/MbYB




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