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【寄稿】島コラム vol.01 日本の島と、その多様性

スマートアイランド推進事務局です。
スマートアイランドに関心を持つ方に、島のことを知り、関わりたいと思っていただけるような情報を「島コラム」としてお届けします。
vol.01は、一般社団法人離島総合研究所代表理事の上田嘉通氏による寄稿「日本の島と、その多様性」です。


■そもそも島とは?

「島」という単語は、多くの方が日常的に使っていると思いますが、島の定義を理解している方は少ないと思います。いったい島とは何なのでしょう?

国連海洋法条約の第121条には、「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時にも水面上にあるものをいう」と記載があります。この定義は、皆さんのイメージする島と概ね認識は一致するのではないでしょうか。
「水面上」とありますので、必ずしも海である必要はありません。日本には琵琶湖の中にある沖島という島があります。人口は令和2年国勢調査で264人。近江八幡市に属する島です。

琵琶湖に浮かぶ沖島(出典:Adobe Stock)

先ほどの国連海洋法条約の定義に基づくと、地球上のすべての陸地が島では?という解釈もできそうですが、そこは線引きがされています。
それは「オーストラリア大陸より小さいものが島」です。
国連海洋法条約と比べるとずいぶんと相対的で曖昧にみえるかもしれませんが、地質学的、生態学的、人類学的な観点など様々な理由で定められています。オーストラリアより大きければ「大陸」、小さければ「島」というわけです。ちなみに、世界でいちばん大きい島はグリーンランドです。

■日本の島のさまざまな分類

国際的な島の定義を見てきましたが、実は日本には日本の定義があります。国土地理院では、「法令等に基づく島のほか、地図に描画された陸地のうち自然に形成されたと判断した周囲長0.1km以上の陸地」としています。
では、その数え方にもとづくと実際にどれくらいの島の数があるのでしょうか。
国土交通省が公表している資料によると日本は14,125の島々で構成されています。そして、そこからさまざまな枝分かれをしていきます。

日本の島嶼の構成(出典:国土交通省)

まず分かれるのは、法律上の島か、島でないか。国土交通省では、上図のように区分されており、本州、北海道、四国、九州、沖縄本島を除く14,120の島が離島とされています。
次に分かれるのは、有人島か無人島か、です。この分け方はシンプルで人が住んでいるか否かです。有人島は417で無人島は13,704と分けられます。
日本は島国と言われ非常にたくさんの島がありますが、その多くは無人島なのです。

そして、この有人島417が、法対象かそうでないかに分けられます。まず、法対象とはどういうことでしょう。
離島に関する法律には、離島振興法(昭和28年制定)をはじめ、奄美群島振興開発特措法(昭和29年制定)、小笠原諸島振興開発特措法(昭和44年制定)、沖縄振興特措法(旧法昭和46年制定)などがあります。離島振興法の対象離島のうち、さらに有人国境離島法という法律の対象離島もあります。日本の島に関する法律が、なぜ1つの法律ではないのか。ここには歴史的な背景があります。
それぞれの法律の制定時期と日本への返還時期を見てみましょう。離島振興法という、日本初の離島に関する法律ができた時点で日本領だった島は離島振興法の対象になり、それ以後に日本に返還された島は、その時点で特別措置法(特措法)が制定されました。(沖縄は返還協定調印時に特措法が制定)

離島の日本への返還時期と法律制定時期(著者作成)

そして、それぞれの法律でニュアンスの違いこそあれ、法律制定時には「本土より発展が遅れているので、その格差を是正しよう」という意図が含まれていました。
近年の法律では、本土と島との違いを「格差(島が劣る)」ではなく、「価値ある地域差」と捉えるようになっており、島の特性・独自の魅力を活かした自立的発展を目指す方向になっています。
この格差を是正するという意図を持って作られた法律ですが、その指定が解除されるときがあります。離島振興法においては、離島の「四方を海等に囲まれた」地理的な制約が解消されたときです。

気仙沼大橋(平成31年4月竣工)(出典:Adobe Stock)

例えば、架橋により本土と繋がった場合です。
愛媛県宇和島市の九島(平成28年九島大橋開通)、宮城県気仙沼市の大島(平成31年気仙沼大島大橋)などは、近年本土と架橋され離島振興法の対象から外れた島です。このように、離島振興の対象か否かで法対象か否かが分けられ、法対象である306島は前述したさまざまな法律があり振興が図られています。


一般社団法人離島総合研究所代表理事
上田 嘉通

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