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【イベント】スマートアイランド推進プラットフォーム設立記念シンポジウムの開催レポート(6/7)

スマートアイランド推進事務局です。
去る、8月8日(木)に、「スマートアイランド推進プラットフォーム設立記念シンポジウム」が開催されました。
 
シンポジウムでは、離島地域からの事例紹介として、三重県鳥羽市(答志島、神島など)、広島県大崎上島町(大崎上島)、佐賀県唐津市(神集島など)、長崎県五島市(福江島など)の4地域から具体的なお話を伺いました。
 
その後のディスカッションでは、事例紹介をいただいた4地域の自治体・事業者の皆さまに加え、有人離島専門メディア「リトケイ」を発行するとともに、様々な離島の実情に精通し、島とともに共創プロジェクトを実践してきた、離島経済新聞社代表理事・統括編集長の鯨本あつこ氏にもご登壇いただき、スマートアイランド推進事務局の上田嘉通がモデレーターを務めました。
今回は、各地域の事例紹介の後に行われたディスカッションの前半の概要をご紹介します。


官民の良好なマッチング、信頼関係の築き方とは

ディスカッションの冒頭では鯨本氏から、離島経済新聞社の取組、スマートアイランドへの期待をお話しいただきました。

小さくて、ばらばらで、複雑なものを、まとめて、繋げる

有人離島専門メディア「リトケイ」では、離島の情報を、多くの方に離島に関心を持ってもらえるよう工夫をしていますが、大島や黒島のように同じ名前の島が多く、人口規模も小さな離島の話題を社会に伝えることは決して簡単ではないと鯨本氏は言います。

離島経済新聞社代表理事・統括編集長 鯨本あつこ氏

そこで、1つ1つの島の情報を「リトケイ」に集めることで、島に興味を持った人たちが島と繋がりやすくなるよう、ウェブによる情報発信やフリーペーパーを発行しているのです。

今、離島経済新聞社が入れているのは、今後ますます厳しくなる人材不足と財源不足の課題に対するサポートです。
 
「『リトケイ』をベースに島の可能性を普及啓発しながら、読者、サポーター、企業や団体など離島に関心を持つ方をマッチングする交流促進事業にも取り組んでいます」(鯨本)
 
また、持続可能な世界を島から作る先端事例をどんどん生み出すサポートができるよう、リトケイでは今年4月に「世界がかわるシマ思考、離島に学ぶ、生きるすべ」という本も発行しています。
鯨本氏は、「島には優れた特徴があります。例えば古き良き伝統的な暮らしや、資源を大切にする知恵、人と人の共助など、明治以降の近代化で失われてきた、豊かに生きるすべが残っていて、現代人が離島に学ぶべきポイントともいえます。島に残る価値を大事にしつつ、スマートアイランドのような先進的な取組を当てはめていくと、持続可能な世界を牽引するような事例が生まれていくはず」と話しました。
 
先端事例を生み出す共創マッチングにも、さらに力を入れていくとのこと。11月14日には、全国の島のキーマンや有識者を集め、「未来のシマ共創会議」というタイトルで「なつかしくてあたらしい未来を島からつくる」ためのカンファレンスが行われます。
 
カンファレンスのテーマは「理想の共創」「暮らし続けられる島」「海を越える防災ネットワーク」「働き方と人材確保」「持続可能なお金」の5つ。スマートアイランドプラットフォームに集う皆さんが持つ、新技術・デジタル技術と連携した展開にも期待が高まります。

良いマッチングの仕方、信頼の築き方とは?

ディスカッションの前半では、マッチングの進め方、官民の信頼関係の構築の仕方についてお話を伺いました。

鳥羽市の中村氏は、セコム医療システムさんとのマッチングのきっかけについて「国土交通省が実施していたニーズ・シーズ調査を見たセコム医療システムさんから直接お声がけいただいた」と振り返ります。遠隔医療の課題を抱えていた鳥羽市としては救世主のような出会いとなり、その後も関係が6年続いているそうです。オンラインやリモートの事業をしているわけですが、関係性を構築するには、やはり対面でのコミュニケーションが大事とのことでした。
 
大崎上島町は谷川町長にコメントをいただきました。「どんな人に島に来て欲しいかを考えるときにも、『こういう人が足りない』と分かっていればありようが違う。『とにかく来てください』というのとは全く発想が逆」と町長。大崎上島町と一緒に取組をしてきた企業の皆さんに共通するのは「何ができるかわからなくても、一緒に何か世のため人のために喜んでもらえることをやってみたいという想い」とのことでした。
エイトノットもそのひとつ。エイトノットのCTOが大崎上島の広島商船高等専門学校のOBだったというご縁もつながったそうです。

大崎上島町 谷川町長

離島経済新聞社の鯨本氏には、信頼関係の築き方についてお話を聞きました。「何かを共創するときには、信頼関係が重要。アフリカの伝統民族でも、島でも、知らない相手とはまずテーブルを囲んでご飯を食べることで信頼が構築される。信頼は人間の関数なんです」とのこと。ちなみに山口県の六連島の方々は「関係人口よりも信頼人口が大事」と言い、特に小さな島では誰と手をつなぐかを大事にしていると言います。また、先端技術の話になると、どうしてもカタカナ用語が多くなるため、島に人にとってわかりやすい言葉を選んで使うことや、「島の将来を担う子どものため」「気候変動や人口減少などの危機意識」などコミュニティ内で共有しやすい共通ビジョンの設定することも有効と助言いただきました。

取組を継続するには?

マッチングをした後、取組を単発で終わらせずに継続させることも大切なことです。そのためのポイントをお伺いしました。

唐津市の堀田氏は、モチベーションの問題が大きいとのことでした。神集島では「島の方はトイドローンを飛ばしてみたら楽しかったんだと思う」という楽しさから始まり、事業として島の役に立つものになっていったそうです。「ドローンの講習って大変なんです。大人が何時間も座って講習受けて、シミュレーターで練習して。それを、普段の仕事が終わってから夜な夜なやってくれたのは楽しさから始まったからじゃないですかね」と堀田氏は言います。継続という点では、お金の部分の重要。機体も高額で保険料も高いため、それをどうやって捻出していくかが課題になります。神集島では企業が推進役を担っているため、唐津市としても何か援護射撃をできたらと考えているそうです。

唐津市 地域交流部 地域づくり課 兼 離島振興室 堀田隆児氏

五島市の工藤氏は、平成30年度頃から、実はドローンを活用した魅力のあふれる島づくりとしては取り組んでいて、その頃から、ドローンによる日用品、医薬品配送などに継続的に取り組んできたと言います。「『魅力あふれる島づくり』という共通認識をしっかり持って取り組めているので、それがモチベーションに繋がっているのだろう」とのこと。また、連携するそらいいなにとっては、行政の皆さんとの共通認識はもとより、新たに特区に指定されたり、新技術を導入したりという「企業側のモチベーションを高める出来事があるのも大きいだろう」とのことでした。
 
そらいいなの土屋氏は、「企業側はやはり収益をどのように確保するかということも1つ必要な目線。そこで大儲けする必要はないけれども、ある程度運行に必要なランニングコストを維持できる体制ではないと島の方に喜んでいただいても、それが継続できなければ撤退せざるを得ない」というシビアな面もあるとのことでした。その点について土屋氏は「幹となる事業をどこに位置付けるかが大事。BtoCの日用品・食料品流通事業とBtoBの医薬品配送事業では、BtoBの医薬品物流において大きなマーケットポテンシャルがあると思っており、そういったところでしっかり見合う対価をいただきながら、事業全体を持続させるということが大事」と話しました。

(後半に続く)

スマートアイランド推進事務局
 

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