地方バス会社の再編のきっかけになる?熊本で起こった交通系ICカード離脱について考える【西鉄中心のアライアンスは実現するか】
熊本市を拠点とする鉄道・バス会社5社(九州産交バス、産交バス、熊本バス、熊本都市バス、熊本電気鉄道)が、熊本市交通局(市電)を含め、交通系ICカードサービスから離脱するとのこと。
これは、高額なシステム更新費用がネックになっている様子。その代替案として、急速に広がりを見せているクレジットカードのタッチ決済機能によるサービスを提供するとのこと。
今回、初めて知ったのですが、熊本県には、地域限定のICカードである「くまもんのICカード」があり、
これは引き続き使えることもあり、上記5社は廃止に踏み切ったのではと思われます。
ただ、交通系ICカード廃止は、ユーザ目線ではサービスのグレードダウン感は否めず、熊本のユーザの方の反応は芳しくないようです。
このニュースは、バスを中心とする地方の公共交通機関の経営は、人口減少と運転士不足という厳しい状況にある中、多額のICカードのシステム利用料が上乗せされている現実を見せつけられているところがあります。
概ね全国のバス会社は、かつては紙による回数券を販売しており、それには1割程度のプレミアムがついていました。
交通系ICカードが広まったときは、率は低下したものの、それなりのポイントがついていましたが、今はどのバス会社もコロナ禍を経て廃止されているところが多いようです。
なので、熊本のユーザの方々は、決済が楽であるいうメリットが奪われることへの不満不安があるようです。
利便性の方が、運賃のメリットを上回るというのは、時代を感じさせるところがあります。
一度便利さを体感すると、それを失うデメリットが大きいのでしょう。
さて、今回、私が注目するのが、今後ICカードがバス会社の経営に大きな影響力を持つのかという点です。
現在、九州には各県独自で発展を遂げたバス会社があります。これらのバス会社は、このICカード問題を抱えているのではとみていましたが、今回の熊本の動きをみてやはりという感が否めません。
長崎県はかつて、長崎スマートカードという県内のバス・鉄道事業社が連合して独自のシステムを導入していましたが、これも更新費の問題もあり、継続を断念。その後対応は、各社対応が割れました。
多くは西鉄が提供する「nimoca(ニモカ)」に移行しましたが、一定の規模を持つ長崎バス(長崎市)は独自の決済サービスを導入しています。
興味深いのが、島原鉄道(島鉄バス)(島原市)で、当初はnimoca導入を表明していましたが、会社が長崎バスの傘下に入ることになり、nimoca導入を撤回しています。
このように今後、ICカードの利用という点で、バス会社の陣営が形成されていくことが考えられます。
すでに、大分交通、大分バス(ともに大分市)は、西鉄が出資しているバス会社ですし、西肥バス(長崎県佐世保市)も、私的整理の段階で、西鉄から資本と役員受け入れをしており、西鉄グループではないものの、広い意味での西鉄陣営の一員となっている。
また、サービス利用という点では、JR九州は、独自の交通系ICカードであるsugoca(スゴカ)がありながら、JR九州バスの一部の路線では、バス路線決済機能に優れているnimocaを導入しています。
独立性の高い佐賀県のバス会社や、南九州のバス会社も今後、西鉄との関係を持つ方がICカード(nimoca)やバスの位置情報がわかるバスナビなどの利便性の高いサービスをユーザーに提供できるメリットがあり、連携を深めていくのかもしれません。
逆に言うと、このようなデジタル系のサービスを提供できるのは、西鉄クラスのバス会社しか九州にはないとも言えます。
今後、公共性という点から自治体からの補助が出てくると、広く西鉄バスが提供するシステムによるアライアンス(連携)はありえるのかもしれません。