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初心に、戻れ

就労継続支援B型事業所エミリィプラスを事業承継して9か月が経ちました。高い志を持って臨みましたが、職員との衝突、福祉の現実、工賃アップの困難など。様々なことにぶつかりながらも「経験」という知識をまとうことができ、血となり肉となって自分の信念もより強いものになった気がします。そうした私の想いもやがて職員や利用者さんに伝わり、エミリィプラスはとても明るく雰囲気のよい事業所となってきました。
そして、クラウドファンディングの成功やエミリィプラザの出店により、メディアからの取材も増えてきました。利用者さんの工賃アップと共に障がい福祉施設の存在を世に広めるという私のミッションも少しずつカタチになってきたと思います。そう。色んなことがうまくいっていて、私は少しいい気になっていたのかもしれません。

忙しさの裏で

8月にリサイクルショップエミリィプラザがオープンしました。平日は毎日、職員一人と利用者さん3,4人が店舗で仕事をしています。私も週に1,2日入ります。店頭業務をしながら利用者さんへ仕事の指示、見守りを行います。先月は前回ブログに書いたように、来客も少なく、毎日のんびりと商品整理をしたりPOPを書いたりしていました。ところが先日チラシを入れたところ、バタバタと客数が増えました。もちろん嬉しいことではありますが、そこで今まで見えなかったことが見えるようになってしまいました。

利用者さんでKさんという30歳の男性がいます。息子と同じ発達障がいを持っており、言動もよく似ていて、えこひいきをしてはいけませんがよく声をかけたりしていました。チラシがあたり、忙しくなった日に店頭に出ていたのがそのKさんでした。普段から敬語を使うことがなく、私や職員にもため口で「ありがとう!」と言ってる子でした。何度か注意をしても変わることはありませんでした。そんな子が、急に初めて見るお客さんに「ありがとうございました」と言えるはずがありません。もちろん朝礼では毎日、接客に使う挨拶の練習もしています。でもそんな簡単に敬語が使えるはずがなかったのです。お客さんに「いらっしゃいませ!」など言えるはずがなかったのです。

同じ過ち

Kさんの来客への挨拶は全くできていませんでした。そんなKさんの姿に私はいらだっていました。「Kさん、いらっしゃいませは?」「ありがとうじゃなくて、ありがとうございましたでしょ!」何度かきつい口調で注意しました。今思えば、せっかく来てくれたお客さんに恥ずかしい店だと思われたくない。そんなただの私のエゴだったと思います。
Kさんは私が注意するたびに「あ、そっか」といつものように返事をしていましたが、やがて「ちくしょう、ちくしょう」とつぶやきはじめました。いらだっていた私は思わず「なに?ちくしょうって?」と聞くと「なんでもない」と答えていましたが、そのとき彼の中では相当なストレスになっていたのだと思います。それは私も少し落ち着いたあとに気づいたことですが。そのことに気づいた時、私は猛烈に情けなく恥ずかしくなりました。周りからすごいすごいと言われて調子に乗って、目の前の本来するべきこと=利用者さんの支援を忘れていたのだと。

そのとき、思い出したことがあります。2021年5月7日、米原先生に諭されて障がい福祉に人生をかけると決め、息子に対しての詫びの気持ちから号泣した日のことです。昔、息子に対してとっていた酷い態度を私はKさんにしてしまったと。。。どうしようもない馬鹿野郎だと自分を責めました。どうしてもっとKさんの目線で指導、支援ができなかったのか。私は自分の見栄や体裁を気にする未熟者でした。指導員としても、経営者としてもまだまだです。もちろん人としても。
しかし、いつまでも悔やんでばかりもいられません。来週からも事業所は続きます。利用者さんはエミリィを楽しみにやってきます。みんなのため、初心に戻ってがんばります。

エミリィサンキュー。

就労継続支援B型事業所エミリィプラス
代表 中満健

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