網膜剥離になった話(3)

【11日目】
早朝、爺さん患者の痰切り音に起こされた。
決められた起床時間には少し早かったけど、もう起きることにした。

手術は15時過ぎと聞かされていた。午後から30分おきの点眼が始まる。
手術室からなかなかお呼びがかからず、16時過ぎにやっとお迎えが来た。
病室から車椅子に乗せられ中央手術室へ。
ドアを二つ抜けた先の準備室のようなところで麻酔薬を点眼され、さらに長い廊下を抜け、奥の眼科手術室へ入りベッドに寝かされた。
もっと整然とした静かなイメージがあったが、J-POPがBGMで流れていたり、リラックスした雰囲気だった。
まずは目をコットンで消毒され、水で洗浄し目の周りをテープで固定され、右目以外の部分を隠された。いよいよだ、と緊張で呼吸が荒くなった。
右手には血圧と血中酸素濃度を測るモニターと、胸に心電図モニターを貼られた。

まずは白内障の処置が行われたようで、レンズ入ったよーという声が聞こえた。
続けて網膜剥離の処置。
先生の「ちょっと重くなりまーす」の声のあと、何かが刺さるような「痛み」というよりは「重み」のような違和感を数回おぼえた。
その後、ジジジジと何か軽い振動のような感じがあったり、何かが見えるというわけでもないが、またポツポツとレーザーの点を当てられるような感じや、プローブ(探り針)が動く感じがぼんやりと見えた。途中に一度だけ感覚が戻ってきそうな感じがあったので、麻酔を追加してもらった。気を紛らわそうと何か別のことを考え始めたのだけど、夕食の時間に間に合うかどうかとか、BGMがちょっと古臭い感じだなといった、どうでもいいことばかりだった。
もう一度感覚が戻ってきそうだったので声を出したらもうちょっとだから我慢してと。
ええええ…と思ったところで終了。顔のカバーを外されて、右目に大きなガーゼをあてられ起こされた。術前には気づかなかったけど、顔の上には大きな顕微鏡のようなものが見えた。
時計を見たら40〜50分ほどのことだった。
先生の「きれいに治りましたよ!」の声に緊張が解け、ホッとした。
また準備室へ戻り、病棟看護師の迎えを待ち、そして病室に戻った。
麻酔が術後いつまで効いていたのかわからないが、術後の違和感とか痛みは無かった。
心配していた夕食の時間には間に合った。普通に完食し、意外にペロリと食べられるものだな、と思った。

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