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ハッピーキャンパスライフ 【嵐山】


「あ〜〜彼氏欲し〜〜ってことで今週土曜、私主催で合コンしまーす」

カフェテリアで学生一杯無料のコーヒーを飲みながら次の講義までの時間を潰していた時、一緒にいた友達が突然合コンやります宣言を発令。
参加するつもりもないので返事もせず、視線はスマホに落としたままLINEニュースを開いたり閉じたりしていると頭上に軽めのチョップが落ちてくる。

「なーーに『自分、関係ないんで』みたいな顔してんだよ。勿論頭数に入ってるからなお前も」
「えー、やだよ。そういうのろくな男の子来ない」
「私が選りすぐりのイケメン連れてくるっつーの」

売れ残りのイケメンの間違いじゃないのか?なんて言えばきっと次は容赦ないチョップが落ちてくるのでここはお口チャックで。

「人見知りだからいい」
「アンタの知り合いの男の子も誘えばいいじゃん」
「近所の小学生男子3人くらい連れてくるね」
「ふざけんなこっちは本気で男探ししてんだよ」

違う方向で断る理由を探せば一瞬で対応策を出してくるし、軽い冗談にも本気の突っ込みで返すこの子は超出来る女だ。どうもどうも、これが私の友達です。無理矢理合コンに連れて行かれそうで若干友情揺らぎかけてるけど。

「嵐山くんとか呼んでよ、あんた友達なんでしょ?」
「や〜、友達だけど」
「嵐山くんさえいれば集まるメンツの質ぶち上げ間違いなしよ」

いやいや、そういうのに誘うために仲良くしてるわけじゃないし、嵐山は客寄せパンダじゃなくてれっきとした私の友達です。どうも。

「忙しいだろうし、そういうチャライベに嵐山は来ませーん」
「…ま、そりゃそうか〜戦隊モノに出てくる赤色のヒーローみたいだもんな〜合コンとか一番縁のないタイプ」
「そうそう、てことで嵐山と親交のある私も合コンに縁のない側の人間なんで」
「お前は引きずってでも連れて行くからな」
「ひい〜」

砂糖をめいいっぱい入れたコーヒーの残りを飲み干したところで、さっきまで名前が上がっていた彼がカフェテリアに入って来たのが見えた。今日も友達に囲まれて爽やかな笑顔を浮かべている。

「嵐山くんって彼女とかいんの?」

友人が少し声を小さくして、「ちなみに、興味本位で」なんて聞いてくるから私は首を傾げた。

「さぁ、聞いたことないけど」
「いーや、いるね。高校の時から付き合ってる守りたくなるような女の子らしくて可愛い彼女がいる顔してる」
「いや想像力凄まじ」
「今まで何人のイケメンを見極めてきたと思ってんのよ、舐めてもらっちゃ困るわ」

私が引いた分だけ彼女は誇らしげに胸を張った。いやいや、別に褒めたわけじゃないんですよ。

「でも彼女いるなら、私みたいな女友達なんている?」
「…たしかに。誠実そうだもんね。もしかして意外と彼女いなくて、アンタとかワンチャンあるんじゃん?」
「ないない。てかアホなこと言ってないでそろそろ動き出そうや。キミ次の講義室遠いんでしょ?」
「クソ〜私もそっちの授業取れば良かった…!寂しいから何か元気出ること言って」

その要求にももう慣れてしまって、指先でLINEニュースを開きながら空いてる方の手で適当に指ハートを投げる。

「ファイティン〜ちゅきぴだよ一生応援してる」
「まじで元気出たわありがとう」

気持ちのこもっていない声でのやりとりに顔を見合わせてウケてから、じゃあねと言ってお互い別々の講義室へと向かった。



カフェテリアから歩いて3分くらいで講義室に着く。そもそもこの授業取ってる人自体が少ないし、出席率もそこまで良くないから今日もほとんど1つの机を1人で占領できるレベルで人が少なかった。
適当な所に座って講義が始まるまでLINEニュースを閉じたり開いたりする。あ、この子アイドルやめるんだ。この見出し大袈裟すぎ。チョコケーキ美味しそ〜。
いつものように、そこまで興味のない情報を意味もなく流し見していると突然、コンコン、と机を小突く音。反射的に顔を上げると嵐山がいた。

「おはよう」

どうも、彼は戦隊モノに出てくる赤色のヒーローみたいな人、嵐山准。私の友達です。
おはようと返すと彼は爽やかな笑顔を浮かべて隣に座った。なんかこの部屋、いい匂いがする気がしてきた。

「まだ席空いてて良かった」
「埋まることないでしょ」

そうかな、と笑うからLINEニュースを閉じて、そうだよと返した。彼はたまに天然みたいな発言をする節がある。
「何してたんだ?」と聞く彼に「LINEニュース見てた」と答えて会話をスタートさせる。掛け合いが何往復かしたところで、「さっき美味しそうなチョコケーキのレシピ動画を見たからお腹が空いている」と話せば、彼が考えるような仕草をした。

「この後、お昼からって暇?」
「暇だねー」
「近くに美味しいごはん屋さんがあるんだ。お昼一緒に行かないか?」

美味しいごはん屋さん。こんなに心躍る単語が他にあるだろうか?聞いただけでもう美味しい。これは即決で。

「行きます」
「やった、実は前から連れて行きたいと思ってたんだ」

彼が頬杖をついて目を細めると、何だか妙に気恥ずかしくなって目が泳いだ。この男、あまりにも男前。

「楽しみにしております」
「はは、こちらこそ」

嵐山は友達をとても大事にする人だ。そして友達もみんな彼を大事にする。
嵐山と大学内で会っても常に誰かと一緒にいて、なかなか私から話しかけるタイミングが掴めない。だからこうやって彼から話しかけてくれた時はその日一日ハッピーに過ごせるというジンクスがある。私の中で。



何やかんやで講義が終わり、私のお腹もお昼時だと察知して食べ物を寄越せと今にも唸りだしそう。行くか、と鞄を持ち上げた彼に続いて立ち上がる。

「犬元気?」なんて私が投げかけた適当な質問も彼は丁寧に捌いて、話題をお互いの家族の話へと発展させる。
嵐山家にはこれまで何度かお招きされて行ったことがあり、彼の家族と私はそれなりに付き合いがあった。
しかし、私の家にもおいでよと言えば彼は決まって「大事な娘さんの家に男の俺が行くのは…」と笑顔でやんわりお断りする。懐が広いのに締めるところはきっちり締めているから、流石だなぁと思わざるを得ない。

何処を歩いていても誰かしらに声をかけられる嵐山を見ていつものことながら感心していると、ふいに彼が立ち止まった。

「ごめんな、2人でいるのに」
「え、何で謝るん?」
「注目されるのあまり好きじゃないだろう?」

どうやら私が人目を気にしているのでは、と心配してくれているようだった。確かに男女2人で歩いていると、まず周りからは友達ってよりは恋人として見られますもんね。どこまでも気配りの出来る男だなぁ君は。

「気にしないで、私たちどっからどう見ても友達にしか見えないと思うから」

そう見えるためにいつも一定の距離を保って歩いているし、と付け加えると彼は口をへの字にしてこっちを見つめ、私がわざと空けてた分の距離を詰める。

「そんなの誰が言ったんだ?」
「えぇ、」

誰も言ってませんけど。でも2人で歩いてて『彼女か?』って聞かれたことないし、私の作戦成功してるのでは?言い返す言葉をぐるぐると考えていると、手を掴まれる。

「はい逮捕」

私の顔を覗き込んだ彼は、悪戯っぽく笑う。

「え」
「連行しまーす」

いやいや待て。何?これ何だ?何で逮捕されたん?いやいやわからんこれはムズいわ。この発想は常人の理解が及ぶ範囲超えてる。天然の成せる技?嵐山が何考えてるのかまったくわからん…
結局されるがままに手を引かれ、美味しいごはん屋さんまで連行された。


店内はお昼時ということもあって予想よりも繁盛していた。彼はアジフライ定食、私はチキン南蛮定食を注文し、料理が出来上がるまでしばらく待つ。店の中の美味しい匂いや音でお腹の空き具合絶好調。あぁ、フライを揚げるあの音を着信音にしたい。

とにかく頭の中が食べ物のことでいっぱいだ。ふと思い出して「そういえばあそこの牛丼屋さん潰れたらしいよ」なんて話そうと目線を上げると、少し悩んでいるような顔の嵐山と目が合った。これは、アジフライ定食を待つワクワク感のある顔ではない。

「何かあった?」

考えるより先に聞いていた。彼が私に話せないことは本当にたくさんあって、私もそのことに対しては適度な距離を保たなくてはとわかってはいるけど。わかってたとしてもほっとけないじゃんね、友達だもん。
心配の目を向けた私に、彼は慌てて違う違う、と手を振る。

「えっと、そういうのではないんだ。大丈夫。ありがとう」

歯切れが悪い。悩みというほど大袈裟では無いにしろ、何か気になっていることがあるのは間違いない。私の推理力を舐めてもらっちゃ困るね、嵐山くん。

「私が力になれない感じのこと?」

こういう聞き方をするのはずるいけど、でもこれくらい聞かないと彼は自分から話してくれない。

「…いや、違う。むしろ君しかいないと…俺は思ってる」

額に手を当てて俯いたまま、意を決したような声で言った。
こ、これはもしかして…私もこの推理力を買われてついにボーダーにスカウトされるのでは、と固唾を呑んで次の言葉を待つ。

「土曜の夜、もし君の都合が良ければ…一緒に食事に行かないか?」

嵐山が珍しく緊張した感じで口にしたのは、思ってたのとは全然違う誘いだった。椅子に背もたれが無かったら多分私は転けていた。背もたれよ、ありがとう。

「なんか嵐山が緊張してるから何言われるんだろうってめっちゃビビった…」
「え!?あー…確かに今、緊張してたかも……何でだろう…すまない」

混乱しているのか、今日は表情が忙しい。目の前の彼はもう、“街を守る爽やかフェイスのヒーロー、嵐山准”では無くなっていた。落ち着きのないただの嵐山准だ。
「で、行けそうかな…?」と不安げに窺う声になんとなく流れで頷きそうになるも、ちょっと待てよと脳内でストップをかける。

「土曜日?」
「うん」

土曜日。聞き覚えがある。それって地獄の合コンが開催される日じゃん。

「あー……ちょっと待ってね。土曜日か」

正直合コンを蹴ってこっちの誘いに乗りたい。でも本来であれば先に誘われた方を優先するのが道理だ。どっちも友達からの誘いだし。
合コンでイケメンを捕獲しようと画策してるわけじゃないけど、私が不参加となれば私を合コンに連れて行こうとしている彼女のことが気掛かりになる。彼女は捕まえた男にはすぐ逃げられるけど、いつも何かと私に世話をやいてくれるいい子だ。そして私がいないとちょっと駄目になる子でもある。

「もしかして、先約あるか?」
「うん。友達に誘われてるんだけど、ちょっと行くかどうか迷ってて…」
「…合コン?」
「えっ、何でわかったの」
「ごめん。今日カフェテリアで話してる声、聞こえて」

嵐山はそれをとても言いにくそうに口にした。まさか彼にも聞こえてたとは。合コンやります宣言。

「あー…そっかー。私もホントは行きたいわけじゃないんだけど、でもやっぱり先に誘われてる方断って嵐山の方には行けないよなぁって…」

残念。今回は少し運が無かった。彼の誘いを断るのは勿体無いような気がするけど、仕方のないことだ。

「…うん。それもそうだよな」
「ホントごめん」
「いや、全然いいんだ、気にしないで。また誘う」

タイミングを見計らったように、お店の人が私達の昼食を運んできた。アジフライ定食のお客様〜あぁ、それはこっちのイケメンです。そのチキン南蛮は私。

気持ちを切り替えて食事と向かい合った。
目の前に置かれた定食から暖かい湯気と美味しそうな匂いが立ち昇る。2人揃っていただきますをして、ついに迎える待ちに待った瞬間。箸で掴んだチキン南蛮をぱくりと一口で迎える。
あぁ…これは幸せの味だ。

「美味しい…!嵐山嵐山、これ食べてみ」

ひょいとチキン南蛮を一切れ、彼のお皿に入れる。

「ありがとう、こっちも美味しいから食べて」

彼がお返しにとアジフライを一尾持ち上げたところで、ちょっと待った!と声を出す。

「ストップ!その取り引きは公正じゃありません」

どう考えても、アジフライ定食のたった三尾しかいないアジ丸々一尾とチキン南蛮一切れを交換するのは平等ではない、と異議申し立てをする。嵐山はアジフライを箸で掴んだまま眉を下げて笑った。表情のわりには引かない姿勢である。

「俺があげたいんだ、貰ってくれ」
「警察呼ぶよ!?」

周りのお客さんがちょっとギョッとするくらいの気迫でアジフライを追い返す。それが彼のツボに入ったのか、箸を置いて大笑いし始めた。

「いや笑いすぎでしょ」

思わず突っ込むと、ごめんごめんと笑いながら軽い深呼吸で息を整え、水を飲んで気持ちを切り替えた。

「そんなこと初めて言われたから」

実際、公平でないアジフライ取り引きごときで警察は来てくれないけど、私の中ではそれくらい大きな案件だ。ここは少し注意の一つでもしてやらんと気が済まない。

「嵐山、マジでそんなことしてたら世界から食糧が無くなった時に一番先に死ぬからね?」
「それもそうだけど…でもどうしても分けたくなるんだ。難しいな」

これは…ちょっと心配になるくらいお人好しだ。この人1人で生きていける?

「これじゃ駄目か?」

私がもやもやと悩んでいるのをよそに、彼はお箸で一尾のアジフライを綺麗に二等分していた。
まだちょっと貰いすぎな気もするけど…さっきよりは。

「ギリセかな」
「良かった」

私からのOKが出ると、ほっとしたように笑顔を浮かべる。プチ騒動を巻き起こしたアジフライがやっと私のお皿に置かれた。どうも、お疲れ様です。いただきます。

「美味しい!」
「だろ?」

こんなに美味しいものを易々と人に分け与えようとするのだから、嵐山はやっぱりすごい奴だ。私なら三尾全部独り占めしたいと思うだろう。


楽しい食事を終え、満腹になって店を出た。これから私はまた大学に戻って授業を受ける。嵐山もどうやら一緒に戻るようだ。
心地よい風を感じながら大学まで続く道を歩いて、もう少しで門につくというところで隣を歩いていた彼が急に足を止めて立ち止まる。

「やっぱり、駄目かな」
「ん?」
「先に約束してた友達に、俺から頼んでみてもいいか?」

そこまで言われて、やっと土曜日の話をしていると気が付いた。

「もしかして、嵐山はその日じゃないと駄目な理由があったりする?」

彼が一度断ったことにここまで食い下がるのは珍しい。何かわけがあるのかと思って聞けば、意外にも首を横に振った。

「いや……ない。ただの、俺のわがままだ」

あまりにも言いづらそうに喋るものだから、私の判断が間違ってたような気がしてきた。嵐山がこんな顔してまで言ってくれたことだし、これを逃すともう後がないような予感さえする。よし、決めた。

「私、やっぱり合コン断ろうかな。もともとノリ気じゃ無かったし、友達には他の子誘って行ってもらえばいいから」
「ほ、本当か!?あ、いや……俺のせいで無理させてない?」
「してないよ。私がそうしたくなっただけ」

喜んだ後、すぐ我に返るのが面白くて、つい笑ってしまう。彼はほっとしたように肩の力を抜いた。

「良かった……ありがとう。とにかく、君の友達には俺からも事情を説明させて欲しい」
「そんな責任感じなくていいよ。私が決めたことだから」

それに彼みたいな有名人がいきなり話しかけに行ったりしたら大変なことになりそうだ。

「俺がそうしたいんだよ」

…いやいや、そんなん言われたら私、もう折れるしか無くない?

「それ誰のパクリですか〜」
「あはは、誰だろうな」
「ズルいわ嵐山〜逮捕されるよマジで」

軽口を叩いて歩き始めると、彼も歩き始める。私の歩幅と彼の歩幅は違うけど、何故か並んで歩くことができた。

「ご機嫌ですか?」
「嵐山が話しかけてくれたので今日一日ハッピーデーです」

私の顔を覗き込んだ彼もご機嫌な笑顔を浮かべている。歩いてるだけなのに楽しいの何でだろうね。

「毎日話しかけてもいい?」
「そしたら私エブリデイハッピーデー」
「それなら俺もハッピー」

顔を見合わせて笑う。へぇ、キミ嵐山准っていうんだ。おもしれー男。




「よし。じゃあ、俺はこれから防衛任務だから」

門の前まで来て、嵐山は足を止める。
私はてっきり彼も午後の授業を取ってるものだとばかり思っていた。どうやら別の用事があるのに、わざわざここまで送ってくれたみたいだ。

「そうだったんだ。どうもありがとう」

じゃあまたね、と手を振っても、彼はその場からすぐには動かなかった。

「…元気の出ること、俺にも言って」

溶けるように目を細めて、私を困らせる時の笑顔で笑う。おいおいおい……そんなことまで聞いてたの?

「課金しないと言わないシステムでーす」
「そうか。いくらだ?」
「そんな簡単に財布出すな」

てい、と軽く小突くとまた面白そうに笑い声を上げる。これは、完全に揶揄われている。

「嵐山の悪ノリ、ガチに聞こえるからやめて〜」
「悪い悪い、君の反応が面白いからつい」

く、くぅ…爽やかを良いように使いやがって…!いつか爽やか警察が取り締まりに来るぞ!と心の中で地団駄を踏む。
気が済むまで笑うと、彼は改めて、真っ直ぐに私の目を捉えた。

「じゃあ、俺もう行くよ。また明日」

ぱっと爽やかに手を振って、踵を返した嵐山の背中を見送る。

爽やかで、底無しに良い奴で、たまにお茶目なところがある私の友達、嵐山准。
私の知らない場所では別の彼が呼吸をしていて、毎日、私や、知らない誰かの当たり前の生活を守っている。そんな彼の支えに、自分は少しでもなれるだろうか。

「嵐山〜!!頑張ってね!一生応援してる!これはガチ!」

少し遠くなった彼の背中に向かって、お腹の底から声を出して全力のエールを送る。今回は指ハートも特別に2つ装備した。
声が届くと彼は笑顔で振り返り、私の真似をして指ハートを返してくれた。








「あの嵐山くんの誘いを断ろうとしてたとかアンタ本気!?三門市民全員敵に回すようなもんよ!?死にたいの!?」

翌日、嵐山から一対一で丁寧な説明もとい謝罪を受けた友人は、圧倒的なオーラを喰らって半分くらい何言ってたか忘れたと気味の悪い笑顔を浮かべて戻ってきた。そして今私の胸ぐらを掴んで怒っている。めっちゃこわい。誰か早くこいつを逮捕してくれ。

「いやぁ、だって私にとっては君だって同じくらい大切な友達なんですよ…」

とりあえず言い訳してみるも、彼女の気迫に怯んで目を泳がせていると胸ぐらを掴んでいた手が急に離れた。

「イケメンを無下にしたことは絶対許せんけど…あんたのそういうとこ、結構好き」

どうやら許してくれるようだ。私の友達はみんな心が広くて助かる。

「あははっ、私もちゅきぴだよ〜」
「笑ってられるのも今のうちよ、今日はたっぷり絞るからね」

ふざけて軽口を叩いた私を脅して、彼女はニッコリと楽しそうな笑みを浮かべる。
ほんと勘弁してください。



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