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夜の砂浜

彼に別れを告げられて
そのまま夜の海に来た

家を出ていく彼だった人を追いかけもせず
呆然と友達に電話する
すぐに駆けつけてくれた友人は私を海へと連れて行ってくれた

お気に入りのサンダルを脱ぎ捨てて
波際に向かって素足で砂を踏みしめながら一歩一歩

月明かりしかないその浜辺は
真っ暗で波の音しか聞こえない
寂しさや悲しさは波にさらわれて
まだ冷たい波を思い切り蹴り上げた
弾けた水しぶきは涙のように頬を濡らす

太ももまで持ち上げたスカートの裾を握る手は自然とゆるみ
初めて海に来た子供のようにはしゃいだ

ふと振り返ると何も言わずに一緒に笑う友人

なんで私はこの友人に電話したのだろう

なんで私は彼を引き止めなかったんだろう

サンダルを拾ったら
砂まみれになってた素足を
浜辺の横にある水道で流した

そこには電灯があったから
流れていく砂と
握りしめた跡が残るスカートと
心配そうな友人の顔がよく見えた

もう大丈夫

恋に恋していたことに気づいて
流れていく砂と一緒に私の憧れも流れていった
シワシワになったスカートをはらって
濡れたままの足でサンダルを履く

私を見つめる月を背に
私は一歩を踏み出す


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