見出し画像

日曜の公園、カップ焼そばとお酒

もう20年は経つのか、
ある日曜の午前中に、子どもを
市民公園に連れていったときのこと。

すべり台やブランコ、砂場など
定番が揃う広場の隅に、
売店があって、その前には
軽食や休憩の取れるテーブルがあった。

お昼近くになって、
売店付近が少し混み合い始めた。
僕らも何か飲もうかと売店へ。
そこで僕は、あるご高齢の方の姿が
目に焼き付いた。

おそらく八十近い、ジャンパー姿の男性。
猫背でひたすら食べているのは
カップ焼そば。傍らにワンカップ大関。
その燗から湯気が揺らいでいる。

周りは全て、
何かを頬張る子どもたちと、
それを見守る大人たち。
その中にぽつんと独り、
そのおじいさんは
周囲を憚ることなく、
黙々とソース麺を箸で掬いながら
カップ酒を堪能している。

冬の陽射しを浴びながら、
老人の髪を風がそっと揺らした。

日曜の公園、陽射しの売店。
独りの老人、カップ焼そば、燗酒。

それ以来である。
在宅時に僕が何もおかずがないとき
買い置きしたカップ焼きそばに
ソースをたっぷりかけて、
燗酒で楽しむようになったのは。

焼いてないのに、カップそば…。
まあ、それも良し。

カップ焼きそばには、
青海苔と鰹ぶしをかけ、
熱々を頂くのがオツ。
ソースのかおりと相まって
昭和の風情で。

20年前の、名前も存じ上げないその御仁は    僕の中に、確かに何かを残された。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?