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[続.洋服物語] 洋服は語る ~モールスキンジャケットのご紹介~

中学3年生の頃に同級生の影響で洋服の魅力に取り憑かれ、今に至る(41歳)までに体験した『洋服』をはじめとした『モノ』にまつわるアレコレ。

自分の価値観を形成するうえでターニングポイントとなった『私と"モノ" との記憶』いわばモノにまつわる物語を書き綴る日記。

これは、
『おすすめアイテムの紹介』ではない。
『私物紹介』でもない。

読んだあなたが、少しでも洋服を好きになるきっかけ、自分の使う道具を愛らしく感じてもらえるようになれば嬉しい。


:Episode.12
「French Moleskin Jacket」

2年半店で働いてくれたスタッフ(佐藤)が就職のために先日退社しました。そのスタッフが出勤最後に書いたブログを今回は紹介します。

お客さんとして20歳の頃から通い23歳から25歳まで働いてくれたのですが、私とはひとまわり以上違うスタッフが2年半を通して感じたことを先日紹介したビンテージアイテムをフィルターに書いています。私が書いてあることと重複になる部分もありますが、この機会に読んでいただけたらと思います。


(本文)
先日ユーロビンテージが多数入荷しました。当店のフィルターを通し、セレクトブランドとの親和性も非常によく、良質で普遍的なものを厳選しました。今回は、入荷したモールスキンジャケットをご紹介しようと思います。

モールスキンは、モグラの毛皮のような感触のある、厚みのある綿素材です。モールスキンはモール(mole)=モグラ / スキン(skin)=肌という意味。もともとは、モグラの毛皮のことを指していたそうです。丈夫な綿素材と言えば、キャンバスやデニムが一般的ですが、モールスキンも非常に丈夫な綿素材として挙げられます。

フランスで炭鉱夫などの作業着として生まれ、今ではさまざまな洋服のルーツともなっているのがこのモールスキンジャケットです。特に今回入荷したモールスキンジャケットのキモはこの"フレンチブルー" と呼ばれるこの独特の色合いです。一点一点色合いやサイズ感が異なりますので是非ともご自分の理想のアイテムをお探しいただけたらと思います。

:50s Blue Moleskin Jacket Lapeld

こちらはフレンチワークの中でも球数が少ないとされている、襟がテーラードジャケットのようなラペル仕様のアイテムです。3つボタンのラペルタイプなので、一般的な丸襟のものと比べ上品さも感じられます。ウエストの絞りや筒型スリーブなど他のフレンチワークにはないデティールが魅力的な一着。

こういったイレギュラーなアイテムを見つけてしまうとどうしても気になってしまいますね。
すでにフレンチワークジャケットをお持ちの方でも2枚目としてぜひオススメしたいです。春秋は軽い羽織りとして、冬にはコートなどのインナーとしてロングシーズン着用できます。

:40-50s HUDRY FRERES DOLE Blue Moleskin Jacket 止まり襟

こちらはモールスキンジャケットの中でも代表的な丸襟型のアイテム。襟先がステッチで縫い付けられ固定されているこのディテールは初期のモールスキンジャケットに見られるものだそうです。ムラのあまりない程よい色落ち具合が個人的にはちょうど良い。この春先からガンガン着ていきたい佐藤理想のフレンチブルーです。

ところで、なぜこの縫い付けられた襟の仕様が生まれたのでしょう?
ここからは僕の想像に過ぎませんが、当時ワークウェアとしてフランス国内で着られていたモールスキンジャケットにおいて、基本的に襟は邪魔だったんじゃないかなと思います。

あくまで道具としての洋服。
寒い場所等で用いられるワークジャケットであれば、防寒の意味で襟を立てる必要もあったでしょう。ですが、フレンチワーク=炭鉱夫ということは、製鉄所や機関車の蒸気機関室が仕事場である当時の方々にとって、防寒の必要性はあまりなかったのではないでしょうか。

じゃあ襟のないノーカラーのジャケットを着ればよかったのでは?と思うのですが、これはもう、「紳士たるもの、襟付きの上着を着るべき。」という当時フランスのお国柄であったとしか考えようがありません。そんなふうに考えると、作業着なのにどこか気の利いたデザインやディティール・発色にも納得がいきます。

第二次世界大戦までワークウェアであったり、ミリタリーだったり、基本的には仕事着として着用することが服の主な目的でした。今回紹介したモールスキンジャケット含め、道具としての必要性に迫られたからこそ、服は発展を遂げてきました。また、それらの服は、洗練された必要最低限のデザインがゆえ現代のファッションにも取り入れやすく、流行に左右されることのない普遍的なものとして現代でも多くの人々に愛されています。

感覚的な話になってしまいますが、ビンテージアイテムのみならず、ストーリーがあるものにはそれ相応のオーラがあると思っています。クタクタになるまで使い込まれた美しい佇まい、そしてその背景にあるストーリーを思う存分に味わえることこそが最大の魅力だと僕は思います。

ひと口に道具と言っても、その捉え方は人によって様々です。道具のなかにファッション性を見出して楽しむ人、逆にそもそもファッションとして生み出されたものをまるで道具のようにガシガシ使う人など。先ほど背景にストーリーがあるアイテムといいましたが、洋服の醍醐味は、それぞれのアイテムに愛用者ならではの個性的なストーリーが加わりその方の雰囲気として表現できることです。

:最後に

ご挨拶が遅れてしまいましたが、この度3月をもちまして私佐藤洋平はSLOW&STEADYを退職させて頂きます。お客様の皆様、メーカーの方々、突然のお知らせになってしまい申し訳ございません。

皆様、在職中は、大変お世話になりありがとうございました。 2年半という短い間ではありましたが、たくさんの方々と大切な時間を過ごさせていただきました。心より感謝申し上げます。

SLOW&STEADYにお客さんとして初めて入店したとき、当時の常連さんの佇まいを見た時、そして当店の洋服を見て着た時、ただシンプルにかっこいいと思うことができました。自分もああいう風になりたいという強い探究心がお客さんから当店で働く側へと導いてくれました。

僕が働く中で一貫して目指したのはオーラがあることです。こんな抽象的なことを目標にして、あれこれ考え続けて何の意味があるのだろうかと思う方もいらっしゃると思います。でも、洋服屋はお客様に洋服を販売するお仕事です。

そして、ファッションとしての側面もかなり大きい現代の洋服は、サイズ感、色、デザイン、などほぼ全ての要素が人それぞれ好みで選ばれます。じゃあどうやって、自分の販売員としての価値を上げればいいのかと考えた結果、僕自身の実体験の中に答えがあると思いました。当店に通い出し、働きたいとまで思うようになったきっかけ、ただシンプルにかっこいいと思えたこと。それに勝る信頼感はありませんでした。

5年前、当店で初めて購入したアウターはビンテージのブラックモールスキンジャケットでした。当時の僕にとって初めての価格帯でしたが、どうしても自分のものにしたい一心で購入した記憶があります。そこから先日数年ぶりに入荷したビンテージアイテム、そして今回書いているブログがビンテージのモールスキンの紹介であることにはただならぬ縁を感じております。笑

服を買って失敗した経験から得た知見とか、そういうのを積み重ねてやっとできた納得のいく買い物。

ラジオでも話させていただいたのですが、一人一人の美学ってもっとそういう奥深くの部分にあるはずだと思うんです。今日、着ている服はほんの一部にしか過ぎないけど、他者にとってはそれがあなただ。服には、自分が口を開かずとも他人を納得させるパワーがあることを確信しました。

目には見えないものこそ尊敬したいし、雑に扱いたくない。合理的な思考を好む僕がこう考えられるようになったのも洋服のおかげであり、当店で2年半働かせてもらった結果だと思っています。色々とご迷惑をおかけして、反省すべき点も多くあったと思いますが、今はただ皆様への感謝しかありません。

皆さま今後ともSLOW&STEDYを何卒、よろしくお願いします!!

2022年 3月7日
SLOW&STEADY 佐藤洋平


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