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#8 メグッチ

中学3年生の頃に同級生の影響で洋服の魅力に取り憑かれ、今に至る(41歳)までに体験した、洋服をはじめとした道具にまつわるアレコレを中心に "モノ" にまつわる物語を書き綴る日記『僕の洋服物語』のスピンオフマガジン。

これまで20年以上、洋服というフィルターを通して、多くの人から数えきれない学びをもらっている。私は "人" が大好きだ。

これは、私の人生において忘れられない "ヒト" との記憶...読んだあなたが、人生の素晴らしさを再確認し、自分の周りにいる人のことが今よりもっと好きになれる。

そんなきっかけになってくれたら嬉しい。


今日は、初代スタッフのことを書いてみようと思う。彼は2015年、店をオープンさせて3年目から3年間にわたり正社員として店で働いてくれたスタッフである。

本人にも常に伝えているが、彼ほど純粋な人間を私はほかに知らない。店の成長期だったこともあり、彼には相当キツく指導した。私も必死すぎて周りも見えていなかったのだろうと思う。

そんな中でも彼は自分のできることを一生懸命やってくれた。時には涙を流しながら。

今思えば、彼の頑張りに私は夢を見ていたのかもしれない。教えられることは全部教えようという想いが強すぎた。

当時掲げていた目標も相当ハードルが高かったというのもあり、彼は店に立つことが苦痛になってしまった。

そこから、彼の母親とも相談しアルバイトに変更して、少しゆっくりしてもらうことにした。本人は「大丈夫です」と言っていたが、明らかに無理をしているのは一目瞭然。

これ以上は彼の今後の人生を考えても良い方向に進まないと判断し、話し合いを重ね、3年を境に退職することになった。退職から7年が経った今でも彼はことあるごとに店を助けてくれている。

店の3年ルールに関してはメグッチの後任スタッフの記事で書いている。

洋服が好きだからと、洋服屋を続けられるわけではない。むしろ大切なのは洋服以外の部分なのかもしれない。

それは、自分を信じきることである。

お客さんが購入してくれたことにもちろん感謝はする。アフターケアも責任を持つ。でも、彼は「ありがとうございます」が「ごめんなさい」にいつしか変わってしまったのだ。

「買ってもらってごめんなさい」

それは、絶対に販売員が持ち合わせるべき感情ではない。洋服にもお客さんにも失礼である。自分のこと、販売する商品に自信がないとそうなってしまう。

当時の彼の雰囲気や、発する言葉からすれば、もっと自信を持って良かったのだが、謙虚すぎる性格が邪魔したのだろう。彼は人にモノを販売する時点で、何かしらの罪悪感を抱えてしまうほど心優しい人間なのだ。

彼が退職し別の仕事についたとき、

「店は確かに大変でした。でも、ここまで必死に何かに取り組めることは僕のこれからの人生でもないかもしれません。ただ単純に楽しかったというのは嘘になります。正直、毎日逃げ出したかったです。でも僕はそもそも岡崎さんが好きで店に入ったので、必死に教えてくれようとしているのがわかったうえで期待に応えられていないことが何より苦しかったです。」

…違う
何もかも私の指導力不足である。

そのことはいまだに言い続けているし、
彼がいなかったら店を10年続けられていたかどうかわからない。本当によく頑張ってくれた。


昨年の大掃除。右上のジャージ姿の彼がメグッチ

毎年年末になると、メグッチが、現スタッフ、歴代スタッフに声をかけて店の大掃除が行われる。

店の掃除が大切なことは私の店で働いているスタッフたちなのだから人一倍わかっている。皆、ここら辺はさすがとしか言いようがない手際の良さである。

私が彼らに伝えているのは、興味がある仕事を本気でやったことがあるかないかで、先の人生は大きく変わるということ。洋服屋というマニュアルのない仕事だからこそ、自分で考え自分で動き、発信することが求められる。結果ではなくどれだけ動いたかが大切なのだ。

現にメグッチは、その後就職した会社内のプレゼンで、四国一位の優秀賞をとり全国の支社社員の中で堂々とプロジェクト発表を行なった。今では若手のホープとして活躍している。

後任の吉浦は、東京の有名な植栽屋で働き、先日大きく雑誌の表紙を飾った。

そんなスタッフの間で密かに伝え続けられているのが「SLOW&STEADYスタッフの心構え」である。

私はつい数年前にその存在を知った…。

メグッチから始まったSLOW&STEADYスタッフの心構えは、後任の吉浦(写真左下)を経由して現スタッフ佐藤(写真右下)に受け継がれている。スタッフの心構えをスタッフが後輩へ伝えるシステムも珍しいだろう。

私が知っているのはこの3つ。

『仕事の失敗は怒られないが、なにも考えていないのは怒られる』
『プライベートでカッコ悪いことをすると仕事より怒られる』
『やる前からあきらめるような発言は激怒される』

これは、現スタッフ佐藤が酔っ払って暴露した笑。3つとも「怒られる」というフレーズがはいっているのが引っかかる…これは心構えではなく完全に岡崎取扱説明書である泣。

この10年で私も成長し、全くと言っていいほど怒らなくなった。そろそろ廃止してほしいと思っているがどうだろう…おそらく佐藤以降はまた違うものが作られるのだろう。


とにもかくにも、店を辞めたあと音沙汰もないよりこうやって何も言わず支えてくれる歴代スタッフ達がいてくれるのは、私からすると大きな財産である。

こちらもしばらく連絡がないと「元気しているのだろうか?何かあったんじゃないだろうか?」と心配になり電話をかけてしまうが、いつもめんどくさそうにあしらわれる。

そのうえ妙な説明書まで作られる始末…たまったものじゃないのだが、それも踏まえて愛すべき家族たちである。

家族の長男である彼に頼んで、来年あたり旅行にでもいきたいな…

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