[洋服物語] 並んだボトルが教えてくれること
中学3年生の頃に同級生の影響で洋服の魅力に取り憑かれ、今に至る(41歳)までに体験した『洋服』をはじめとした『モノ』にまつわるアレコレ。
自分の価値観を形成するうえでターニングポイントとなった『私と"モノ" との記憶』いわばモノにまつわる物語を書き綴る日記。
これは、
『おすすめアイテムの紹介』ではない。
『私物紹介』でもない。
読んだあなたが、少しでも洋服を好きになるきっかけ、自分の使う道具を愛らしく感じてもらえるようになれば嬉しい。
:Episode.100
「SLOW&STEADY Anniversary Wine」
先に謝っておきます。流石に100回目だし洋服のことを書こうと思って色々家で物色していたのですが、これだけは書いておかないといけないモノが頭をよぎってしまい100回目も洋服以外の記事になります。ごめんなさい。
過去の記事でかなり詳しく書いたのだが改めて。今回紹介するのは店のアニバーサリーボトルである。
このボトルだが、妹のような存在だった洋服屋の後輩であり、親友が店のオープンから毎年2月1日に届けてくれていた。3周年を迎えた半年後に彼女が難病により亡くなり、その後、現在に至るまで彼女の婚約者だった蕎麦屋の店主が引き継いで届けてくれている。
このワインを飲むこともコルクを抜くこともない。窓際に並べているため熱でコルクが浮き上がってきているものもあるが、これは中身が入っていることが重要なのだ。
開店から3年間、このボトルを彼女が届けてくれた際にいつも笑いながら彼女と話していたことがある。
"店がもしダメになったらこのワインを全部飲み干してやる"
彼女は笑いながら「そん時は一緒に飲んであげる」と言っていた。そんな冗談混じりの会話を毎年繰り返していたのだが、彼女がいなくなってからこのワインの存在が私にとっては店を見守ってくれる何より大事なお守りになった。
このタイミングでふいにこのボトルが頭をよぎったのは何かしら彼女からのメッセージなのかもしれない。
確かに、ほとんど全てのエピソードはこのボトルから半径1m以内で生まれている。
きっと書きながら涙したりしているのを天国で腹を抱えて笑っているはずである。人一倍泣き虫なくせに私が涙を流すと決まって大笑いするのである。おそらく私につられて自分が泣きそうになるのを隠したかったのだろう。
そう。このボトルには彼女が生きた証が満タンに詰まっている。そして今では彼女の意思を継いで届けてくれている親友の並々ならぬ想いもプラスされている。
だから空にすることなどない。これからも未開封のまま並べられる限り並べてやろうと決めている。
財産としての価値(リセールバリュー)が高いだけで手に入れた物は何かのきっかけで好条件で売れる状態があれば手放すだろう。それを否定しているわけではないが、「どんなことがあっても手放せない」と感じているモノというのは、そこに必ず人の想いが絡まっている気がする。
スーツの形、ネクタイに使われるストライプの向き、襟の形、ボタンの数、着物の柄、茶碗の色…
過去から現代の歴史を紐解いてみても人間は衣類や道具に特定の機能や意味を持たせることで発展してきた。さらには自己を表現したり生きるうえでの力にしてきた。
どんな人でも、生きていれば必ず自分の内側にストックされている洋服や道具との物語が存在する。そんな持ち主と洋服や道具が紡ぐ物語は誰のどんなエピソードでも世界で一つだけのオリジナル。
それを引っ張り出し、文章として整理整頓するのは想像以上に自分と向き合うきっかけにもなり自分を支えてくれる大きな力となる。
その一つ一つに大きな価値があり、私自身も他人のエピソードを聞くたびに深く考えさせられる。
「人の洋服物語を聞くのが何より大好きだから」という理由で、これまで100回に渡り書いてきたこのマガジン。今後は新しい試みも加えながら今まで以上に楽しんでいただけるようなコンテンツに育てていくつもりです。
今後ともよろしくお願い致します!
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