捨てられる洋服に再び光を。廃材から生まれる新しい価値
中学3年生の頃に同級生の影響で洋服の魅力に取り憑かれ、今に至る(41歳)までに体験した『洋服』をはじめとした『モノ』にまつわるアレコレ。
自分の価値観を形成するうえでターニングポイントとなった『私と"モノ" との記憶』いわばモノにまつわる物語を書き綴る日記。
これは、
『おすすめアイテムの紹介』ではない。
『私物紹介』でもない。
読んだあなたが、少しでも洋服を好きになるきっかけ、自分の使う道具を愛らしく感じてもらえるようになれば嬉しい。
:Episode.59
『Painted Blank -Assortment- "Venice"』
今回は、私がオリジナルブランドと並行して進めているセカンドライン、
Painted Blank -Assortment- (ペインティッドブランク、アソートメント)の新商品が完成したのでご紹介する。まずは、このセカンドラインについての説明を。
Painted Blank -Assortment-
〜 企画スタート 〜
「何か面白いことないですか?」
1年ほど前、昔から洋服を作り続けている知り合いがそんな話をしてきた。
面白くもないが、私は彼に自身がずっと抱える洋服の疑問を打ち明けた。
何をもって"良いもの"とするのか?
自分はオリジナルブランドを運営していくうえで徹底的に物語のあるものを提供したい。リリースから製品まで、製品の詳細など全てがクリアになり、さらに誰でも着用できる色のついていない製品を目指している。
良い生地、良い縫製、シンプルなパターンそれはきっと良いモノのひとつではある。
じゃあ、捨てられる洋服は本当に不必要で良くないものなのだろうか?
クオリティーはさて置き、安いからと使い捨てを前提に買われる洋服を自分とは価値観が違うから関係ないとするのでは、私が永遠に考え続けている「良いもの」にたどり着けない気がする。
さらに、安価でつくられ、使い捨てられる洋服がこのまま増え続けたら、需要に合わせて洋服の数を規制する時代が必ず来る。
そうなったとき、初めて皆がちゃんと衣類に向き合うのかもしれない。
個人的にはそうなってからでも選んで貰える洋服だと自信はあるが、そうなればファッションは自由じゃなくなる。
恐らく想像以上に洋服屋を取り巻く環境は厳しくなるだろう。
左右を確認して前に進むように、永く着れる洋服を目指して自ら作っているのなら、短い寿命の洋服にも目を向けた方が良いのではないか?
そんな話をした。
そこで偶発的に生まれたのがこのセカンドラインである。
実際、今年の1月にフランスでは「衣服廃棄禁止令」が施行された。
やはり想像している未来はもうすぐそこまできていることを再確認した。
〜 捨てられる洋服たちに再び光を 〜
私もセカンドラインのデザイナーも、昔から洋服には並々ならぬこだわりがある。そんな2人が着用できるもの、使えるものを作ろう。
制作にあたってのルールは5つ。
このルールをもとに、すでに数型の洋服を制作、販売した。どれもかなり気に入っているし、購入くださった人たちの満足度も高い。
ただ、これは私の好みの洋服を作ったに過ぎずルール3には反する。そこに気づき、洋服を作るのは一旦ストップし、原点回帰して日常で使えるものを作り始めたのが、つい3ヶ月前である。
洋服好きアルアルだが、何かを作るとなると洋服に意識がいってしまう汗。それでは結局、着なくなって手放してしまう人が現れたら形を変えて不要な洋服を作っていることになる。それでは意味がない。
「みんなが手放さないものを作ろう」
そう決めて作ったのが、今回紹介する、
"Venice" (ベニス)という巾着バッグである。
どれも捨てられる寸前の洋服を細いリボン状にカットし、裏地となる生地に丁寧に縫い付けた。元々は私が持っているビンテージのアイテムで、私も軽く食事に出かける際などに使っている、アメリカの兵士が戦時中に各自の荷物として持ち歩いていたメディスンバッグ(救急バッグ)がベースとなっている。
見た目としての高級感や作品としてのクオリティーを担保するのは最低限のルール。そこを突き詰めた結果、時間がかかる工程になってしまったが洋服バカ2人とも大満足できる商品に仕上がった。
〜 捨てられる洋服たちに光を 2 〜
男女、年齢を問わず軽い外出時でもバッグインバッグとしても非常に使い勝手の良いサイズ。
周りの反応も良い。
大きさや形、仕様など、全て細かい部分まで打ち合わせを重ね、この他にもクッション、テッシュカバー、トートバッグなどが年内には完成する。
私が知る中でも屈指の腕を持つ職人。
この巾着同様、素晴らしい仕上がりになるはずである。
〜 捨てられる洋服たちに光を 3 〜
メインラインには、各アイテムに物語に沿った個人の名前をそれぞれつけているが、このセカンドラインには都市の名前がついている。
どんな洋服にだって、生まれてきた意味がある。それぞれが持つ物語を解体し再構築するこのプロジェクトだからこそ、個人の名前は相応しくないと考え、アイテムを連想する地名や、景色をイメージした。
そうやって物語を先に作り、そこにアイテムを当て込む作業は私の作るもの全てに共通している。製品に直接的に関係あることではないが、私にとってこの作業はプロダクトに命を吹き込む行為。
生きた道具だからこそ手放さない。なぜか手放せないものに成長すると信じているからこそ、物語を構築する作業こそ最重要だと考えている。
〜 捨てられる洋服たちに光を 4〜
準備が整い次第、県内外の私が好きなお店、雑貨屋さんや家具屋さんに営業をかけてみようと思っている。
このセカンドラインは、今までの私の人生で経験のない新しい道を開くことになりそうだ。
理由は簡単。一着でも多くの洋服を救いたいからである。
接客業は20年やってきた。もちろん店頭販売もするが、このアイテムに関しては店舗オーナー。つまり、その道のプロたちがお客さんとなる。
今から楽しみで仕方ない。
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