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[続.洋服物語] 15cmの奇跡が紡いだ物語。マイナーレーベールだからこそできること。

中学3年生の頃に同級生の影響で洋服の魅力に取り憑かれ、今に至る(41歳)までに体験した『洋服』をはじめとした『モノ』にまつわるアレコレ。

自分の価値観を形成するうえでターニングポイントとなった『私と"モノ" との記憶』いわばモノにまつわる物語を書き綴る日記。

これは、
『おすすめアイテムの紹介』ではない。
『私物紹介』でもない。

読んだあなたが、少しでも洋服を好きになるきっかけ、自分の使う道具を愛らしく感じてもらえるようになれば嬉しい。


:Episode.24
「Painted Blank "Patrick"」

このマガジンで2度に渡りご紹介しているオリジナルブランドの新作パンツ "Patrick(パトリック)" がようやく最終段階まで進んでいる。

元々は1940年代に作られたビンテージのハンティングパンツがデザインソースとなっており、奇跡的に私の好みの丈に裾上げをされた状態で偶然手に入れたことから構想が始まった。

結果、私が思い描いていた(オリジナルに忠実な)チェック柄は、そもそもウール素材であり、通年履けるパンツとしてリリースすることは難しかったので、チェック柄に関しては秋口までに糸の段階から完全オリジナルで生地を製作することに決定した。

他の生地でチェック柄を作ることはできるが、本来の質感や雰囲気と大きく異なってしまう。私が奇跡的に手に入れ、裾上げされたビンテージのズボン(オリジナル)を越えるモノを作りたいとスタートさせているのに、それっぽくコピーしただけのアイテムなど作る意味がないと判断した。

元々、黒とチェック柄の2色を作りたかったというのもあり、ひとまず黒を先行して別の素材で作ることにした。目指したのはスラックスとデニムの中間的なアイテム。毎日履けるタフさと自宅で洗える手軽さは兼ね備えつつ、品よくコーディネートを引き締めてくれるボトムである。


:素材について

今回リリースするパンツに使用したのはジンバブエコットンと呼ばれる綿素材。名前の通りアフリカ、ジンバブエの(標高1,500m以上)の畑にて無農薬で栽培された正真正銘のオーガニックコットンである。

丁寧に手摘みで収穫されるため生産量もかなり少ないのだが、機械を使わないことで繊維も傷まず上質な糸となる。 ヨーロッパでは高級なドレスシャツにも使われているのだが、しなやかで光沢感があり通気性も抜群であることから世界最高品質のコットンと言われているひとつであり、もちろんオーガニックコットンなので、生産時に枯れ葉剤を使っていないため、生産者にとっても優しい素材である。

その原綿を100%使ったのが今回のパンツ。13オンスちょっと、厳密にいえば13.4オンスというやや厚手に織り上げられた綾織(あやおり)素材。簡単に言えば真っ黒のデニムパンツを想像して貰えばわかりやすいだろう。

履けば履くほど身体に馴染み、徐々に色落ちしていく。
きっと3年ほど履き込んだあたりが最高に素材の良さを感じてもらえると考えている。さらに5年、10年と履き続けて穴が空いたらリペア(直し)しても安っぽくならず一種のアジとして成立するだろう。


:シルエットについて

シルエットは手持ちのビンテージパンツを基本ベースにビンテージのデティール(サスペンダー用のボタン)は残しつつ、ウエスト周りはタックを使ってややスッキリとバランスを整え、裾幅に関しても程よくテーパーをかけた。簡単な表現をするなら9分丈のデニムスラックスである。

ウールスラックスがもらたらす品の良さをデニム素材の強さや汎用性と掛け合わせたイメージ。最初は綺麗な黒のパンツなのだが、着用を繰り返すうちに少しずつ土臭さを纏ったビンテージライクなパンツに変貌を遂げるのだが、いつまで経ってもカジュアルになりすぎない質感やシルエットを目指した。

明日、手元に最終サンプルが届くのだがサンプルをしばらく着用し、さらにそこから細かい微調整を加えて完成となる。


:ボタンについて

使用するボタンも非常に大切。ウッドか水牛かメタルにしようと思っている。着用とともにエイジングする素材との相性を吟味しながら決めようと思っている。


: 縫製について

縫製に関しては私の意見を伝えたうえで最適な縫製方法を縫製工場の職人さん達に考えてもらっている。完成した既製品を販売しているだけの私が最適な縫製など職人さんより知っているはずがない。

面白いのは、インターネットなどで書かれている最適な縫製と現場の職人たちから伝えられる縫製方法が明らかに違うことが多々あるということ。
とくに縫製に関わり何十年というモチベーションの高い熟練の職人さんほどそういった意見を言ってくれたりもする。

さらに、私が今回、頼んでいる縫製工場には数年前から私の店の常連さんが働いている。私の性格や店の特性を十分すぎるほど知っている仲間が縫製のテームに在籍しているのだから工場側が妥協することもない。


「自ら一定期間着用する」というのは私のブランドのように小さなレーベルだからこそできることかもしれない。

「買った時は良かったが、使っていくうちにあまり着なくなった」

そんな洋服を私は今まで何百、下手したら何千と体験してきた。
なぜそうなるのか?理由は大まかにいえばたった数種類の言語化しずらい小さなストレスである。

「なんとなく、トレンド(気分)と合わなくなった」
「なんとなく、着心地(サイズ感も含めて)がしっくりこない」
「なんとなく、カタチが変わった気がする」
「汚くなった(変色)した感じがなんとなく不潔な気がする」

こんなところだろう。
この「なんとなく」「〇〇な気がする」

これを徹底的に排除したアイテムこそ長く使える洋服の条件だと私は考えている。

生地にしろ、パターンにしろ、縫製にしろ、目に見えない細かな妥協は決して手にする人にはバレないし、その分コストも抑えられる。

ただそれこそが、買った時は良かったのに…ということに繋がりかねない。

そもそも私自身、人一倍の洋服バカなのは自覚している。だからこそ、私を納得させ続ける洋服を自ら作ることがどれだけ難しいのかぐらい理解しているつもりだ。

オリジナルブランドを購入する人のなかで、一番めんどくさいお客は "私" なのだ。

だからこそ、私自身が着用を繰り返し、洗濯を重ねて気になるところが少しでもあるようなら最終的に全て修正してから量産→リリースとなる。
自分が心底満足できるなら世の中の洋服好きも納得してくれるはずだと信じている。

そうやって作ってきた過去の作品全て何年経っても、

「作って良かった」

そう本心で思える相棒たちである。

このパンツの具体的なリリース日やさらに細かい詳細などは改めて紹介する。毎度、鈍足で申し訳ないがもう少しだけ待っていただけたらと思う。


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