[続.洋服物語] 「チノパンの王様」と呼ばれる名作を知っていますか?
中学3年生の頃に同級生の影響で洋服の魅力に取り憑かれ、今に至る(41歳)までに体験した『洋服』をはじめとした『モノ』にまつわるアレコレ。
自分の価値観を形成するうえでターニングポイントとなった『私と"モノ" との記憶』いわばモノにまつわる物語を書き綴る日記。
これは、
『おすすめアイテムの紹介』ではない。
『私物紹介』でもない。
読んだあなたが、少しでも洋服を好きになるきっかけ、自分の使う道具を愛らしく感じてもらえるようになれば嬉しい。
:Episode.17
「1950s~60s M-52 French Chino Trouser (後期モデル)」
皆さんは「チノパンの王様」と呼ばれるズボンがあることをご存知ですか?
フランス軍のユニフォームとして1950年~1960年に生産されていた「M-52 French Chino Trouser」通称 "フレンチチノ"と呼ばれるモデルである。
チノパンの由来については過去の記事で書いているので抜粋する。
1950年代のパリは新旧、多くのメゾンブランドが存在し、しのぎを削った黄金時代と呼ばれている。
クリスチャン・ディオールは「ニュールック」と呼ばれるスタイルを打ち出した。ココ・シャネルは、彼女の代名詞である「リトルブラックドレス」を発表。1950年代後半には、イヴ・サンローランがディオールの後を継ぎ、1958年に「トラペーズドレス」と呼ばれるウエストの開放、簡潔なシルエットが特徴的で革新的なドレスを発表する。
このチノパン同様、フランス軍が採用したM-47と呼ばれるカーゴパンツが「カーゴパンツの王様」と呼ばれるように、M-52が「チノパンの王様」と呼ばれるにはもちろん理由がある。
ファッションが急速に現代へ向かう黄金時代に生まれたこのM-52は、フォーマルウェアと同様にタックが入っていたりワイドシルエットながら裾にかけてややテーパーが効いていたり、現代において遜色なく通用するシルエットを持ち合わせている。単に軍パンとしてではなく洋服としてのクオリティーが圧倒的に素晴らしい。
ファッション黄金時代のフランスにおけるビスポーク(注文服)のような作りの良さと抜群のシルエットが合わさったチノパンがこのM-52なのだ。
年々、枯渇が進み今では手に入れることも一苦労である。
: 前期と後期
M-52の10年の歴史の中でも細かな仕様の変化があり、1950年代前半に作られていた“前期”と呼ばれるモデルと、バックポケットにフラップがついた“後期”と呼ばれるモデルに分けられる。私が所有しているのは "後期モデル" と呼ばれるもの。
:タックや生地について
タックは2タックのものが多いのだが中には1タックのものも存在している。素材は作られる年代や工場背景によって質感や色合いが微妙に違っているものの、前期、後期で共通しておりやや厚手のコットンツイル素材が採用されている。
: サイズ表記について
サイズ表記は、前の数字がレングス(長さ)後ろの数字がウエストを表している。ここら辺の表記もなんともスタイリッシュである。
時代が変わっても普遍的な人気を誇り、世界中のブランドがこぞってサンプリングするような往年の名作と呼ばれるアイテムを眺めていると、洋服において "オリジナル" という定義があやふやになってくる。
革新的なデザインに思える洋服も調べていけば元ネタが存在していたりする。大半のデザイナーは古き良きアイテムをベースに再構築を繰り返し、モノを生み出している。そのなかで生み出される洋服はオリジナルと呼べるのだろうか?
そもそも "オリジナル" って何なのか?そんなことを考えながら先ほど閉店した店内を見渡し物思いにふける。答えがないから面白いのだが、たまには楽に答えを教えて欲しい時だってある。
つくづく思う。
洋服屋というのは好きじゃないとやれないな笑。
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