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海辺の「野心」 … issue03刊行にあたって

おもいきり、自分らしい文学がしたい。
そのためには、僕の情緒をつくりあげた、海を舞台に雑誌をやりたい。

そんな思いがあって、この本をやっているのかな、と最近は考えています。
自分のこととはいえ、自分の考えていることの本質に迫るって、時間かかるしむずかしいですよね。

車に乗ってる時って、他のことできないからだいたい一緒に乗ってる人と喋ってますよね。海が見えてきたりしたら、「うわー海だね!」「ね!やばいね!」とか適当なこと言ったりしながら。
でもその適当な会話が、その海のきらめきといっしょに記憶されて、あとから思い返すととってもきらきらした瞬間になる。
車が道を進むのは、作家がペンを走らせるのと同じで、運転手がそこに物語を刻み込む行為だと、僕は思っています。

「海辺のドライブ」っていうテーマは、そんなふうに、海に向かう人たちの車を通じて、いろんな人たちの物語が見えるかもな、いろんな海が見られるかもな、しかも夏っぽいしいい感じだな、と思って組んだ特集です。
山下達郎を聴いてるときに思いつきました。

強力な寄稿者の皆さんによる心のこもった文章のおかげで、落ち着いた風合いも出て、ちゃんと「文芸誌」になってると思います。
いろんなひとが気に入ってくれたらいいなあと思います。

今回は直接お会いしたことのない方にも寄稿をご依頼しました。
SNSで素敵な短歌を詠んでいるひとを探して。
新聞歌壇で脳内「!」にさせる短歌を書いてた人に声をかけて。
機械書房で買った本の著者にアタックして。

僕自身にも根気のいる作業でしたし、突然名も知れていないZINEからやってきた依頼に戸惑わせてしまった方もいたと思います。(でもみなさん書いてくれました!)

こんなふうに色々な人に声をかけたのは、自分自身がこの雑誌を通じて、あたらしいことをしたい、違う世界を見たい、そんな気持ち、野心。そういうものが自分の中にあるということです。 

そう、野心。
僕は自分の本に、めちゃくちゃ多くの人に読んでほしいのです。平たくいえば、めちゃくちゃ売れてほしい。

あまりハードルを上げるような発言をすると、そのぶん読者に落胆させてしまう可能性があるのだとはおもうけれど、僕のいまの正直な気持ちは「こんなにいい本を作って、150部しか刷れないなんて、なんてもったいないことをしているんだ」です。

150部しかありません。
ぜひ、手に取ってください。
いっしょに海辺を走る車に乗り込んで、うつろう景色を見に行きましょう。
ページをめくれば、潮とガソリンのにおいに満ちた「海辺のドライブ」が幕を開けます。


今枝孝之

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なみうちぎわパブリッシング
SLOW WAVES issue03
「海辺のドライブ」
¥1,000-
新書版160p
文学フリマ東京(5/19)より販売開始
ブース:E-48


文フリ以降は各地の書店にて!
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