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神田川と昌平橋

スローリー余話
川と橋と美味しいもの#6

三鷹市の井の頭池を水源として善福寺川と妙正寺川を合流しながら新宿区や豊島区、文京区などを流れ飯田橋で日本橋川を分派したのち隅田川に合流する「神田川」。
江戸に暮らす人々のライフラインとして整備された神田川は多くの河川が暗渠化された東京23区内においても未だ開渠となっており江戸から続く水路として大切にしたい存在です。架かる橋の数も多く「浅草橋」や「江戸川橋」「面影橋」など駅名になっている有名な橋もありますが、筆者の個人的なおすすめは水道橋~和泉橋。JR水道橋から秋葉原の総武線沿いにある橋です。なかでも「昌平橋」は、その橋上からはJR中央線と総武線が交わり東京メトロ丸ノ内線の電車が交差する様子が見られる鉄道好きには堪らない場所なのです。

昌平橋から総武線の橋梁をのぞむ。奥に見えるのが聖橋
万世橋から昌平橋をのぞむ

そんな橋の近く神田淡路町には「せいろう、いちまーい」の「通し声」で有名な『かんだやぶそば』があります。
(以下、2023年7月発売『東京Slowly² vol.1』より)

“お客さまとともに”
実践し続ける老舗の矜持

神田淡路町
かんだやぶそば

1880(明治13)年創業。「そばの名店」としてだけでなく「まちの名店」として数多くのメディアに登場している『かんだやぶそば』。注文を調理場に伝える「せいろう、いちまーい」という『通し声』が響く、相変わらずの心地良い空間。初夏のある日いただいたのは、五代目・堀田康太郎さんが考案した『じゅんさいそば』。うっすらと鶯色をまとった伝統の蕎麦を、旬の「じゅんさい」や「おくら」「茗荷」などとともに愉しめる、この季節ならではの逸品。建て替え後も、かつての風情が残ったお庭を愛でながらいただけば『かんだやぶそば』ならではの美味しさを一層実感できる一杯だ。

五代目ご主人考案の『じゅんさいそば』

コロナ禍においては、場所柄、医療従事者の常連客も多く「食べに行きたいけど・・・」という声が多く寄せられたという。そして「毎日大変な思いをされている方が『やぶそば』を食べたいと仰るなら」と始めたというデリバリーのサービス。「お客さまとともにありたい」というご主人の心意気が感じられるエピソードである。四年ぶりに開催される「神田祭り」の直前にお伺いすると「五類になった5月7日でデリバリーは休止しました。多少お並びいただくことになるかもしれませんが、やはりお店で食べていただきたいのです」と笑顔で語るご主人。今年の夏は『かんだやぶそば』ならではの、あの“美味しさ”と“通し声”が私たちを待っている。

五代目ご主人の堀田康太郎さん

かんだやぶそば
〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町2-10
03-3251-0287
営業時間:月~金11:30〜20:00(L.O.)
定休日:水曜