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日本橋蛎殻町 その弐

スローリー余話
街の”なりたち”#10

江戸初期の古地図に「かきがら」と表記されていたこのあたりは大名の屋敷や蔵が立ち並んでいましたが明治維新の廃藩置県によって大きく変化します。この地にあった久留米藩主有馬家のお屋敷に安産の神様として知られる「水天宮」が移築され周辺は多くの参拝客で賑わう門前町に。さらに豪商・三井氏によって1872(明治5)年に鎧橋が架橋され日本橋方面からの交通が至便となったことから米穀の商品取引所や油問屋市場などが開設されたのです。

明治時代の錦絵に描かれた米穀商品取引所(写真提供:中央区立京橋図書館)

以降、東京穀物商品取引所が移転する2012(平成23)年まで小豆などの先物商品を扱う金融の街として繁栄しました。古代には貝殻を用いた通貨もあったといいますがまさに「蛎殻町」は金融で栄えた”街”だったのです。

昭和37年頃の東京穀物商品取引所(写真提供:中央区立京橋図書館)

現在、東京穀物商品取引所の跡地にはマンションが建てられかつての金融街の賑わいはなくなってしまいましたが今も変わらずに当時から愛されてきた”まちの御馳走”は健在です。
(以下、2024年3月末号『東京Slowly² vol.3』より)

みんなのご褒美。珠玉の天丼

天麩羅 天音

のれんをくぐると、胡麻油の芳しい香りが漂い空腹の食欲を搔き立てる。参拝客が絶えない小網神社からもほど近い『天婦羅 天音』。1930(昭和5)年創業。日本橋蛎殻町で90年以上続く“まちの天麩羅や”さんである。初代が「冷めても美味しく食べられるように」と工夫を重ねた『天丼』は店の名物。海老をはじめ季節の魚介類と野菜は三代目のご主人・北角満さんが豊洲で直接仕入れる目利きの品。食材と会話するように手際よく太白胡麻油に投入されると小気味よい音と芳しい香りが気持ちをさらに高揚させる。丼の中でそれぞれに主張する美味しさを堪能できる『特上天丼』は“みんなのご褒美”だ。

豊洲で仕入れる旬の食材

天麩羅 天音
〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町1-13-2
03-3666-0639
営業時間:月-金11:20-13:30 17:30-20:00 土11:20-13:30
定休日:日・祝