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古道具と自転車

先日、軽く整備しつつ土間の壁に飾った快足ビーチクルーザー。久々の街乗りは隣り地域の堀内へダウンヒル。葉山一色の家から海岸通りを疾走する1.7kmの移動。そのわずかな距離で走行不能になるトラブルが起きないか緊張した。自分としてはそれなりの冒険行なのだ。

あんまり考え過ぎると迷いが生じるから、東京から戻って腰を下ろさずすぐさま、えいっと向かった。途中、不穏なペダルや後輪が外れそうな音が聞こえたが、無事に到着。ふぅ〜と深く安堵。またひとつ夢の計画が叶った、すごい達成感でしばらく茫然(笑)。

スタンドの無いマイビーチク。壁に立て掛けようとしたらバランスが悪くバタンと横倒しになりそう(店前は駐輪スペースでなく、近くにあるのだが、5年ぶりくらいの再乗記念に味わいある建物がらみでスナップしたかった)。観光客と車が行き交う狭い道沿いだし、倒すわけにはいかないと焦っていたら、外壁の金具にかかるゴムバンドが眼に入った。ハンドルを留めるのに絶好、これは自転車駐輪用具かと早合点して活用。しかし、現店主によれば、その金具は用途不明なまま継いだ物だし、ゴムバンドは店前に最近誰かが落としものらしい。そんな偶然に救われたことをぼくは必然の導き、自然な流れと思いこむ。マイビーチクでこの場に居るのが自分の運命だったのだろう。

この空間は「のたり葉山」。生ハムとワインを供する魅惑の商いをされているようだが、現在は基本、休業中みたい。イベントにスペース貸ししたり、金継ぎのワークショップを不定期開催しているよう。この週末は「古道具と菓子」という興味津々な催しで開放されていた。ヴィンテージ自転車で乗りつけ、古道具を眺める。そんな楽しいシーンを夢想して訪ねたのだった。

最近、気になっていた古道具ユニット「森吉野
。李朝のスッカラやポジャギ、古瀬戸の燈明皿など実用性あるものたち。無地で美しい佇まいにひと目で魅せられ、選択とセンスに心奪われた。

許可を得て道具にデジタルライカを向けていたら、「私も同じのを使っているんですよ」とライカMと、さらには物に寄れる眼鏡付きオールド標準レンズを取り出してきた森吉野さん。Mには玄人好みなズマリット35mmが装着されていて、コレクターではない真っ当な撮るライカ派最良のチョイス。ライカロゴのブラインドともども選択眼と美意識に唸った。

ちょうど目隠しの布を探していたし、と森さん、吉野さんとの出会いを悦び、韓国の麻布と燈明皿を購入した。2人は今週末、追浜のワインスタンド「Lu Lu」にて『ワインと古道具』に出店。Lu Luはつい先日、恵比寿の「playtime cafe」で紹介されたばかり。またまたの偶然を縁と感じて、訪ねてみよう。

会場には布施月子さんの抽象画作品も展示。岩絵具の青が自分のブルーグレーな自転車の色合いに似ているなぁと作者本人とお喋り。森&吉野さんも布施さんも初めてお会いしたけれど、ぼくの親しい人たちとつながっていて縁に呼ばれて顔を合わせたような不思議な感覚。その佳き縁をたどって楽しき人の輪に加わっていきたいな。

最後に「のたり葉山」の店主に愛車を見せてもらう。英国バーミンガムに1940〜1970年ごろに存在していたハーキュリーズのヴィンテージ。スタメーアーチャー3速の内装式シフトワイヤーの動きが可愛いでしょと店主。マニアックな談義でいっきに距離を縮められたかな。互いに移動中のトラブルに備えて工具の携行はマスト。ヴィンテージ自転車の自虐ネタで笑い合う。

1時間ほどの濃密な出会いと偶然の連鎖。しばらく余韻に浸りまくれそうです(笑)。

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