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西陽の美と苦
クーラーが無いぼくの家。高性能の断熱材、庭と屋上の緑化、自然光の取り込み。この3つの工夫で真夏も扇風機だけでやり過ごしている。
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家の西側には網戸付きの大きな引き戸を設け、ほぼ一日じゅう全開して目前の海と裏山から吹く風が室内を吹き抜けていく。夏もクーラーどころか扇風機すら要らないほど涼やかに過ごせた東京佃島の古い木造家屋の実家での心地いい記憶、体験へのオマージュとして建てた家。さまざまな工夫は功を奏し、自然に寄り添う暮らしを楽しめている。
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西陽が差しこみ始める夕方は劇的な光景に惚れ惚れしてしまう。自分の好きな物が斜光の強いスポット光で照らされ、浮かび上がる。そのさまに陶然となり、どんな美術館でアート作品を鑑賞するよりも深く心酔する。と、書きつつも例外の時季がある。それは酷暑極まる8月。
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この一カ月だけ、午後2時から3時台の1時間ほどは居間が灼熱空間と化す。扇風機の人工風も熱風となり、凄まじい斜光がさらっとした風合いの麻布を透過して容赦なく攻めたててくる。正直、光や自然風を愛でるなんてゆとりは皆無となり、玉の汗が吹き出てくる。先日のお盆休み中はついに辛抱できず、西方の大きな引き戸窓にミスマッチなアフリカの布を当てがう応急処置して気休め程度、光の熱を緩和できた。
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クーラー導入を毎夏、真剣に検討して15年以上が経過。まぁ、一カ月間の2時間少々堪えれば自然の風と光を満喫可能なんだから、我慢するかと、ずるずるダラダラと生活してきた。これからも、たぶん。と、強がりを書きながら、来夏はあっさりクーラー買っちゃったりして(笑)。それもまた、無理せず、いい加減をいちばんとする、自分の生き方らしいかな。
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