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クッキーを計り買い

鎌倉の住宅街、梶原に素敵なケイクショップがある。「POMPON CAKES」。カリフォルニアやマンハッタンのイーストサイドにありそうな佇まい。エクステリア、インテリア、ロゴを初めとするグラフィック、什器すべてに軽妙で洗練した美意識が通貫し、ビーチタウン特有の、肩の力が抜けた上品なセンスが滲み出ている。ぼくが今もなお湘南のマガジンを制作していたら、何度も取材を依頼するであろう敬愛の一軒だ。

例えば外に置かれたこのベンチ。地域の住民がコーヒー片手にお喋りしたり、愛犬とくつろぐ、なんともローカルなシーンを醸す感じが佳い。それに増して自分には陽光と雨風に晒され飴色に育った風情とシンプルで格好いいフォルムに魅せられる。

フレームの構成、肘掛けのアールに見入っていると、自宅にあるベンチもこのように気楽に活かしてみたいと夢想してしまう。細部に宿る心地よいテイスト。それが店主のセンスなのだろう。

先日はベイキング用品をセレクトし、クッキーを計り売りする近くの「POMPON PANTRY」を初訪問。

気取らず、それでいて店主の嗜好が満ちている物ものが視界を占め、ほわんと夢心地になってしまう。それらを深い陰翳とともに照らし出す夕暮れ前の斜光が昂揚に拍車をかける。ぼくの大好きなアメリカンクラシックな世界観。

ぼうっと見惚れていたら店員さんが優しく声がけして、クッキーの買いかたを教えてくれた。育ちの佳い人柄が滲むような接客。このところ他店の若いスタッフのクールな応対に淋しさを覚えていた自分の心に沁みる誠実な説明だった。店の2階でシルクスクリーン刷りしているエプロンが瀟洒と讃えたら最高の笑顔を浮かべる。その仕草にまた心温まる。

どれにするか迷って、ひととおり詰めてというお客さまも多いですよ、という助言にしたがって全種それぞれ2枚づつ持参のIKEAケースに入れてもらった。

容器は自分のお気に入りを差し出せば、1個クッキーをおまけしてくれるサービスが心憎い。オリジナルのクッキー缶も販売していて、そちらを渡せば割引サービスもあるよう。この日のテイクアウトは1,000円ちょっと。

かなりの贅沢になったけれど、オーガニックなクッキーはベイカーの愛情に感銘を受ける美味しさだったし、眼と心の保養にもなったからプライス以上に満ち足りた。こんな素晴らしい買い物体験をときどきはしたいな。

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