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おんらくライフ

東京・佃島から葉山に移住したのは1998年。引っ越してすぐご近所パトロールよろしく、近くの一色海岸を散歩していたときにたまたま海の家「Blue Moon」でパーカッショニストの鈴木キヨシさんが楽器づくりのワークショップを開いていて、リラックスしたムードにうわっめちゃくちゃ楽しそう!と飛び入り参加した。

キヨシさんは音楽を「おんらく」、楽器を「らっき」と位置づけ、「楽しさ」の視点から楽器づくりと音楽の伝達者として活動していた(当時は住まいのある葉山を拠点に。近年は移住先の京都にて)。ガラス瓶の蓋や針金、ひょうたん、竹など身近な材料をアップサイクルしたオーガニックでユニークな楽器はなんとも心安まる優しい音を奏で、うっとりと魅了された。

また、キヨシさんからはひょうたんで製作した親指ピアノ「カリンバ」やバラニの実2個をカスタネットみたいに打ち合う「アサラト」の演奏法を即席で教えてくれた。ビーチでアフリカの民族楽器を参加者みんなで奏でていたら、素朴なリズムと寄せる波音とが共鳴して未体験の高揚感に包まれた。シンプルだけど肩の力を抜いて純粋に音を楽しもうという気持ちでゆったり心身が連動しないと上手く音は鳴らない。その真理めいた向き合いかたにも心奪われた。

衝撃のグルーヴ体験をして、ナチュラルな音源と「らっき」な素材として、ひょうたんへの関心を強めたら、自然の流れで縁がつながり、茅ヶ崎で海辺の生活に馴染む雑貨を扱う「クロスロード」店主、高崎さんに出会えた。高崎さんはひょうたんスピーカーの魅力を伝える人物のひとりで、このスピーカーにベストマッチする音楽CDを販売しているし、ひょうたんで作るカリンバのワークショップを時々開催している。自分が惹かれる湘南エリアの人、空間を選び紹介する仕事をしていたぼくは取材という名目でカリンバのほか、モノラルのひょうたんスピーカーや照明を作らせてもらった。

90年代末から2000年代初頭に夢中となった、それらのひょうたんアイテムは今も居間でいちばんくつろぐ場に飾り、眺め、活用している。

太古の記憶を呼び覚ますような夢心地の「おんらく」ライフ。日々、楽しみ深くなごむたびに葉山で暮らす悦びを実感している。

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