見出し画像

昭和のラーメン

鶏のガラでスープを作った、昔ながらのシンプルな細麺ラーメンをときどき食べたくなる。知人のインスタ投稿を参考に、家から近い横須賀界隈にないか調べてみたら安浦町2丁目に、まさしく「THE昭和」なラーメンを供する「ラーメンささもと」があるとわかり初訪問。

木造家屋の1階土間部分を店にした渋い佇まいにグッと惹かれる。暖簾をくぐるとカウンター席とテーブル席がひとつ。

ミニマルな飴色空間にすうっと取りこまれ、懐かしのインテリアに親密さを感じる。常連が座るカウンター向こうの厨房できりもりするのは笹本さん、ただひとり。47年前、母親の昭子さんがラーメンの店を始める以前は牛乳屋を営んでいたそう。また、昭子さんは従兄弟を使って、ラーメンのほか、大判焼きやかき氷も作って販売していたのだとか。

昭子さんが店に立てなくなったときファンから辞めないで!と熱望され、笹本さんが脱サラして継いだ当初はラーメン2種類のみだったという。麺1.5玉の中盛りサイズなど客の要望に応えて現在のバリエーションに増えていった。

「うちのメニューはお客さんに作ってもらっているの。だから麺硬め、ネギ無し、汁少なめとか希望を言ってもらってる」
アルコールも置いてないから持ち込みOKにしているんだとか。

常連には店の前に宣伝文句を貼ってみたら?と勧められて書いた一枚を見せてくれた。字が汚いから実際には貼ってないんだけどねと恥ずかしがる笹本さんの実直な性格に心温まる。

チャーシュー、メンマ、なるとがきちんと入ったラーメン 。まろやかなスープは無化調で優しく沁みる美味しさ。久しぶりに全部飲み干してしまった。スープにはチャーシューの煮汁(沸騰させない)を和えているというが、麺のボリュームも含めてすべてがほど良い味わい。夏は若干多めにするというものの塩分は控えめ。流行りのインパクトあるモダン・ラーメンに比して、あっさりした印象を受けるかもしれないけれど、自分にはとても好み。その控えめ加減を身体が欲して定期的に通ってしまいそうだ。

最初は話しかけても素っ気なかった笹本さんだが、客がぼくらだけになると店の歴史から赤線時代、ヤクザ、小泉元首相ファミリーなど政治家との関わり、風土といった地域と客層の変遷まで饒舌に語りかけてきた。最寄りの京急県立大学駅(旧・公郷→安浦駅)の裏山には1913年(大正2年)に立てられた旧海軍横須賀鎮守府司令長官宿舎があるとか。それで「長官山」って呼ばれているんだよと笹本さん。安浦町を少し識ることができたのが嬉しく、毎春に一般開放される宿舎を訪ね、この地域への親しみを深めていきたいなと思い店を後にした。「また、来てください」と素朴な笑顔に送られながら。

「ささもと」は月曜日定休、10時から19時まで通し営業というのがすごくありがたい。昼前の早めか、昼下がりあたりにふらっと寄ってみようかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?