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夜明けの獅子舞

11月が終わりに近づくと、おのずとソワソワしてしまう。鎌倉二階堂から低山の尾根につながる道の途中「獅子舞」の情景に想いを馳せて。

今秋はこの低山の麓で働き、葉の染まり具合をつぶさに見つめていることもあって、鎌倉随一とも讃えられる紅葉スポットの景色が気になってしかたがない。

例年なら12月一週めが華極まるタイミング。ちょっと早いかなと思いつつ、仕事前の早朝に「獅子舞」を訪ねた。

着いたのは5時過ぎ。日の出が6時半だから当然ながらトレイルは暗闇。iPhoneのLEDライトで足元を照らしながらおそるおそる進むと尾根から降り動く点光が見えた。

一瞬ギョッとしたが、散歩者のヘッドライトだとわかり挨拶を交わす。「早いですね」と酔狂者は互いに苦笑い。あの滑りやすい地面を速足で歩く年配な先輩。さすが鎌倉、ローカルの粋人が存在すると感服した。

二階堂川のせせらぎを耳にシダに覆われるアプローチから10分も歩けばゴール。アクセスは容易いが20数年前までは知る人ぞ知る秘密めいたスポットだった。今はインターネットで簡単に詳細な情報を検索可能。それでも暗中を行く人はまずいないだろう。

カエデより先に散る銀杏の葉。黄色い絨毯を眺めていたら暖かな強い南風に吹かれてさらにパラパラと降り舞ってきた。まだまだ落葉がすすむ余地があるということは暖冬の証なのだろう。この先のカエデが真紅に染まるのは銀杏が散りきったあと、朝晩の気温がさらに冷えこまないといけない。

と思った通り。訪問は少し早すぎたようだ。カエデの葉はまだまだ緑が目立つ。染まるのは12月一週め、あるいはさらに二週めくらいまで待つのが佳いかもしれない。

焦った自身を省みつつも、獅子舞の「獅子岩」で夜が明けるのを待つ特別な静寂を愉しめたのだから、これもまた一興と捉えよう。

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