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眼に滋養
真夏の昼下がり、世田谷羽根木の「out of museum」へ、また眼を養いたくて足を運ぶ。店主、小林 眞さんが蒐集した物はどれも力がみなぎり、ドーンと心掴まれちゃう。こんなインパクトある感覚は鎌倉「もやい工藝」の創業者、故・久野恵一さんが旅しながら選び集めた美しく健やか、骨格ある工藝品を眼のあたりにしたとき以来だ。物にときめく気持ちはだいぶ薄まってきたと思うようになったが、いやいや、まだまだ。小林さんの物への情念に触れ、萎みかけていた欲が呼び覚まされた気がする。現況の経済状況ではもちろんかなりの限界があるが、物の佇まい、造形に驚き、猛烈に惹かれ、憧れる。魂が揺さぶられる幸福な出会いと一瞬を可能な限り愉しみ尽くしたい。
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縮緬絹の着物生地で仕立てたアロハシャツを纏い、sashikiのカンカン帽を被って電車に乗り、新宿経由で最寄りの代田橋駅へ。二度目の訪問だから最短ルートの裏道をスムーズに進む。亜熱帯の国みたいな凄まじい湿度と気温だけど、この陽の下で毎日、エンジン剥き出しな機械を振り回してて仕事しているから、ただ歩くだけなんてへっちゃら、楽々。強がりではなく、心底そう感じるから60歳前にしてずいぶんタフになったなぁと自分を称えたくなる。
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まずは取り置きをお願いしていたゼロールのアイスクリーム・スクープを改めて確認。迷ったけれど直観に従い、使いこまれた現行品でもある#12を選んだ。見つけては入手してきたというヴィンテージを小林さんが台座に据え付けてオブジェとした物だが、このかたちはまさにアートピース。ヨーロッパの彫刻作品みたいだ。「そう、フランス。まるでコルビュジエの手掛けた彫刻ですよね」と小林さん。1935年にSherman L. Kellyにより設計されたこのスクープはMOMAのコレクションにもなっている。
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あっ、目玉焼きオブジェが並んでる。小林さんのオリジナル作品。現代美術には関心が希薄なんだけどこれはレアな例外。白と黄色のマットな色味がなんとも佳いんだ。いつか手にして、あちこちに持ち出して景色をスナップする、ひそやかなプロジェクトにぼくも参加したい。
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これもオリジナル作品。多面形にどうしようもなく惹かれるのはどうしてなんだろう。と、自身の嗜好への根源を促されるオブジェ。
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ぶら下がる物にもどうにも弱い。こんなしっかりした鳥の巣を見たことがない。赤道付近ではよくあるそう。壊さずに持って帰るの大変だっだろうなとパッキングの苦労、小林さんの旅先でのシーンをも想像させる。
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この日、いちばんドキドキしたフクロウの置き物。こんな迫力あるもの、初めて眼にした。来月迎えに行こう。キープの快諾に未練が払拭。
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満ち足りて、また帰りは「ベルク」に寄り道。
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世界一好きなパブで昼呑み。この場に満ち溢れるファンの多幸感を肌で感じ、親しみつつグビグビ。毎度、黒ビールを選んでしまうのはなぜなんだろう。またまた嗜好の奥底を掘り下げてみなくては。ほろ酔いで湘南新宿ラインに揺られて葉山に戻る。
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