小さな灯り
森吉野さんのポップアップショップで真っ先に眼が感応したのは燈明皿の灯りだった。この仄かに揺らめく炎で江戸時代の人たちは夜過ごしていたと遊びの師匠、山田海人(稔)さんに教えてもらった。山田さんは燈明皿を用いて鎌倉でキャンドルナイトを催してもいた。
本来は菜種油に木綿をよった燈芯を浸して灯すものだが、森吉野さんはロウソクを立てる台として幕末から明治期に焼かれた古瀬戸の燈明皿を活用していた。その気軽で洒脱な古道具活用法に強く惹かれて、デッドストックの一皿を購入した。
庶民が実用で使う道具としてたくさん作られたものなのだろう。ざぶんと豪放に掛けられた緑釉の調子がなんとも眼に心地よい。こんな小さな皿なのに高台もきちんととられ、腕のよい陶工の姿が思い浮かんだ。
家にIKEAのティーライト『GLIMMA(グリマ)』がたくさん余っていたので、まずはこのキャンドルを載せ火をつけた。
土間の扉を半開きにして夜風をとりこむと、炎がゆらめき皿の縁に映る。その幻想的な光景に見惚れ、闇のなかの点光を楽しんだ江戸のロマンティックな毎日に想いをはせた。
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