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月桃の葉をよる

庭に繁茂する月桃の葉を乾燥させれば、紐の素材になると教わったのはずいぶん前のこと。そのとき、実際に葉をよ(撚・縒)って紐にする体験をしたのだが、手法をすっかり失念してしまった。久々にやってみたいな、とふと思ったタイミングで草をたば(束)ねるワークショップがあると知り、縁を感じて参加してきた。

会場は世田谷区三軒茶屋、キャロットタワー内の「生活工房ギャラリー」。会場で眼に飛びこんでくるのは、探検家・関野吉晴さんが墨田区に寄贈したという大きな葦船。江戸川の葦をたばねたもので、ワークショップでは、「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」(ECフィルム)のアーカイブより、葦船の製作ノウハウを伝える映像も鑑賞。

ECフィルム

この日、ナビゲーターを務めたエクスプランテの下中菜穂さんが電車に乗り、渋谷駅経由で担いできた(!)茅の輪も圧巻の存在感だったが、まずは「観て」→「やってみたくなる」→「考える」へと導かれる構成が見事。下中さんたちスタッフが多摩川河川敷で集めてきたイネ科系の草に囲まれ、束ねたい欲に駆られてワクワク。

とはいえ、ぼくの興味の中心は主題の「たばねる」ではなく、「よる」。茅の輪やお盆送りの草舟づくりに興じる皆さんの様子とやり方を傍観しながら、自身は家から持参した月桃の乾燥葉で紐づくりにひたすら熱中した。メインストリームから外れて草紐をよるコツを聞き出そうとするわがままを、下中さんとスタッフがおおらかに応えてくれたおかげで、ついに開眼か!とポイントを掴めた感触があり、歓喜。生涯忘れぬよう、ここに備忘録しておきたい。

1.葉を水に浸す

乾燥した月桃の葉を水に30分ほど浸して柔らかくする。葉の茎が適度な強度を持たせてくれるので、あえて残しておく。写真は3年ほど乾燥させた葉だが、浸すとほのかに緑色が浮き出てきて芳香があたりに漂いだす。また、撚りやすいよう柔らかくなりつつも、水分を含んでしなやかさがより増す印象。その強靭な生命力に驚き、心酔する。

2.葉を交差した箇所を踏み固定

2枚の葉を交差させ、足裏で踏むか、親指にはさんで動かぬようしっかり固定する。

3.葉を撚り、巻きつける

両手の手のひらを平行にしてスライドしながら2枚の葉を撚り、右側の葉をねじって巻きつけていく。この一連の動作が不器用な自分には上手くできなくて、左右の葉をそれぞれ撚りつつ、グルグル巻きつけていった。このとき、グッと渾身の力で2つの葉を撚り合わせていくべし。スタッフから「ワタシも1本ずつ、そうやって撚るときもあります」と優しく声を掛けられ、救われた気持ちになった(笑)。

4.柔らかい葉をつなげる

草紐をさらに長くしたい場合は、葉の柔らかい方(根の方ではなく葉先)どうしを交差させて撚り合わせていく。葉先が繋ぎ目から少し出るようにするのがポイント。

身のまわりにある植物を紐にして草の風情を楽しみながら実用していく。このノウハウを獲得すると、庭に群茂する月桃のみならず、花畑の仕事場で煩わしい存在で、ただただうんざりしてきたイネ科の雑草たちが紐の素材になるとわかって宝物のように眼に映るようになった。それに、植物で日用品をつくるという行為には人類の原初の行動をなぞった感慨が湧き上がる。このスキルを身につけると、サバイバル能力がアップし、何やらどんな状況でも生き抜いていけそうな勇気が湧いてくる。これはすごい体験、学びをしたと興奮し、そのテンションが醒めないうちに実践を重ねなくては。

というわけで、家での復習編に続く。

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