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鎌田芳朗さんの佐原張子

あやめパークで旬の花菖蒲を観たあと、まっしぐらに佐原観光の中心部である小野川周辺へ移動したのは、ここ数年来の願望があったから。

足早に目指したのは賑わいから少し離れたエリアに佇む「三浦屋」。佐原張子のつくり手、鎌田芳朗さんの自宅兼工房である。キュートだけどファンシーではない。絶妙に力の抜けた造形と表情、色彩。個人的に世界で一番好きな招き猫の張子を作る鎌田さん。誰も真似できない緩やかな創作に魅了される人は多く、とくに猫は大人気。4年前から鎌田さんに連絡して注文しているが、催促するたびに朗らかに応答してくれるものの叶わず、淡い期待を諦めた。

2015年始に青山のギャラリーでイラストレーター佐々木一澄さんが出品していた猫に手を伸ばしておけばよかった。

制作に及ばないのは個人からの発注だからというわけでないだろう。友人のセレクトショップバイヤーや郷土玩具探究家でもある佐々木さんも「そんなもんですよ」と笑う。刑事コロンボ並みに何度もしつこく足を運ぶことが肝要だったのだ。

直接、アポなしで初訪問した工房に鎌田さんの姿も欲しい型の猫もなく、制作途中の張子を眺めて去った。高齢で手が止まりがちという噂は本当なのだろうか。連絡の上、数年前に押しかけ、顔を合わせなかった詰めの甘さを後悔。

がっかりして川辺の佃煮屋に飾られる猫をスナップして残念すぎる気持ちを鎮めた。



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