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疲れ果てたときのパスタ帖
一日中外で刃物を扱い、高い所に登る危険な仕事をする毎日。ときには映画『レオン』のジャン・レノみたいに掃除を遂げ帰宅したとたん緊張感が緩んで座りこみ呆然と何もしたくない日もある。それでも風呂を沸かし、洗濯し、家根裏に干すルーティンを粛々と進める。そして晩御飯の準備。米を研いで鉄鍋で炊く場合はおかずをどうするか。そこで思考停止に陥いる。
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そんな疲労困憊した夕暮れはお助け本にすがる。写真家・萬田康文さんと大沼ショージさん著の『しみじみパスタ帖』を手に、パスタという手軽な家庭料理があり、冷蔵庫の限られた食材でパパッとさまざまにつくれるこのレシピ集があって良かった。そうしみじみ感謝する。
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冬の大根と同じく、今は春キャベツが余りがちな時季。キャベツをメインにしたパスタはないか帖をひらくと冒頭近くにあって安堵した。四季という時系列で余った食材を活かせるレシピが並ぶ構成が素晴らしいし、じつに助かるのだ。たっぷりの湯を沸騰させパスタを投入し、茹で上がったら具材に和える。とてもシンプルな工程がパスタの美点だけれど、より美味しくいただくにはポイントがあると萬田師匠は説く。パスタ、水と塩の量をきちんと計測し、キャベツもパスタとともにしっかり茹でる。これだけ最低限のルールはどんなに疲れていようが守れるんじゃないかな。
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レシピの最後にお好みでふりかける黒胡椒やすりおろしたチーズ塊など調味料のオプション的な記述がさりげなくあるけれど、これもなぞると断然プロの味に昇華するからぼくは切らさないようストックしている。そうしてレシピに沿って一皿を満喫したら、次は自分好みにアレンジしていく。たとえば、ニンニクと赤唐辛子を追加すれば、たちまちペペロンチーノ風になる。自身の嗜好しだいでまた別の感動が引き出せる。その余地を与えてくれるパスタ帖はぼくの台所に欠かせぬ一冊だ。
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