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フランス白磁とドーナッツ
ぼくが90年代にひとり暮らしを三浦半島の海辺で始めたとき、最初に買った器は柳宗理デザインの白い陶器の皿でした。その皿が気に入って、なんでも盛って食事していたけれど、そのうち工業製品的な無地の素っ気なさ、味気なさを冷たく寂しく思うようになり、民窯の登り窯で焼かれた、伝統的な文様が施されたり、無地でも地域特有の土色を帯び、奔放な炎の作用が眼に心地よい器を選び使うようになりました。
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そんな「民藝派」の自分がまわりにまわって最近、白い無地皿にまた惹かれるようになってきたのです。フランスの少し古い白磁。その実直で機能的なフォルム。そして何より土の成分からでしょうか、なんとも穏やかで柔らかな乳白あるいは象牙色の色合いが心を優しく和ませてくれます。
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写真は19世紀末からブルゴーニュ地方の町ディゴワンで大衆的な皿を焼いてきた窯元の皿。森吉野さんのポップアップショップで出会い実用に見合う値段もあって持ち帰りました。ぼくはコレクターではないので、カジュアルにふだん使いできるかどうかを古道具を選ぶ基準にしていて、その要件に沿う物を主に扱う森吉野さんのバランス感覚をとても好いています。
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この皿の佳さは和洋料理からスイーツまで幅広く受け入れる自由さと主張しない控えめさ加減。懐が深いといいましょうか、たとえば和菓子やドーナッツ、パンを載せても主役を引き立てつつ、穏和な景色を醸しちゃうもんですから、朝昼晩プラスおやつの時間にもついつい使いたくなるんです。こうやってスナップしても絵になる気がするし。というわけで、フランス白磁の魅力に心奪われつつありつつも、あまり深みにはまらないよう、もう一枚だけ求めようと新たな出会いの機会を待ち望んでいるところです。
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