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平山さんに会いに
ヴィム・ヴェンダース監督の映画『PERFECT DAYS』素晴らしい作品でしたね。尊敬する知人のアーティストや友人がこぞって絶賛していたので、観に行ったのですが、渋谷区の美しい公共トイレを清掃する平山さんの淡々とした、平穏にして優雅な日常と、僕の大好きな東京の光景が美意識を持って描かれていて魅了されました。もしかして自分の半生でマイベストムービーに出会えたのでは、とさえ惚れました。
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とりわけ役所広司さん演じる平山さんが暮らす東京イーストの下町景色に強く惹かれました。
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平山さんが住むアパートの窓からは東京スカイツリーや神社境内の一部や高い樹、集合住宅が見えていましたので、方角と環境、さらにはインターネット投稿から住所は江東区亀戸とわかり、Google Mapsのストリートビュー機能でリサーチ。ほどなく江東天祖神社そばに実在するアパートを探り当てることができました。
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場所を特定できたら、実際にあの味わい深い住居を眼にできるのかと心昂って仕方ありませんでした。なにしろこの場所近くには幼いころ中央区佃島の実家から都バスに乗ってよくお参りに行っていた亀戸天神社や、その後に憩っていた葛餅の「船橋屋本店」があり、下町情緒あふれる街に深い親しみと安息を覚える街だからです。あの亀戸で撮影されたのか。ロケ現場に立ち、このアパートに似た昭和初期の建物がたくさん現存する地域を散策して郷愁に浸りつつ感銘を新たにしました。
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訪問のタイミングは西陽が差す午後遅めと定めていたので、散策後は幼少時には叶わなかった昼呑みを亀戸駅近くの「亀戸餃子本店」で楽しもうと心に決めていました。平山さんの住居に会えた嬉しさの余韻とともに餃子3枚とビール小瓶1本。活気に満ちた店内ですが、長っ尻は野暮。ささっと味わって、ほろ酔い気分で店近くの停留所で都バスに乗って佃島に帰ります。
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清澄通りをゆっくり、ゆったりとクルージングするバス。その車窓から子ども心をときめかした瀟洒な洋風長屋『旧東京市営店舗向住宅』が立ち並ぶ清澄白河あたりの風情ある景色を懐かしみ愛でる、都バス特有の悠然たる時間の流れがたまりません。
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花街、門前仲町で途中下車し、江東区牡丹町の人気店「鳥末」で焼き鳥をテイクアウトして向かったのは、古石場親水公園、小津橋。ヴェンダース監督が影響を受けた小津安二郎監督の本家が敷地にまたがるように建てた橋のたもとでひとり二次会よろしく外呑み。平山さんのアパート周辺からここに移動したのは自分なりの『東京画』のシーンに心酔したいと目論んだからでした。
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東京湾の海水がゆるりと流れる水路脇を歩き抜け、家路につく住民たち。その心鎮まる穏やかな情景が好きで、古石場に住むいちばんの呑み友達とときどき過ごす空間なのですが、2月のキリッと冷えこむ時季になごむのは初めて。暮れなずむ水辺の空気感、情趣を心に刻みます。
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越中島をふらふらと歩き、美しい記憶が残る隅田川、相生橋を渡って佃島に帰ります。ライトアップされた橋と舟、人工光が映える水面、ほのかに煌めく運河。そのロマンティックな画にうっとりしつつ。
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芯から身体が冷える夜ですが、川辺の区民ガーデンでは、そこかしこで白紅の梅が開花し、春の気配に心温めました。また、忘れ得ぬ東京の休日を満喫できたようです。
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