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水の戸をめぐる散歩 後編
『MitoriO』エリアを後にして黄門さん通りを南町方面へ。台地を下って桜川の谷底に広がる仙波湖で憩おうと南町3丁目の交差点、自由広場「M-SPO」に移動したら驚きの物体が視界に入った。
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2年前の夏、上野「東京都美術館」の特別展『イサム・ノグチ 発見の道』で鑑賞した遊具《プレイスカルプチュア》。
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それがなぜここに!とネットで検索したら、この作品は茨城放送が発注制作したもので、展示終了後この広場に移設されたと知る。赤色のタイプはニューヨークとここにしか存在しない。そんな貴重なものに触れられ、遊び親しむことすらできてしまう。改めて水戸気質のおおらかさに感服し、この街がいっそう好きになった。
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ちなみに《プレイスカルプチュア》の隣には、赤い八面体のパーツを組み合わせた《オクテトラ》と(撮り忘れた)青と緑色の四角い柱を集めた《プレイキューブ》も据えられて遊べるという大盤振る舞い。世界じゅうでこれほどノグチ作品とカジュアルに戯れられる場がほかにあるのだろうか。水戸、恐るべし。
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自由広場の先にある崖を降りて仙波湖へ。嗜好が似通う友人で益子の陶工、粕谷完二さんに勧められた水辺を歩くことはマイファミリーのルーツ探しに次いでこの旅の主目的だった。
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水際には土の遊歩道があり、その隣には広めの舗装歩道が並行して湖をぐるりと囲んでいる。散歩やジョギングに興じている人は多いけれど、すれ違うとき互いに気を遣っている。だから自分の静穏な時間がゆるりと途切れることなく続く。
こんな環境には東京をはじめとした都会空間ではそうそう存在しないだろう。ぼくは仙波湖がある水戸がとても好きになったし、たびたび訪ねたいと思った。
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白鳥に加え、る黒鳥に通年会えるのもかなり珍しいのではないか。事前にこの情報を知って白鳥型ボートの桟橋近くまで歩いて行くと、確かにいたいた! 禁じられているけれど、誰かから餌をもらっているのだろう。人を怖がらず、カメラ片手に近づくと向こうから寄ってきた。
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水面の黒鳥が絶好のポジションからスーッとこちらに滑ってきてくれたときはテンションが最高潮に。思わずガッツポーズをしてしまった。背景の水鏡に映るのはついさっきに訪ねた水戸芸術館の塔。仙波湖から遠望する塔も佳いなぁと実感したし、塔はまさに水戸市のシンボルだと心から理解できた。
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湖南側、「少年の森」にある多角形の遊具(現在は使用禁止)も眼にできたし、深く深く満たされた水辺散歩。
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仙波湖公園の東屋で「木村屋本店」で買った『水戸の梅』と『黒糖饅頭』を味わって心安まり、水戸駅方面に歩き戻った。
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水戸駅内「エクセルみなみ」に入る「サザコーヒー」でさらに一服し、至福の散歩を振り返りつつ、撮ったスナップ写真のRAWデータを現像。翌朝、親父に報告を兼ねてプリントして贈る水戸の現況風景写真をどれにするか選んだ。喫茶空間で写真を整理する行為にぼくはこの上ない悦びを感じる。旅先ならなおさらだ。
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そして、水の戸徒歩旅行のクライマックス。水戸の権現さんこと水戸東照宮が所有する土地に飲食店が連なる宮下銀座商店会のストリートへ。レトロなビル群と仄暗い道幅狭い道が醸すムードがたまらなく旅情を誘う。その深みの一軒、ナチュールワインのバー「ルピオット 」で憩い、たっぷり蒸発した体内水分を補給した。
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ワインのセレクトはおまかせ。とびきり旨い一皿を肴に、白と赤数種。どれも料理、そして自分の身体によく馴染み、沁みた。事前に予約していたのだが、カウンターの一席をかろうじてキープできて良かった。店主とも楽しく会話を楽しめ、旅を最高に幸せに締められた。また、必ず再訪しよう。
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店を出ると、夏祭に備えてか、お囃子が聴こえてきた。その心地よいリズムがほろ酔い気分にシンクロし、水戸東照宮の境内におのずと足が向かった。ぼくと遠い遠い縁がある徳川家康を祀る権現さん。旅の成功を感謝し、次なる機会も健やかに過ごせるよう祈願した。
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