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八丁堀と佐島の水路

佃島の実家に寝泊まりした翌朝は決まって八丁堀の「CAWAII BREAD AND COFFEE」まで散歩して朝食を食べる。

最近は『クロワッサン・オ・ザマンド』とKAFE工船の深煎り豆で淹れる『アメリカーノ』のほぼ一択。

パンとコーヒーがとびきり美味しいことに加えて、亀島川のほとりで風にたなびく葦と悠然と流れる海と川の水、きらめく朝の光を望むテラス席があまりにも心地よいのが通う理由。

その水辺にはボート係留所がある。この川からならばカヤックでたやすく川から海に漕ぎ出せるかもしれない。ぼくの青年期には夢だった親水整備が進められている。

いいなぁ、と羨みながら現実に還り、店近くの京橋宝町で電車に乗って葉山に戻る。午後は住居そばの一色海岸からカヤックで水上へ。

家から波打ち際まではカヤックを自作カートで運搬し5分ほど。大きなタイヤを選んだことが大正解で、見通しの超悪い県道207号(森戸海岸線)、急坂の舗装路、柔らかい砂地をすこぶる快適に移動できる。ストレスが少ないから頻繁に海上散歩に出かけようって気になれる。

この日は佐島まで足を伸ばした。周辺には軒先や庭から海にそのまま入れる建物が点在。ボートで家のなかへ直接入れる個人住宅もある。憧れしかない環境。ここまで海に近い生活は生涯叶わないから、せめていっときの妄想に耽る。

佐島の天神島周辺は無数の貝殻が砕けた白砂の浅い海底が広がる。冬のよく晴れた日、ぷかぷか浮かんでいるとエメラルドグリーンの海水と波紋が眩く視界を占める。まるで南太平洋の島を訪ねているかのような幻想トリップ。そうして、ぼくはまた夢の世界を漂う。

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