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カルイ納まる

家でいちばんくつろぎ、一日の心労をねぎらう場がリビングの寝椅子。その脇の書棚周辺には自分が最も惹かれる本と物を飾って眺め、触れながら日々、深い安らぎをもらっている。このスペシャルコーナーにずっと空けておいたスペースがあった。日本の工人が手がけた編組品のなかで自身がベストの造形美だと憧れる宮崎県高千穂町の背負い籠「カルイ」。いつか手に入れられたらここにディスプレイして愛でよう。出会いを想い焦がれて20数年が経過。願いは先週末、ついに叶った。

藤沢、龍口寺で毎月第3日曜日開催の「龍ノ口骨董市」。友人であり、新旧の健やかで美しい工藝品を選び集め販売する「讃々舎」の高梨武晃さんが初出店していると知り駆けつけた。

三浦市の実店舗がおよそ一年前から休業中で、久しぶりの店開きだった。ぜひとも顔を合わせたかったこともあるが、会場ブースの投稿写真にカルイのミニチュア版がちらっと写っていたもんだからもう目指さずにいられなかった。

DMで尋ねたら、わずかなお小遣いで手が届く値だったので向かう前に取り置きを依頼。そして、念願の対面を果たした。工人が製品サンプルとして制作したものだろうか。可愛らしいサイズで実用向きではないが、編組のディテールは緻密で、力強いフォルムに魅せられた。

ブースでは他にも裂織りの大きなマルチカバーや、我が家にも数脚あるインドの椅子に裂織りを施したものにも強く惹かれたが、これはまた機会を得られたらとグッと我慢。休業中も佳き仕入れを継続しているようで安堵もした。市に合わせて並べるものを厳選した高梨さん。その心眼の働きも研ぎ澄まされ、実店舗よりむしろ好印象を抱けた。こういった機会に今後もリトライして欲しいなと思った(たいして買わないのになんだか偉そうで、すみません!)。

納まるべきところに納まった小さなカルイ。この平穏無事さが、丸や赤緑、飴色を基調にした、ちょいとポップな玩具コレクションの主格としてがつんと喝を入れてくれるようで、俄然とマイ日常景色が刷新されてじつに喜ばしい。

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