見出し画像

永久保証に泣く

仕事の道具や消耗品はともかく、好きで選び抜いた日用品やウェア、嗜好品は修繕しつつ、できれば生涯愛用していきたいと願っている。もちろん自身では直せない場合がほとんどだからメーカーや販売店の良心、体制に頼ることになる。けれど、たとえばリペアに力を入れるパタゴニア社のようなメーカーだって対応不可なアイテムもあるし、サービスには限界がある。

15年ほど着けてきたヴィンテージ眼鏡のテンプルが経年劣化で突如ポキリと折れた。ニューヨークにかつてあった家族経営のタートオプティカル社が1950年代に製造した『F.D.R.』というモデル。とても気に入っていたし、ガラスの偏光レンズを組み入れてもらったり手をかけたフレームだから呆然自失。さすがに修繕は不可能だろうと放置して一年以上が経過してしまった。

諦めて日々の仕事に打ちこんでいた先日、何げなく表参道のヴィンテージ眼鏡ショップ「SOLAKZADE(ソラックザーデ)」の投稿を見て泣きそうになった。この店で買ったフレームは一生無料で面倒をみるという熱いメッセージ。驚き、感動してすぐさま相談。修理受付を予約した。マイF.D.R.は同店を営む岡本兄弟がまだ大阪のアトリエにて古い眼鏡フレームを研究し、オンライン中心で眼鏡を扱っていた時代に入手したもの。現体制以前の商品をケアしてくれるなんて、男気に胸いっぱいになった。

「ヴィンテージというのは、もう二度と手に入らないというフレームも多い。壊れたからと言って買い換えるだけでは済まないくらい気に入っている自分の身体の一部のような大事なフレームもある。だから、たとえ踏んづけて真っ二つに折れても。犬がテンプルをかじって食べられちゃっても。なくさない限り、どんな破損でも心配ないよ。小さなパーツでもできる限りなくさないように、持ってきてください。オリジナルの状態や製法を熟知している僕らの手で、できる限り原形に近づけるように、修理は誠心誠意、頑張ってさせて戴いております」

魂、誇り、揺るぎない哲学、美学に涙腺が緩むメッセージ。プロフェッショナルな気概、商いに触れ、この店で眼鏡を買って心から良かったと思っている。永久保証なんて、よほどの覚悟なしにはとても口にできないよね。適正価格とはいえ、希少なミントコンディションだけを厳選するこの店で新たに買い足す余裕はこの先、たぶんずっと無い。そんな自分にも裕福なカスタマーと等しく面倒を誠実に受け止めてくれる彼らに出会えてよかった。まさに一生もんの佳き買い物、深謝。

3週間後くらいに修繕結果をまた伝えますね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?