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pen再読

東京都現代美術館での「ジャン・プルーヴェ展」を観て一週間が経過。いまだ深い余韻に浸りまどろむ土曜日の朝。

20年前に購入した雑誌「pen」88号を本棚から取り出して再読。ジャン・プルーヴェ特集の記事を改めて開くと、ジャンの仕事ぶりと建築、家具、美学の魅力を見開きごとに明確に、詳細に解説し、今回の企画展に最適な最高のガイドブックだと驚愕、敬服した。

まさに永久保存版な一冊。ファンは古書をぜひ手に入れることをお勧めします。コンテンツだけを以下、列挙。展示と内容があまりにもリンクしていたから小見出しに沿うと思われるイメージをそれぞれ添えます。

建物と同じ手つきで、家具をつくる。

素材を減らすことで、機能が増えるという逆説

家具も建物も、その構造ですべてが決まる。

アールヌーボーの精神が、出発点だ。

完成された未完成こそ、美しい。

同じフォルムの中に、異なる機能を加えていく。

バランスへのこだわりが、かたちになる。

ル・コルビュジエは、なぜ驚愕したか?

アルミとの出会いが生んだ、新しい風景。

手の痕跡があるから、永遠に愛せる。

彼にとって、建築とは構造を発想することだった。

けっして模倣しない、それがすべてだ。

その他のコンテンツは、

子どもたちには、新しい机を。

ポンピドゥセンターを選ぶ、審美眼。

プルーヴェの創造性に見る、人間愛。

秘蔵品が眠る、ヴィトラ美術館の謎。

ジャン・プルーヴェのある風景。

●コンテンポラリーな空間と、絶妙なハーモニー。●この家は、もしかしたら飛べるかもしれない。●パリ政治学院の学生は、プルーヴェで育った。●ル・コルビュジエの世界に生きるプルーヴェ●この部屋に住む男が、プルーヴェを再発見した。●本当のプルーヴェに出会いたいなら、この2軒。

いま買える、プルーヴェの逸品。

●時代を反映しながら、時代に流されないデザイン●プルーヴェはなにより、美しい脚にこだわった。

といった50ページにも及ぶ超充実、濃密な構成。ジャンの強靭な意志と構造への探求、創造性、両親から継いだものを深く、わかりやすく理解できる秀逸な特集だ。中刷りして今回の企画展で販売したら良かったのにと心から思う。あの時代、嗜好性が強い雑誌制作に携わる編集者、ライターがいかに優秀で読者の日常に影響を与えたいという願望、魂がこもっていたか、雑誌黄金期の紙媒体への想いも募った。

再読して後悔したのは、復刻された『スタンダード・チェア』をなぜ手に入れておかなかったのか(笑)。同じデザインの家具をたくさん世に出すことがなかったジャンが、80歳を過ぎてまでプロトタイプを造り続けたという執心した、唯一の例外的な椅子。20年前は現行品の半額ほどで売られていたのに! この頑強で構造美剥き出しの一脚をやっぱり家に迎えたい。しばらく煩悩に心囚われそう(笑)。



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