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鎌倉のあんこ

月イチか月ニ、鎌倉での植木仕事の帰りに市内の長谷に寄ってから帰るようになった。最近の定番朝食、葉山一色「ポコパン」の『トースト食パン』に載せ塗るあんこを買うためだ。

鎌倉文学館のそばに佇む「山屋製あん所」は70年近く餡をつくり続けてきた老舗。和菓子店への卸売のほか、個人客にも小売してくれる。

正月三が日以外は無休で工場にひとり立つのは、3代目の山前 譲さん。粒餡、漉し餡、白餡のほか、顧客の要望に応えてカスタムメイドも行っているよう。それにしても、毎日絶やさず餡をつくり続ける日常とは。生真面目で真摯な家業にただ驚き、頭が下がってしまう。

訪ねるたびに違う餡を選んでいる。先日は粒餡を500グラム、500円。買うと、当たり前のように持ち帰り用の簡素な袋に入れてくれる。誠実な姿勢が嬉しいが、次回からは保冷バッグを携えて断ろう。

発酵バターとともに餡を合わせてじっくり焼く。その景色の悦しさといったら。

富山・わたなべ木工の『パン皿』、広島・宮島木工の『バターナイフ』、英国・リーチポタリーの『マグカップ』。餡バタートーストをめぐる、健やかで美しい朝の情景が厳寒の職場に向かうぼくの気持ちを温かく励まし、奮い立たせてくれる。

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