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白鳥を飾る

日増しに寒さが増し、朝夕は身が震えるほどに。日が暮れるのもめっきり早くなり、ただでさえ薄暗い土間も静寂が募る。初冬めいた時季にふさわしいモノトーンの画集を書棚から持ってきて秋の夜長にじっくり眺めている。

スウェーデン出身の画家、マッツ・グスタフソンの白鳥をモチーフにした作品『SWAN』。暗闇のなかを静かに優美に泳ぐ白鳥の佇まい、余白多いレイアウトの洗練に心奪われて2020年の真冬に手に入れた。

同じ情景をじっさいに魅入りたいと、すぐさま仕事終わりに築地から皇居・桔梗門そばの濠まで歩いて行った。その日の朝、皇居を内観したさいに白鳥が居る水域、給餌場を確認していたから日没後は画集に近い雰囲気で会えると確信もって桔梗門付近を目指したのだ。仄かに水面できらめく大手町ビル群の灯と城壁側の漆黒とのコントラストが趣き深く、江戸と現代が交錯する不思議な空間感に捉われた。予想どおり闇のなかからすーっと現れた白鳥。その幻想的なシーンに寒さも忘れる高揚感を覚えた。

当時の興奮を想い起こしながらブラザーの家庭用複合プリンターで皇居の白鳥をプリント。用紙は徳島、AWAGAMI FACTORYのインクジェット和紙『楮(こうぞ)厚口白』と『楮薄口白』。楮繊維の荒々しさ、美しさを備えたお気に入りのプリント用和紙だ。オールドデジカメ特有の高画素撮影時の粗い粒子、スローシャッターによる白鳥のブレが和紙の質感とよく馴染んで、刷り上がりに今回も感動。しばらく土間のベンチコーナー脇に飾ってグスタフソンの絵と交互に鑑賞しながら愛しみ尽くしたい。

使用カメラ:Panasonic GF-1
使用レンズ:LEICA MACRO ELMAR90mm
ISO感度:1600
手持ち撮影

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