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ハーマンミラーのアーカイブ

2019年10月31日、東京丸の内のハーマンミラーストア2階にて、ハーマンミラーの膨大なデザインのアーカイブ(重要な記録の保管・保存、伝達)を管理するアーキビスト、エイミー・アーシャマンさんのトークイベントが催されました。2,000枚以上もの写真、グラフィック、資料を614ページにわたって紹介する書籍『A Way of Living』の著者のひとりでもある彼女が、どのようなものをアーカイブし、どう活用しているのか話してくれました。

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ハロウィンモードの衣装を着る、お茶目なエイミー・アーシャマンさん

みなさん、こんばんは。
私はエイミー・アーシュマンと申します。ハーマンミラー社にアーキビストとして勤務していますが、一方でヒストリアンとして歴史の方の担当もさせてもらっています。

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アーカイブのある場所はミシガン(ミシガン州グランドラピッズにあるハーマンミラー本社)で、デザイナーとお客さん向けに多くのツアーを催しています。ここでは、文章、設計図(デザイン図)、ポスター、製作物のプロトタイプなどの収集物を倉庫に保管しています。

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これはジョージ・ネルソンからハーマンミラーの創業者D.J.デブリーに送られた手紙。「イームズの成型合板のビジネス事業を取得しようとしています」といった内容です。当時、イームズはワシントンに拠点を置くエバンス社と業務提携していましたが、第二次世界大戦後にハーマンミラーがその技術全体をイームズから得たのです。

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事業を継承して、こういった資料も一緒にいただきました。このような椅子の設計図をインスタグラムに載せたらクールでしょうね(笑)。

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チャールズとレイ・イームズが制作したフィルムもたくさん保存しています。彼らは家具とショールームの仕事のみに携わっていたわけではなく、ハーマンミラーのマーケティングフィルムも作成していました。

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こういったイームズの製品資料を私たちはアーカイブしていますが、ワシントンにある議会図書館にも政府の持ち物として保管されています。イームズが制作したフィルムは、本来はセールスの社員の教育目的のもので、セールスのミーティングで見せられていたのですが、とても楽しい内容で、今なお通用する斬新な映像です。アメリカMBCのモーニングニュースでも放映されたこともあるのですよ。

私たちはマーケティングチームと一緒に、ハーマンミラー内のライブラリーに保管してあるもの、議会図書館に置いてあるものをうまく保存できるよう協働しています。フィルムの保存は、公共のコレクションという意味もありますが、会社として今回のようなイベントで使えるようにする目的もあります。ネガフィルムやポジフィルム(スライド)、印刷物など非常に大量の写真をコレクションしていますが、リニューアルする製品の写真だけでなく、さまざまな写真が含まれています。

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これはアレキサンダー・ジラードと妻のスーザンがサンフランシスコに居たときの様子を写したものです。ジラードはショールームのデザインもしていて、これはそのストアのひとつです。

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これはレイ・イームズがアートディレクションしたもの。創造性が発揮され、家具をアートに近いポジションに高めていると思います。

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こちらは私が大好きな、成型合板の製品が出たときの写真。椅子やテーブルを退屈に並べるのではなく、抽象的で絵画のようです。

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これはイサム・ノグチの名作、コーヒーテーブルを彫刻作品のように捉えたもの。ジョージ・ネルソンが1947年に一人の写真家を雇い、カタログの写真を撮っていくことになったのです。

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ニューヨークのセールスマネージャーだったジム・エッペンジャーがデザイナーを訪問して撮った写真の一枚。アレキサンダー・ジラードのサンタフェの自邸を写したものです。

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チャールズとレイ・イームズがロサンゼルスの自宅でくつろぐ様子。こういった写真は一般にはほとんど公開されていません。当時、インスタグラムがあれば、デザイナーたちのプライベートをご紹介できたのに。

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毎年、夏になるとハーマンミラーの招待でピクニックに行くのですが、この写真はその様子を写したもの。手にしているグラフィックはスティーブ・フリックホルム(1970年から1989年にかけて20枚にのぼるハーマンミラー社の伝統あるピクニック・ポスターをデザイン)によるものです。背面にはホットドッグや、マカロニチーズなどのメニューが書かれています。

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保管スペースには貴重品を納める場所があり、湿度、温度がコントロールされています。

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ここで保管されているのは、主に初期の時代の部品やレアなもの、ネガフィルム、初期のマーケティング資料など。もろい繊細なものも含みます。

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ここにはファイルキャビネットがあり、デザインに関する図面やテキスタイルもたくさん。

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これはアレキサンダー・ジラードがグラフィックデザインしたテキスタイル。展示や製品を実際に開発するときに役立つように保管しています。

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これは図面の例。右がオットマンのスクリュー、ナット、ボルトなどの展開図。左が仕様書。

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このとても格好良い図面は今も作られている定番製品のもので、開発チームが改めて作り直すときに役立ちます。また、現行品の製造工程がオリジナルに沿っているか、これで確認しています。

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私の仕事はデザインに関してのストーリーをお知らせすること。イームズ、ジラードなど、いろいろなデザイナーの話をします。この女性はトモコ・ミホさんという日系アメリカ人。ジョージ・ネルソンのオフィスで働いていて、アイコニックなデザインに関わった方です。例えば、ハーマンミラーの1964年のカタログは彼女が作りました。

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彼女はカタログのレイアウトを担当していたのですが、アートディレクションにより少し凡庸な物体、学校の椅子といったものを彫刻的に、サイケデリックに表現。本来退屈に見えてしまう家具のカタログを驚くべきほど良いものにしています。

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保管されているものには広告関係の資料が1940年代から今に至るものまで多く含まれます。アーヴィン・ハーバー(グラフィック、工業・インテリア、建築など、さまざまな分野で才能を発揮したデザイナー)は1947年から1963年までの間、ネルソンオフィスのデザインディレクターを務め、『ボールクロック (1949年)』や『マシュマロソファ (1956年)』など、20世紀のアイコンとなるデザインの数々を生み出しました。

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1946年に制作された”M”をモチーフにしたハーマンミラーのロゴデザインも彼によるものです。

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アーヴィン・ハーバーは抽象的な表現を広告に用いました。ジョージ・ネルソンはアーヴィン・ハーバーには好きなように何でも作らせていたのですが、特徴は見ている人が手を止めてハッと見てしまうようなものに仕上げるということ。非常に革新的で、インパクトがあったのです。

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これもアーヴィン・ハーバーのデザイン作例のひとつ。ニューヨークの近代美術館(MOMA)が収蔵するアフリカのマスクからインスピレーションを得て、ドレッサーなどに使う引き出しのノブを組み合わせてレイアウトしています。

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新聞や雑誌のクリッピング(切り抜き)もたくさん保管しています。これは1949年にノグチ・イサムのコーヒーテーブルが『ニューヨーカー』で発表されたときのものです。

こうしてアーカイブすることで、さまざまな目的に応じてハーマンミラーの製品開発、そして古典的でずっと継続している、非常に素晴らしい製品の再ローンチ(新しい商品やサービスを世に送り出すこと)に役立てています。

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3年前、ハーマンミラーのコレクションラインにジョージ・ネルソンの『シンエッジベッド』と、『デイベッド』が再登場しました。

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これをやる時にアーカイブから図面を引っ張り出して開発チームに渡しました。それによって改めて再設計して作ることに移行できたのでした。

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左の図面はオリジナルのもので1950年代にリリースされたときのベッドの様子。そして右側が新しくローンチし直した製品の写真です。

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左の図面がオリジナルである50年代の『デイベッド』。右の方が新たにローンチされた現代のものです。

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いろいろなものをローンチする際、私はPRチームやコミュニケーションチームと一緒に動いて発表します。アーカイブされている画像を『ウォール・ストリート・ジャーナル』や日本の各誌などプレスの方々に提供しています。

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アーカイブ・プロジェクトで最たるものが、こういった本(『A Way of Living』)の出版です。これはロンドンの有名なフェイドンが版元で、ハーマンミラーとしてのアーカイブだけではなく、MOMAやスイスのヴィトラ・デザインミュージアムからも資料を収集して掲載しています。

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この本を構成する収集物のなかで最も多く紹介されているのはチャールズとレイ・イームズのものです。これらは議会図書館に納められていて、この図書館では2つのパート、書いたものと、写真に分類されています。

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左側が紙ベースの資料。右が何千というレベルのスライドです。この本を編むうえで素晴らしいリソース(素材)となりました。

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これは議会図書館で「原稿系メモ」に分類される資料のひとつで、イームズのデザイン担当者のなかのひとりがハーマンミラーに送ったメモ。ファイバーグラスチェアに関するもので、どのように組み立てるか説明しています。

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こちらは「プロセス・ドキュメント」というジャンルに分類されるもので、レイ・イームズによるもの。彼女は非常に細やかなことにも携わっていました。例えば、ショールームをオープンする際の招待状はどうするかとか、手描きで色をスタディ(検討)していたことがわかります。

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こちらもレイのものですが、これらの紙切れはカラースタディに関わるものだと思います。デスクの上にちょっと置いていたものが、掃除するときに捨てられず、オフィスのものとして保管されているのがおもしろいですね。とても良い色で、私は大好きです。

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こういったスライドを保管しているのも素晴らしいと思います。これはレイが家で佇んでいる光景ですが、静かな瞬間を捉えていて、息遣いや雰囲気を感じ取ることができます。

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『A Way of Living』はさまざまなものをうまく組み合わせてレイアウトしています。

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会社のロゴを空間にどのようにマッチさせるのかを表現したページもあります。

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また、多くのエッセイも掲載しています。改めて書き起こしたもの、当時のものを入れているのですが、アレキサンダー・ジラードはグッドデザイン対スタイルについて書いています。

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ハーマンミラーの直営店、ニューヨークと東京のストア空間にデザインがどのように溶けこんいるのかも紹介しています。




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