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怪我の功名
造園業務中、足の甲に怪我をして生まれて初めて整形外科に通い始めた。
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湘南国際村の内田宙司(ひろし)整形外科。峯山を経て葉山長者ケ崎方面へと抜けるトレイル入口に立地。以前はよく抜けていた林を観ながら不思議な縁を感じる。ちなみに隣は現在の職場を営む親方の本家による畑が広がる。
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初めて訪ねたとき自然光があふれるモダンな建築、ゲルチョップのDIY作品が配置される、さながらアートギャラリーのようなインテリア、エクステリアに驚き、同時に深く和んだ。90年代夢中になっていたフィリップ・スタルクのデザインを想起させ、当時の熱情を思い返す。設計は海を望む院長の自宅と同じく、現代美術作家・杉本博司さんと建設設計事務所「新素材研究所」を設立した榊田倫之さんが担当(森のクリニック)したそう。
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待合室と施術室に流れるのはBEAMS RECORDSセレクトのリラクシング・ミュージック。院長である内田宙司さんの嗜好に親しみを覚えてプロフィールを検索したら『ドクターズ・ファイル』によるマニアックな取材記事に行き着いた。なるほど、ほぼ同世代。デザインやスターウォーズなど惹かれるものに共通性を見い出した。
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グラフィックデザインを独自に学びオリジナルプロダクトも手がけている内田さん。待合室にディスプレイされるECR.Uのウェア、ポップな松葉杖にときめく。院長をはじめスタッフが纏う制服も同社製でファッショナブル。足元はナイキのスニーカーで統一したりして美意識が貫徹される。
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骨折という憂鬱を朗らかにやり過ごし、前向きな気持ちになれるかもしれない佳きデザイン。
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チャールズ&レイ・イームズ夫妻が1941〜1942年、第二次世界大戦中に米海軍からの依頼でデザインした負傷兵士運搬のための添え木『レッグ・スプリント』も飾られている。その成形合板技術が夫妻の代表作となる椅子制作に繋がった。成形と整形。これは内田さんの洒落なのかな。
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イームズ・ファンでもある自分の居間にもレッグ・スプリントは架かる。梱包材に貼り付けてある製造元エヴァンス・プロダクト・ファクトリーのシールともどもラフに飾っている。内田さんは繊細、丁寧にディスプレイ。両者の大きな違いが雲泥な格差とリンクしている気がする。
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治療で足を運んだのは計6度。その機会が心浮き立つものに昇華されたのは内田さんのセンスの恩恵。傷は深くなかったけれど、職場を変えるという自身ではまた大きなリセットへ背中も押してくれた。より向いた未来を選択し、前進できた縁と運に深謝。
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