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穏やかに淡く

光と影のコントラストと彩度が高く、くっきりした現代のデジタル的描写が苦手だ。かといって今やとても費用がかかるフィルム撮影を日常で興じるのは現実的ではないし、味わい深いオールドレンズも持ち合わせていない。明暗部の差が緩やかで、色味も淡い、どこか郷愁を誘う穏やかなスナップを楽しめないかとリサーチしていたらケンコートキナ社が開発したフィルター『ホワイトミストno.1』に眼が留まった。

オールドレンズ風のほんのりと柔らかな雰囲気で撮れる特徴に惹かれてヨドバシカメラ.comをポチッ。いちばん多用している標準レンズにステップアップリングを介し52mm径タイプを装着した。この径を選んだのは所持する広角レンズにそのままつけられるサイズだからだ。

早速携えて日没間際の近所を散歩し、テストシューティング。

太古の地層が露わな岩場を前に、ビーチと裏山にレンズを向けた。梅雨のさなかの平日夕暮れどきの静かな空気感とともに画面を構成するものすべてが穏やかに写る地味さ加減に魅せられた。とくに手前の岩が黒く潰れず、おぼろげに質感が表れている点が気に入った。明暗のトーンが緩やかなライカレンズの美点をこのフィルターがさらに引き出しているのではと率直に感じ、今後は常用していこうと思った。

白く発光するような波の飛沫もこんなに柔和に。ノーマルで撮ったら画面中央部の白が破綻していかにもデジタルチックな感じになってしまうところ。輝く街灯に対しても光の輪郭をぼんやり残して捉えてくれそうだ。自分好みのスナップ三昧を期待できるホワイトミストno.1と一緒に、散歩に、旅にライカを連れ出そう。

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