ダブデカ考察6:SEVEN-Oとは?

 今回全部で4項目あるんですけど、一個一個めっちゃ長いから後で分割するかもわからんです。うーん、どうしてこうなった。

1.SEVEN-Oと薬物捜査担当課

 SEVEN-Oは警察組織の一部局でありながら軍の管轄下でもある、「『アンセム』がらみの犯罪だけを追う特殊捜査班」であり、
「薬物捜査担当課ともシマ争いでよくぶつかる
 =『アンセム』以外の薬物に関わることはない
 =『アンセム』以外の案件に首を突っ込むのは越権行為
な存在である。
 で、あるがゆえに「フェイズ1(=使用疑い)」の段階では内偵調査以上のこと(警察官および特殊捜査員であることを明かしての聞き取り調査や取り調べなど)をしてはいけない。これは容疑者の人権を侵害しないためでもあるだろうが、それ以上に「たしかに薬物を使用していたが、実は『アンセム』以外の薬物だった」時にシマ争いが起こるからではないだろうか。おそらく、内偵調査の結果「アンセム」以外の薬物を使用していることが確定したら薬物捜査担当課に即座に回し、その事件および容疑者からはすぐに手を引かなくてはならないのだ。
 が、それならそもそもSEVEN-Oが薬物担当課の一部局である方がスムーズに進むはずだ。そうでないなら、今探っている容疑者の使っているのが「アンセム」なのかそれ以外なのか、それ以外だとして薬物担当のどのあたりと連携すべきかを判断しやすいよう、薬物担当経験者を優先的にSEVEN-Oメンバーに入れた方がシマ争いだって起こりにくくなる。
 しかしキリルはダグの推薦があったとはいえ一分署の制服警官(しかもこの時点で持ち場無断離脱の常習犯)、ケイはキャリア組のようだがほぼ新人同然、キリルの前に配属予定だったジェファソンはトラヴィスの出した「とにかくパーマキャラがほしい」という条件以外では「昇進が早い1課(殺人事件担当?)期待の若手」くらいの特徴しか見られない。他のメンバーからも薬物担当だった風の話は一切出てこないし、ボスであるトラヴィスも、新人については「パーマ(=あだ名をつけやすい特徴ある容姿の)キャラ」以外の注文はつけていない。こうなると、むしろ薬物担当課経験者を意図的に外している可能性の方が高い気がする。
 と、なると、SEVEN-Oには「アンセム」以外の薬物に対応するためのノウハウや手段が一切ないのではないだろうか。「アンセム」を「違法薬物」としてカウントするなら、そして薬物捜査担当課とぶつかる可能性が高いなら、むしろそっちから人員を取ってくればトラヴィスも胃を痛める機会が減るはずなのに「わざと」薬物担当課とは疎遠であろうとしているようだ。

2.「アンセム」の特殊性

「アンセム」が「使用者の進化を促す」ということは、「人間の全身細胞に含まれるDNAに干渉できるだけの知識を持った誰かが、遺伝子組み換えを自動的に(人の手を介さず)行う方法を発見し薬剤として精製した」ということであり、神経伝達物質に影響するだけの既存薬物とはそもそも必要な知識の方向と量が違う。
 なんとなく水道に例えて言うと、既存の薬物が「水道に流す水の量や質を変える」程度のもの(人体のソフト方面への影響)であるとするなら、「アンセム」はいわば「水道管自体を作り変えたり増やしたり減らしたりする」レベル(人体のハード方面への影響)だ。しかもその「水道管工事(人体変性)」に人間の監督や作業者(医師、技師)が介在せず、工事の一切をロボット(「アンセム」)が全自動でやっているようなものである。全自動だからもちろん住民’(使用者)の生活への影響とか全く配慮しない。だから地質(使用者の体質)によっては一発で事故(オーバードライブ)も起こる。
 既存薬物による変化は「食欲がなくなる」「眠気を感じにくくなる」「気分が明るくなる」というふうに、体の本当に要求しているものを脳が認知しなくなるところから段々と体に無理がかかって異常が出てくる、そういう間接的なものが多い。筋肉増強剤の類についてはまたちょっと違ってくるけど、アレだって体内のタンパク質生成に効果を出すだけで遺伝子いじくったりはしないし、まして骨格や内臓機能や手足や指の数を変えたりはしない。
 しかし「アンセム」による遺伝子の組み換えは「体の要求を脳が認知しなくなる」ではなく、「体自体の構造の変質」をもたらす。神経伝達物質の働きをいじるだけでは鼻の高さや歯並びは変わらないが、「アンセム」による遺伝子組み換えならそれが出来る。おそらくは遺伝子組換えに加えてかなり急速な代謝も行われ、全身の細胞がとんでもない速さで作り直されているのだ。人体の細胞は約37兆2千億個と言われていて、普通に暮らしていると一日1兆個くらいが入れ替わるらしい。それでも全部入れ替わるとしたらひと月ちょっとはかかるわけだけど、それだって基本的には既にある細胞を複製するだけで(まあ遺伝子の設計図によって代謝するごとにちょっとずつなんか変わっていったりはするだろうけど)、「アンセム」のヤバいところは傍目にハッキリわかるくらいの変化を全身に一気にもたらすこともあるっていうところ。一体いくつの細胞を一度にそこまで変化させてるんだと考えるとホント、ほんとに、どう、どうなってんだこのクスリは。「バクテリアみたいなもん」という言葉で片付くもんじゃないぞ。
 イヤなんていうか、あの、たしかに「アンセム」自体はそりゃ「バクテリアみたいなもん」なんだろうけど、人体には免疫機構というものがあって、たとえそれが同じ体から生まれた細胞でも、ちょっとのコピーミスだけで「なんかいつもと違うのがいる(コイツを複製させちゃならねえ)」と判断したらすぐに攻撃して排出するように出来てるんだから、ある程度完成している人体で遺伝子組み換えなんかそうそう簡単にできるもんじゃないぞコレ。遺伝子組換え手法としては「アグロバクテリウム法」っていうのが現代でも既にあって、コレが多分「アンセム」の仕組みにかなり近いんだけど、コレだって組み替えた遺伝子をバクテリア経由で感染させた後、感染細胞を培養してやらないといけないわけだからして、普通に暮らしてる人の免疫機構をすり抜けて組み変わった細胞が体内でうまいこと分裂していけるもんであろうか…難しい…。
 しかし実際ダブデカ世界ではこれに成功している誰かがいるわけで、それでもマフィアや科学者崩れが気まぐれに「もっと売れるいいクスリ作ってやろうぜ」なんて感覚で作れるような代物ではないはずだ。ていうか、コレもうクスリのジャンルが違う。そういう意味では確かに「特殊対策班」が必要だし、それを「薬物捜査担当課」の一部に入れちゃうのも無理があるんだけど、ダブデカ世界の人々の多くはあんまり違いを認識していないように見える。そうじゃなかったら「流通ルートが大体似通ってくる」とか、「薬物捜査担当課とシマ争いになる」とか、ない気がする。薬物担当課の人が「アンセム」の仕組み聞いても多分キョトンとすると思う。薬物でしょ?なんで遺伝子組換えの話が出てくんの?クスリにそんなこと出来るわけなくない?って感じになるんじゃないだろうか。
 そして何より不思議なのが、ただの犯罪組織にDNAへ干渉するだけの知識を蓄えた研究者が混ざって「違法薬物」としてそんなどえらいもののレシピをこしらえてはホイホイバラまいてるってことなんである。しかもその解毒剤の作り方を知るためにわざわざSEVEN-Oの捜査員を拉致しなきゃいけなかったってことは、「アンセム」のレシピを作った「誰か」は、少なくとも現在「エスペランサ」にはいないということだ。いるなら「エスペランサ」内でそいつに解毒剤を作らせればいいだけなんだから。

3.SEVEN-Oと軍

 SEVEN-Oは「警察組織でありながら軍の直轄組織」である。いかに対象が特殊とはいえ「薬物の捜査を行う班」が軍の直轄というのは、一般的に考えれば不自然だ。
「軍」というのは基本的に「国家を守るもの」であるからして、その直轄組織となれば「国家の安全に資するもの」であるはずで、その理屈からいくと「アンセム」はテロ・戦争・諜報活動とほぼ同列の脅威とみなされていることになる。それこそ「アンセム」が「医薬利用」されるようになって毎日のようにオーバードライブ・オーバードーズが頻発するというなら確かに国家存亡の危機なんだけど、2話でキリルが「もうすぐ一週間経つのに何も起こらない」と言うくらいだから、「アンセム」は国の治安を脅かすレベルで流布しているわけではないと考えられる。「アンセム」の性質上、作るのは大変だし一度に一人しか使えないしどんな効果が出るかは人によってまちまちだから、例えば「百人に投与して超人軍団を作って政府を乗っ取る」とかそういう派手なことをするには向いていない。街中の人間にバラまいて錯乱させる、とかの使い方もイマイチできない。致死率30%、百人に投与しても30人死ぬようなクスリを高い金出して自分で使いたがる奴はそんなにいない。だいたい最初の一回は「死ぬかもしれない」と思いながら使い、幸運にも死ななかった3人のうちの二人が、いい効果が出ればそれからも使うかもしれない、という程度。盗み殺しクスリ詐欺のような「国民個人による国内の治安悪化」に対応するのが警察組織とするならば、集団に対して使いにくい「アンセム」はたしかに特殊だが現時点ではあくまで「薬物」の域を出ない、よってSEVEN-Oも「警察組織」の枠を出るものである必要はないはずだ。
「アンセム」を作って流しているはずの「エスペランサ」が知らない解毒剤の作り方は、軍の機密事項として実際に使用するSEVEN-Oメンバーにも知らされていない。おそらくアイシステムによる対象分析で情報がホルスターの調剤機に送られ、自動的にふさわしい配合がなされるようになっていて、そこのプログラミングはブラックボックスになっているのだろう。アイシステムに視界ジャック機能をつけたアップルが、解毒剤の配合については「軍の機密だから(誰も知らない)」って言うんだもの。「情報が漏れて悪用されないように」ということなのかもしれないけれども、それなら配合プログラミングした人がSEVEN-Oにいれば良くない?その人はもうこの世にいないか、あるいは一応いるにはいるんだけど、リスヴァレッタ市内で「普通の人間」として生活したり他の人とコミュニケーションしてはいけない(誘拐や殺害のリスクを無くすため?)ので少なくとも「軍」より外には出られないようになっているんだろうか?
 主力生産者である「エスペランサ」が知らない解毒剤の配合を知り、その配合を直轄組織であるSEVEN-Oにも知らせず、ただ使用者の逮捕と取締をさせるリスヴァレッタ軍部。謎すぎる。まるで本来「アンセム」の管理は軍がしているかのよう。しかも最高責任者のクーパーはリスヴァレッタ市民の知らない「2階」の存在を知っていて、「2階の祈り」で「プロメテウス(=進化の神)の(与えた)火(科学技術)」という言葉の指すものが「アンセム=人類の進化促進剤」であったとしたならば、アンセムをバラまいて「サンプル」を提供するのが「エスペランサ」、アンセム被験体の「後始末」を請け負うのがSEVEN-Oということになるのだろうか?

4.SEVEN-Oという名称の由来は?

「7(SEVEN)」についてはいろいろと候補があるけども、
 1:七つの大罪
 (羅:septem peccata mortalia/英:seven deadly sins)
  
傲慢・貪欲・嫉妬・憤怒・色欲・貪食・怠惰。
  さまざまなメディア作品でよく取り上げられるので日本でもお馴染み
  なんだけど、コレが現在の形に成立して広く流布したのはダンテ・
  アリギエーリの「神曲」の影響なんじゃないかという。
  ただコレ、よく扱われるのはプロテスタントよりもカトリック系だとか
 2:七音音階(Heptatonic scale)
  高さの異なる同じ音の間を7つに区切った音階。
  ドレミファソラシドとかはコレ。
 3:ヨハネの黙示録
  やたらめったら「7」がでてくる。7つの教会、7つの星、7つの燭台、
  7つの封印、7つの角と7つの目を持つ仔羊、7人の天使が吹く
  7本のラッパ、7つの雷、7つの鉢から地上にこぼされる7つの災い。
  そもそも「7」は「3(三位一体、神と精霊と神の子)」と
  「4(四大元素、地上世界、権威、王国、帝王)」からなる完全な数字
  とされており、隣接する「6」は「不足の数字」、
  「8」は「不吉な数字」とされている、らしい。

 で、「O」なんだけども、これは何かを略した頭文字だったりするんだろうか?

Ode(オード=頌歌。壮麗で手の込んだ叙事詩、韻律のこと)
Omen(オーメン=予兆)
Octave(オクターヴ=八度音程。高さの異なる同じ音同士の間に7つの区切りがされたもの)
Office(オフィス=省、庁、儀式、合図、暗示、研究室、局、部)
Offshoot(オフシュート=副産物、横枝、分岐、分家、脇芽)
Oracle(オラクル=神のお告げ)

「Seven-Office(7課)」あたりが妥当な気はするけど、おそらくリスヴァレッタのモデルとなっているであろうアメリカの警察組織ではある特定の業務に従事する部署を番号では呼ばない(具体的な業務内容がそのまま組織の名前になり、その頭文字を取って略称とする)傾向がある。最初にジェファソンの所属を「1課」って言ってたけど、もしそれと同じようにつけるとしたら「Seventh-Office(7番課)」みたいな表現になるんじゃないだろうか。
「アンセム(Anthem=頌歌、交唱讃美歌)」の対にするなら「オード」ないし「オーデス(Odes)」、「副産物(アンセム仕様による暴走車)の始末屋」という意味なら「オフシュート(オフシューツ)」?あるいは「7つの兆し(Seven-Omens)」とか?うーん、わからん。
 あるいは「Oで始まる単語の頭文字」じゃなく、007を「ダブルオーセブン」と呼ぶみたいな、「0(ゼロ)」の呼び替えみたいなもんなのかもしれない。そうなると「7から0まで(のカウントダウン)」みたいなアレになるんだろうか?

サポートをいただけると、私が貯金通帳の残高を気にする回数がとっても減ります。あと夕飯のおかずがたぶん増えます。