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ル・プティ・シュヴァリエ Le Petit Chevalier 6 Vein Ⅲ
ホテルを出て、駅の改札を横切ると、閉園した遊園地のように無人だった。思わず立ち止まる。いや、違う。目を凝らすと窓口に駅員はいるし、表通りから見上げる高架ホームにも数人の乗客を確認できた。
「それにしても」
いつもの癖で口元に手をやり、閑散としたバス停を見渡しながら、囁いた。
日中に市街の中心部にある駅周辺に人の気配が乏しいのは不気味だ。
しばらく敵の気配もない。
空に浮かぶ銀河だけが荘
ル・プティ・シュヴァリエ Le Petit Chevalier 5 Vein Ⅱ
にわか雨は止み、すぐに洋館を出発した。
日本中で多発している異常な現象によるものなのかわからないが、住宅街は閑散としていて、滅多に人とすれ違うこともなかった。
アンリの指示に従いながら、なるべく複雑なルートで次のクダへ向かう。無駄な戦闘を避けるためだ。
通りがかった倉庫で、大声で指示を出しながら働く人たちを見かけ、世界から完全に人間が消失してしまったわけではないのだと、少し安心した。
市
ル・プティ・シュヴァリエ Le Petit Chevalier 4 Vein
教会は住宅街に紛れて、アンリに言われなければうっかり通り過ぎてしまいそうな、小さく簡素な建物だった。開放されている礼拝堂に足を踏み入れると、木製の長椅子に腰かけた母子連れがいた。最後列の長椅子に腰かけ、どこにクダはあるの、母子連れに気づかれないように囁き声でアンリに尋ねた。
「クダはそれが設置された空間内部を満たしています」
そうアンリは答えたが、いまいち意味がわからない。
「カードを十秒
ル・プティ・シュヴァリエ Le Petit Chevalier 2 フィギュール Figures
八時ちょうどに目覚めた。
窓から覗くのは旅立ちにふさわしい晴れ渡る空だ。
世界が終わるというのに、長らく味わえなかった安眠を享受できた。
確固たる使命を与えられないことが、いかに人を慢性的な不安に陥らせるのか、生まれて初めて理解できた気がした。
アンリ、起きて。教えてほしいんだ、どこへ向かえばいいのか。
「あなたが起きているとき、私も起きています」
濡れたような結晶をゆらめかせて